2020奄美大島ホエールスイムツアーレポート後編~クジラの水中撮影に適した絞り(f値)とは~

 

こんにちは、上出です。
前回は、今年開催した奄美大島ホエールスイムツアーレポートの前編と、クジラ撮影のシャッタースピードについて書かせていただきました。
まだ前編を読んでいない方は、先にこちらからどうぞ↓
2020奄美大島ホエールスイムツアーレポート前編~クジラの水中撮影に適したシャッタースピードとは~

今日は、奄美大島ホエールスイムツアーの後半(第3弾&第4弾)を振り返りながら、クジラの水中撮影に適した絞り(f値)について考えていきます。
では早速、ツアー第3弾のレポートです。
今回の記事でも、クジラの写真はツアー中に撮影したものを掲載します。
(第4弾のレポートでは、第3弾・第4弾と続けてご参加いただいたゲストの方のお写真をお借りしました。)


D850 8-15mmFisheye  f8 SS1/500秒 ISO3200(Auto)

 

■第3弾 (2020.2.15-17)

初日。出港から1時間半が経過したころでしょうか。
船上に「いた!!」という声が響き渡ります。
この、みんなのテンションが一気に上がる瞬間が好きです。

しかしその0.5秒後、その威勢のいい声に続き、「いた!…かも。けんちゃんちょっと見て」と、情け無い、か細い声が聞こえてくるではありませんか。
※けんちゃん:アクアダイブコホロ船長 太田健二郎さん

そう。この日クジラを見つけたのは僕です。
普段なかなか見つけられないから自信がなかったのです。
恥ずかしいですね。自信持てよ、俊作。

さて、どうやら僕が見た白い靄(ブローのこと)は幻想ではなかったようで、その後しっかり3頭のクジラが確認されました。
親子とエスコートです。

親子クジラは比較的水中で観察できることも多いので、この時も皆、親子を見つけたことを喜んでいました。
でも、中には一緒に泳がせてくれない親子クジラもいます。
赤ちゃんは好奇心旺盛なことが多いのですが、お母さんの性格はそれぞれで、神経質なお母さんはなかなか人を寄せ付けてくれません。

この日出会ったお母さんは、ちょっと心配性だったんでしょうかね…少なくとも、心を許してくれているような雰囲気はありませんでした。
ハイスピードで泳ぎっぱなしで、全く止まってくれず。
それでも、何度か全員クジラと泳ぐことはでたので、初日のホエールスイムとしては成功です。

僕と数名は写真も撮れましたが、クジラとの距離が少し遠かったため、シャッターを切れなかった方もいました。


D850 8-15mmFisheye  f5.6 SS1/500秒 ISO2500(Auto)

2日目は、出航して1時間くらいで、ブリーチしているクジラを発見しました。
波が高かったので、この海域でのスイムは諦め、クジラの近くに寄って船上からブリーチを狙うことに…しかし、近づくと何のアクションもしてくれません。

そうこうしているうちに雨が降ってきて視界が悪くなり、クジラはどこに行ったかなーとキョロキョロしていると、また離れたところでブリーチ。

シャイかこのやろう!

と、叫んだかどうかは憶えていませんが、まあ、よくあることですな。
その後雨風共に強まってきたため、早めに港に戻り、午後は水中写真の現像セミナーをやっていました。

あまり甲殻類は得意ではありませんが、皆さんの反応が良かった一枚はこちら↓


D850 105mm Z-330  f5.6 SS1/250秒 ISO64

星空撮影についても教えてほしい!
とのリクエストがあったので、けっこう時間をかけて解説しました。
星空はいつも一人で撮影していますが、今年は誰かとロマンティックな話をしながら一緒に撮影できたらいいな。なんてね。


D750 14-24mm  f2.8 SS20秒 ISO4000

最終日の3日目、この日は出航30分ほどで親子クジラを発見しました。
幸先のいいスタートで、みんなのテンションも上がります。

しかし…なかなか上がってこない…息の長い親子でした。
お母さんと赤ちゃんが一緒に上がってきたときにスイムにチャレンジしましたが、この日は泳げませんでした。

結果的に、第3弾でホエールスイムができたのは、3日のうち1日。
僕のツアーが、1日だけの乗船という形を基本的には受けておらず、3日間通しにしているのは、「3日間あればなんとか1日は泳げるだろう」という思いがあるからです。
(もちろん自然相手なので、3日間とも泳げないということもありえます。)

そういう意味では、この第3弾も成功と言っていいと思います。
しかし残念ながら、何名かの方は一度も水中でシャッターを切れずに帰ることになりました。

ついつい良い時ばかりに目が行ってしまいますし、良い時の記憶が強く残ります。
でも、クジラの水中写真を撮るって、本当に難しいことです。
僕も初めの頃は、写真なんて全然撮れませんでした。

ご参加いただいた方全員にクジラの写真を撮ってもらいたいと、本気で思っています。
だからこそ、この第3弾が終わった時には、とても悔しかったです。
でもそれと同時に、写真が撮れなかったときでも「これもまた自然」と思える心も、みんなと共有できたらいいなと思っています。


D850 8-15mmFisheye  f5.6 SS1/500秒 ISO2500(Auto)

 

■第4弾(2020.2.18-20)

初日。5時間クジラを探すも、全く見つかりません。
お天気も海況も悪くないのに…まあこんな日もあります。

船上からもクジラを見たことがない方も参加されていたので、とりあえずブローだけでも見て帰ろうということに。
仲間の船が少し離れた所でクジラを見れていたので、一瞬お邪魔して綺麗なブローを見て帰ってきました。

 

2日目、この日は比較的早く2頭のクジラと出会えました。
泳げそうかなと思って機会を伺ったのですが、思いのほか難しく、なかなかスイムさせてくれません。

そんな中、この日クジラ探しのサポートで乗船してくれていた島人(しまっちゅ)が、遠くのブローを見つけてくれていました。
ありがたいですね。もちろん、僕には見えていませんので。笑

2頭のスイムは諦めて、島人が見つけてくれた1頭の方に行ってみたのですが、結果的にこれが大正解。
水深10m〜15mでピタッと静止していました。


D850 8-15mmFisheye  f5.6 SS1/400秒 ISO2000(Auto)

 

たっぷり時間があったので、それぞれどうやって撮るか考えながら撮影できたのではないかと思います。
尾びれを印象的に切り取っていますね。撮り方が大人です。


撮影:辻登さん
Instagram:non_2g

3日目、この日が僕の全てのツアーの最終日です。
出港してしばらく探したのですが、見つかりません。

みんな表には出さないけど、ちょっとずつ嫌な予感が胸によぎっていたと思います。

そんな時、船の真後ろで「ブシュ!ブシュ!」と2連発。
前を見ていた人も全員、その音でとっさに振り返りました。

どこに隠れていたんでしょうね。
ラブラブのペアが、突然船の近くに現れて、そのまま船に居着いたのです。

2頭のクジラが体をクルクル回しながらみんなと一緒に泳いでいる様子は、言葉にしがたいものがありました。
こんなこともあるんですね。

感動して涙している人、興奮してずっとしゃべっている人、そして優しい笑顔で握手を求めてくる人を目の前にして、「ああ、この仕事を始めて良かったな」と思いました。


D850 8-15mmFisheye  f8 SS1/500秒 ISO2200(Auto)

船の近くで浮いて待っているとクジラが戻ってくるので、皆さん、撮影のチャンスもたくさんありました。
まだ朝の早い時間だったので、暖かみのある光が横から入って良い感じですね。
ちなみに、クジラの顔の前でカメラを構えてるのは僕です。


撮影:岸かおりさん
Instagram:kaorik_2_6

そんなわけで、第4弾は初日こそ苦戦しましたが、最終的には最高の形で終えることができました。

これにて、今シーズンのツアーレポートは全て終了となります。
今年もツアーを受け入れ、全力でサポートしてくれたアクアダイブコホロの皆さん。
毎日極上の食事と快適な空間でもてなしてくれた民宿よーりよーりのリュウちゃん。
3年連続でツアーのアシスタントを引き受けてくれたダイブジャーニーの2人。
奄美の自然と、クジラと優しい気持ちで向き合ってくれたゲストの皆さん。
本当にありがとうございました。

自然相手なので、何%で泳げるとか、何月がいいとか、そういうことは書きません。
アクアダイブコホロのブログに遭遇データが全て載っていますので、気になる方は見てみてください。)
僕のツアーの結果が、奄美大島や他の地域のホエールスイムの状況と比較してどうかというのも、皆さんに判断してもらえたらと思います。

クジラがどれくらいいるのかというのはもちろん重要ですが、個人的には、どの船に乗って、誰にガイドをしてもらって、どんな人たちと過ごすのか、そしてどんな気持ちでホエールスイムに臨むのかということの方が重要なように感じています。

 

 


D850 8-15mmFisheye  f8 SS1/500秒 ISO1800(Auto)

さて、最後になりますが、クジラの水中撮影に適した絞り(f値)について考えてみましょう。
※ここではD850と8-15mmフィッシュアイを基準に書くのでお使いのレンズよって感覚は違うと思いますが、基本的な考え方は一緒です。

クジラに限らず、水中ワイド写真全般に関して、「できるだけ絞った方がいい」と僕は思っていました。
絞っておいた方が被写界深度も稼げるし、四隅の描写も流れづらいし、パリッとした写真になるはず。
という感じです。

おそらくこれは、僕が水中ワイドを始めたときに、フィッシュアイではなく超広角(14-24㎜)をメインで使っていたことも影響していると思います。
超広角はフィッシュアイに比べて被写界深度も浅く、四隅も流れやすいので、できるだけ絞る癖がついていました。

まあ、絞ること自体は別に悪くないんです。
超広角だろうがフィッシュアイだろうが、f8~f11くらいの絞りで撮っておけば、光学的にはベターなはずです。

でも、例えば1/500秒・f11なんかで撮ると、晴れていてもISO感度が2000を超えてしまうんですよね。
結局何を優先するかなので、これで良ければいいのですが、大きく伸ばして飾ることなんかを考えると、やはりISO感度はできるだけ低い方が綺麗に仕上がります。
そういう意味で、できるだけISO感度が低い状態で撮影するために、f値は必要以上に上げたくありません。


D850 8-15mmFisheye  f8 SS1/500秒 ISO3600(Auto)

今シーズンのクジラ撮影に臨む前、尊敬する水中写真家の方数名とお話する機会がありました。
そこで知ったのですが、f5.6~f8くらいでクジラを撮影している方も多いんですね。
というわけで、今年はこれまでのやり方にとらわれず、色々絞りを変えながら撮影してみました。

結果的には、クジラが1頭だけの時は、f5.6でもf6.3でも普通に撮れました。
お天気が良ければf8まで絞ることもありましたが、曇天の日も多いので、f5.6かf6.3くらいで撮影することが多かったように思います。


D850 8-15mmFisheye  f5.6 SS1/400秒 ISO1800(Auto)

ただ、クジラが2頭、3頭と複数いる時は、f5.6くらいだとちょっと被写界深度が浅すぎるように感じました。
複数等が自分から同じ距離にいることはほぼないので、ピントを合わせた個体以外がボケてしまうイメージです。
ピントを合わせていない個体のディテールもある程度描写するには絞るしかないので、シーズン後半は、複数等いる場合にはf8あたりで撮影していました。


D850 8-15mmFisheye  f8 SS1/500秒 ISO1800(Auto)

正直、f5.6とf8でどれだけ被写界深度や四隅の描写が変わるのかはっきりはわかりません。
これからもっと検証できればと思いますが、とりあえずは、f5.6~f8で撮影して、大きな失敗はなかったように感じています。
もちろん、使っているレンズやポートによってどれくらい絞るべきかは変わってきますし、ISO感度は捨てて絞り込むという選択肢もあるので、最終的には自分で優先順位をつけてみてくださいね。

 

【2021年奄美大島ホエールスイムツアー開催のお知らせ】

今日もここまで読んでくださりありがとうございました。
2020年のレポートが、少しでも参考になれば嬉しいです。
来年2021年も、奄美大島でホエールスイムツアーを開催します。
まだ不確定要素もあるので、全て決まったらあらためて告知しますが、興味のある方は先に以下のフォームからお問い合わせください。

    お電話番号
     

    チェックを入れてから送信してください

    例年、リピーターの方でけっこう埋まってしまう傾向があるので、もしご参加をご検討されている場合は、早めにご連絡いただいた方が良いかと思います。
    奄美大島ホエールスイムツアーは、ホエールスイム未経験者の方、水中撮影初心者の方(コンデジでも全然OK)のご参加も大歓迎です。
    リピーターの方の分の枠は確保していますので、焦らなくて大丈夫ですよ。

     

    【2020年プライベートフォトセミナー参加者募集中】
    2020年もプライベートフォトセミナーを開催させていただきます(基本はマクロ)。
    4月・5月・6月は予約が埋まってきてはいますが、キャンセルも出ましたので、まだそこそこ空いています。
    7月以降はまだまだ空いていますので、割とご希望の日程に合わせやすいです。
    リクエストベースで開催しているので、日程は参加者の方の希望に合わせて決定します。
    ご興味のある方は下記のページよりお早めにお問い合わせください。

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