月の雫 ⑺
「えっ…」
ビールがあるって言葉を理解できずに、その意味を読み取ろうとした。
けど、長い髪で隠された俯き気味の顔からは、なんにもわかんねぇ
彼女はまた、そんな俺の様子なんか御構い無しに、おもむろに立ち上がって、屋上の隅の建物に入ってく…
その背中を見送って、建物に姿が消えてった
意味がわからず、翔くんをみても、やっぱ困ったように眉を下げて首を傾げてた
しばらく待つと、さっき消えた建物から彼女が現れた。
手には…、缶ビール?
「んっ」
腕を伸ばしてビールを俺に差し出した
「はっ?えっ?」
受け取れってことか?訳がわからず戸惑ってると
「んっ!!」
グイッと俺の胸にビールを押し付けた
「え、あ、…ありがと」
迷いながらもビール受け取れば、少し離れた翔くんにも腕を伸ばして差し出してる
近くに来た翔くんがビールを受け取ると
「…ま、待って、て」
ボソッと呟いて、今度は小走りに建物へ入ってった
なんだ?
状況が飲み込めず、翔くんと顔を見合わす。
すぐに小走りで戻って来た彼女の手には…
ジョッキ?!
それを俺たちに押し付けた
手渡されたビールとジョッキ。しかもジョッキはキンキンに冷えてる
「ひとつ、確認。飲んでいいの?」
翔くんが彼女に聞く
俯き気味の顔が頷く。
「りょーかい。んじゃ遠慮なく」
硬いコンクリートに胡座をかくと、プルタブに指をかけ、開けた。