歴代ジェームズ・ボンドで一番好きなのは初代のショーン・コネリー。目尻以上に長い眉、スーツが決まる広い肩幅と背中。ウィットに富んだ会話と窮地にこそ効果を発揮するジョーク。吹き替えの若山弦蔵さんの低音ボイスが甘くて渋かった。
"Sean Connery" Photo by kate gabrielle
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当時無名のショーン・コネリーが(予算の都合で)大抜擢された「007/ドクター・ノオ」(1962年)は記念すべきシリーズ第1作です。
公開が58年前ですか・・・。そう考えると相当な意欲作ですよね。
ボンドがミッションを受けて、道具を手にして世界を股にかける。嗜好品などにやたらこだわり知識も豊富。
悪役、アクション、ギャグ、決め台詞やお約束、美しいボンドガール、敵に捕らわれて脱出・・・。007の主な骨格はすでに提示されています。
舞台のジャマイカは原作者イアン・フレミングの別荘があった島国です。彼が終戦と同時に英海軍情報部を引退し、この地で007を執筆したんですね。
ジャマイカはいわばジェームズ・ボンド誕生の地で、ボンドがいくつかの作品で訪れている特別な場所。
最新作「NoTime To Die」でボンドが引退して暮らしていたのもジャマイカという設定らしいですね。
"NO-01-F001" Photo by Johan Oomen
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観るとですね、確かに時代を感じますけども、時代を超えた、普遍性もあります。その二つの塩梅が長寿シリーズの秘訣でしょう。
ボンドガールのハニー・ライダー(ウルスラ・アンドレス)が海から登場するシーンはあまりに有名で、「007/ダイ・アナザー・デイ」でハル・ベリーがオマージュしていました。
初代ボンドガールのウルスラ・アンドレスはジェームス・ディーンをはじめ数々の浮名を流したグラマラス美女です。
彼女はオーストリア出身なんですけども、英語の発音が訛りがきつく、別の女優さんが吹き替えをしています。
このエピソードがとても興味深い内容で、過去記事をリブログいたします。
しかしですね、本作でのボンドガールの位置づけがすごく軽く、いなくても物語が成立してしまうくらいなのです。
役回りもボンドに助けてもらう一方ですしね。ギリシア神話のアンドロメダ姫のような。
このあたりの背景には当時の価値観があると思います。
女性は男性が守るものといった、とかく男性中心の価値観なんですね。今では考えられないでしょう。
実際、今やボンドガールの位置づけはとても重要ですし、現代のボンドガールはフィジカル的にもタフでバトルだって強い。
ジュディ・デンチ演じる先代の上司Mはボンドの「男性的魅力」を嫌悪していたし、現マネー・ペニーはボンドと対等です。
そういう意味でも、この長寿シリーズは時代の鏡なのですね。
撮影の合間でしょう、ウルスラの前で逆立ちするお茶目なコネリー。
"Connery & Andress" Photo by Insomnia Cured Here
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というわけで「007/ドクター・ノオ」にはいろいろ思うところがありつつも、これが歴史の始まりなわけです。
ここで観ないわけにはいかない、という方に朗報です。
「ドクター・ノオ」を皮切りに007シリーズ24作品+番外編2作品がBS-TBSで6月から放映とのことです。
個人的お気に入りの「007/ロシアより愛をこめて」をまた観ようっと思います。
そして最新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」に備えようと思う次第。・・・