黄色の基準。浦和レッズ VS セレッソ大阪 J1第26節

日時 2019年9月13日(金)19:33
試合会場 埼玉スタジアム2002
試合結果 1-2 セレッソ大阪勝利

セレッソ大阪のJ1第26節の相手は浦和レッズ。この試合は浦和のACL(アジアチャンピオンズリーグ)の日程上、金曜開催となった。
ACLでは勝ち進んでいる一方で、リーグ戦では7月20日の20節磐田戦以降、勝利がない浦和。一方のセレッソは直近のリーグ戦では3連勝中である。試合は、この両チームの現状がそのまま現れた結果となった。

セレッソ大阪フォーメーション
20
メンデス
8
柿谷
25
奥埜
7
水沼
5
藤田
6
デサバト
14
丸橋
3
木本
22
ヨニッチ
2
松田
21
ジンヒョン

この試合のセレッソ大阪のフォーメーションは、丸橋、ヨニッチ、木本、松田の4バック、藤田、デサバトの2ボランチ、両SHに柿谷と水沼、2トップに奥埜とメンデスを置く4-2-3-1。清武の負傷離脱のため、左SHは前節から引き続き柿谷が先発。また、これまでCBのレギュラーだった瀬古は、U22日本代表の遠征から帰国したばかり(12日にチーム合流)と言うことで、この試合では先発を外れ、代わって木本が先発となった。

浦和レッズフォーメーション
30
興梠
9
武藤
7
長澤
24
汰木
22
阿部
16
青木
41
関根
5
槙野
4
鈴木
31
岩波
1
西川

一方の浦和レッズのフォーメーションは、槙野、鈴木、岩波の3バック、阿部、青木の2ボランチ、左WBに汰木、右WBに関根、2シャドーに武藤と長澤、1トップに興梠を置く3-4-2-1。3バックの中央は、これまでブラジル人DFマウリシオが務めていたが、前節湘南戦の終了間際のイエローで警告の累積が4枚に達してしまい、この試合は出場停止。代役として、シーズン開始前に柏レイソルから獲得した鈴木大輔が起用された。

さて、この試合の前半の、セレッソのサッカーの大まかな内容について。
まず守備面では左SHの柿谷がFW的なポジションを取って3トップ的に相手の3バックに前からプレスを掛ける形と、柿谷を中盤に落として引いて守る形を使い分けながら守っていた。序盤の主導権争いの段階では前者、そこを過ぎてからは後者の形が多かった。また、後者の形で守る場合も、柿谷は単純にサイドに引いてしまうのではなくて、まず中寄りのポジションを取って、相手ボランチを見るようになっていた。警戒しているのはボランチからWBに展開される形である。浦和の布陣は両ワイドに突破力のあるWBがいるが、セレッソの守備はブロックを作って前後左右コンパクトに守るやり方なので、両ワイドのスペースは残さざるを得ない。そのかわり、サイドにボールが出たら全体がスライドしてボールにプレスを掛けるわけだが、この時、ボランチからWB、そこから更に逆サイド、というようなパスがポンポン通ってしまうとスライドが間に合わなくなる。これを防ぐために、両SHの水沼と柿谷は、引いて守る時でもまずはボランチの所を見る。そして、その時のプレスの掛け方は、ボールを外に追い込むのではなく中に追い込むように掛ける。つまり、水沼の場合は右から、柿谷の場合は左からボランチにプレスを掛けて、同サイドのWBへのコースをまず消しに行く。そうなるとボランチから逆サイドのWBへ展開される恐れがあるが、ボールが逆サイドに到達するまでには少し時間が掛かるので、その時は逆サイドのSBが出て対応し、同じく逆サイドのSHが下りてSBの内側をカバーすれば良い。同じ意味で、一度CBに下げてから展開される形も対応出来る。一番やられたくないのは、ボランチから同サイドのWBにパスが出て、サイドをえぐられて逆サイドまでクロス、という形で、そうなると逆サイドのWBは必ずフリーになってしまう。そこをまず防ぐ、という守備だった。

一方、攻撃面では、浦和が前から積極的にプレスに来る時はロングボールで相手WBの裏のスペースを狙っていく、そして、浦和の方がセレッソにボールを持たせる守備をしてきた場合は、左右のSHを中(浦和のボランチの裏)に絞らせて、SBを高い位置に出す、という形を取っていた。こうした使い分けについては、試合前日の藤田のコメントでも示唆されていた。

J1 第26節 浦和戦|試合前日の藤田直之選手コメント

相手の出方に対しての判断を間違えなければ、試合を優位に進めることはできると思う。(浦和の)後ろが5枚になれば余裕を持ってボールを回せるし、相手が前から来たら『裏もあるよ』というプレーを見せることも大事。

試合序盤は浦和もセレッソも試合の主導権を握ろうと前から積極的にプレスを掛けたため、セレッソの方は必然的にロングボールを狙うことが多かった。一方、序盤を過ぎて試合が少しスローダウンして以降は、左右のSHを中に絞らせる形が増えて行った。この形をもう少し具体的に説明すると、まずセレッソがボールを回収してDFラインやボランチの選手がボールを持つと、両SHの柿谷と水沼はサイドから中に移動し、浦和のボランチの裏にポジションを取る。浦和はセレッソにボールを持たせるときはシャドーをサイドに落として5-4-1の形になるので、セレッソの両SHは浦和のボランチとシャドー、及び該当サイドのCBのちょうど中間ぐらいにポジションを取ることになる。

前半のセレッソのボール保持時の形
× × × × ×
× × × ×
×

浦和の方から見ると、柿谷、水沼に対して前向きに当たりに行けるのは該当サイドのCB(岩波もしくは槙野)なのだが、かれらがDFラインから出て対応してしまうと最終ラインにギャップが出来てそこを奥埜やメンデスに使われてしまう。かと言ってWBが絞って対応しようとするとセレッソのSBがフリーになってしまう。

J1 第26節 浦和戦|試合後の汰木康也選手コメント

(Q:相手がボールを持つと5バック気味になりますが、本来は高い位置でプレーしたかったのでは?)
そうですね。今日だったら、松田(陸)選手と水沼(宏太)選手のところで、どうしても自分が後ろに引っ張られてしまって、どこに寄ったらいいのかもわからなくて、サイドを走られるシーンもありましたし。

上記を回避しようとすると、浦和はボランチがプレスバックしてセレッソのSHに対応するしかなく、守備が後手になってしまう。結果、序盤を過ぎたあたりからはセレッソが主導権を握る展開になった。
前半9分には青木の後ろにポジションを取った柿谷に木本からのパスが通り、柿谷から丸橋、丸橋から左サイドに流れたメンデスにボールが渡る、というシーンがあった。メンデスは外向きにボールを受けて、浦和の方はメンデスの背後に岩波が付いたのだが、岩波がサイドに出たことで中央の鈴木との間にスペースが出来、そこに柿谷がダッシュした。恐らく柿谷はメンデスからヒールでボールが出てくることを期待していたと思うのだが、メンデスが出さずにボールをキープしたことで止まってしまった。一方、メンデスはボールをキープした後、振り向きざまに柿谷が走り込もうとしていたスペースにパスしたが、柿谷は止まっていたので合わず。見ていたスペースは同じだったがタイミングの意思疎通が出来ていなかった、というシーンだった。
また前半19分には、今度は右サイド、阿部の裏にポジションを取った水沼に対して、浦和は左WBの汰木が絞って対応しようとしたが、それによって松田がフリーになり、ヨニッチから松田にパスが通って、汰木が慌てて松田の方に動き直すと今度は水沼がフリーになり、松田から水沼にパスが通って、水沼が浦和のDFラインの裏に走り込もうとした柿谷にパスを送るが槙野が跳ね返す、というシーンがあった。このシーンでは、左から中に入って行く柿谷に岩波が付いて行き、それに合わせてWBの関根も絞ったことで、左SBの丸橋がフリーになっていたので、もうひと手間かけて、そちらに展開でも良かったかなと。
浦和の方は、3バックがマンツーマン的な守り方で、一度マークが決まるとほぼ受け渡さず付いて行くが、人に付く分、最終ラインにはギャップが出来やすい。このシーンでも、メンデスに槙野、奥埜に鈴木がマンツーマンで付いていて、それによって出来たギャップに柿谷が走った、という流れだった。ただ、浦和のCBの3枚、特に鈴木と槙野は非常に人に強いので、多少ラインが崩れても個の力で撥ね返すことが出来る。そしてそれが、浦和の守備の方法論の出発点になっている。

思うように試合を進められない浦和だったが、一方のセレッソの方も、狙っていた展開には持ち込めているものの、浦和の最終ラインの個の力に阻まれて、主導権を握っている割には決定的なチャンスは迎えられない。そして前半の24分あたりから、浦和の守備が少し整理されてきた。それまでは、守備の時にはサイドに下りたシャドーがセレッソのSBを見ていたのだが、この時間あたりから、シャドーはSBへの守備を捨てて中に絞り、まずセレッソの両SHへのパスコースを消す、と言う守備に変わった。そうなると、セレッソのSBがフリーになるわけだが、そこはボールが出てからWBが対応する。この形に変えてから、浦和の方はセレッソのSHにボールを受けられる数が明らかに減った。
結局、前半はスコアが動かず、0-0で後半に入ることとなった。

さて後半、スコアはすぐに動いたのだが、このシーンで最初に目を引いたのは左SH柿谷のポジショニングだった。
後半1分、左SBの丸橋がボールを持つと、柿谷も大きく左に開き、大外のレーンで丸橋と縦に並ぶポジションを取った。上述の通り、前半は中に入るのが基本だったので、この時点でSHへのオーダーが変わったのは明らかだった。恐らくだが、浦和の選手にとっても予想外だったのではないだろうか。縦に並んだ状態で丸橋がボールを前に運び、柿谷は引いてくる。浦和の方は、丸橋に長澤が、柿谷に関根が付いていたのだが、丸橋と柿谷が入れ替わるタイミングでマークを受け渡すのか、それともそのまま付いて行くのかはっきりせず、丸橋に2人とも置いて行かれてしまった。セレッソの方は左サイドにメンデス、奥埜が流れてきて、水沼が中央。それに対して浦和はメンデスに岩波が、奥埜に鈴木が、水沼には槙野と汰木が付いた。丸橋は相手の最終ラインと中盤のラインの間のスペースをドリブルして浦和のペナルティエリア角あたりまでボールを運び、ペナルティアークに向けてグラウンダーのクロス。このボールは、中央に動き直した奥埜、そして最初から中央にいた水沼、どちらにも合いそうだったのだが、両者ともスルー。そして、大外から右SB松田が走り込んできた。松田がボールをダイレクトでシュートすると、汰木に当たったボールはファーサイドにコースを変えて、ゴールマウスにおさまった。

SHが中央に走って、相手を中に絞らせて大外にスペースを作る。形としては、上述の前半19分の形に近かったかなと。前半19分の時は、中央に走った柿谷のところをそのまま使おうとしたが、このシーンでは水沼が中に入ることによって出来た外のスペースを松田が使う、というもう一つ捻った形で得点が生まれた。

さて、このセレッソの先制点は、柿谷がサイドに開いたことによって浦和のマークの受け渡しが混乱したことがきっかけで生まれたわけだが、それを意図してSHのポジショニングを変えたのかと言うと、多分違うのかなと。狙いとしては、浦和の最終ラインに対して、ボールサイドで数的同数を作りたかったのではないだろうか。柿谷が左に開くと、浦和の方は右WBの関根が付くか、関根が高い位置を取る場合は右CBの岩波が付く。関根が柿谷に付く場合はボールサイドで奥埜・メンデスと岩波・鈴木の2対2が出来る。岩波が付く場合は奥埜・メンデスと鈴木・槙野の2対2が出来る。そして、左SBの丸橋に対してはシャドーの長澤かWBの関根が付くわけだが、相手が丸橋に対して中を切って来る場合は柿谷に縦に入れればいいし、逆に縦を切って来る場合は奥埜とメンデスのいずれかに入れることが出来る。既に書いた通り浦和の最終ラインはマンツーマン的に守る分ギャップが出来やすいので、数的同数になると、2トップ同士のワンツーやSHの外からの飛び出しで、相手の裏を取れる可能性が高くなる。それを狙っていたのではないだろうか。
また柿谷は、セレッソのCBやボランチがボールを持っている時は、前半と同じように中に入っていた。ずっと外に張っていると相手もプレスを外に広げてきて、そうなると柿谷はもちろん丸橋のスペースもなくなってしまうので、まずは中に入って相手のシャドーやWBを中に絞らせ、丸橋がボールを受けたらサイドに出てきて縦パスに覗く、という順番になっていた。

ただ実際には、セレッソの先制以降、ビハインドになった浦和がリスクを掛けて押し込むようになり、セレッソは守勢に回ったので、上記の形を狙えるシーン自体が少なくなってしまった。柿谷の方はそれでも、サイドで受けようとするシーンが2~3回はあったので、ポジショニングのオーダーに変更があったことは間違いないが、水沼の方はそれを確認できるシーン自体が無かった。ただし1回だけ、前半25分ぐらいに右サイドで松田がボールを持った時に、水沼に対して開いて受けるようにジェスチャーしていたシーンがあったので、恐らく右サイドも同じオーダーだったのではないだろうか。

さて試合の流れに話を戻すと、追う立場になった浦和が攻勢を強め、セレッソはそれに対して引いて守る、と言う展開になった。攻勢の時の浦和はボールサイドのCB(槙野、岩波)が前に出てくる。ここを見るのは柿谷、水沼の両SH。前半はセレッソのSHとSBに対して浦和のWBが数的不利になっていたが、後半は浦和のCBとWBに対してセレッソのSHが数的不利になっていた。セレッソのSHは、相手のCBがボールを持つと、味方のボランチの脇、いわゆるハーフスペースへのコースを消しながら前に出て、外のWBに展開されたらそこにもプレスを掛ける、という2度追いが基本。そうなると、前半やっていた相手ボランチへのプレスは出来なくなるので、そこは2トップが下がって見る。結果、フィールドプレーヤー全員が自陣に引くことになる。CBには2トップの1枚が付いて行く、と言うやり方をすれば、残りもう1枚のFWは敵陣に残せるのだが、セレッソはそれをしない。あくまでも2トップは2トップのまま、ポジションを自陣に下げる。その理由についてはこの後の試合の流れで説明したい。

追いつきたい浦和は後半9分、汰木を下げて左利きのウィング荻原拓也を投入。荻原はそのまま、汰木のいた左WBに入った。そして、この荻原が浦和に同点弾を運んできた。
後半13分、セレッソは浦和陣内、左サイド深い位置まで押し込んで、メンデスがサイドまで流れてきてボールを受けたのだが、メンデスを逆サイドまで追いかけてきた槙野がボールを奪取。この槙野のチャージで倒されたメンデスがファウルのアピールをしたものの判定はノーファウルだった。ここでセレッソの方は、失ったボールを前から奪い返しに行く選択をしたのだが、メンデスが倒れていたことを考えると、下がりながら時間を掛けさせる守備をした方が良かったかなと。逆に、前から奪い返しに行くのであれば、メンデスはすぐに立ち上がってプレスに参加するべきだった。セレッソはボランチの藤田も参加して前から奪い返しに行ったが、これによって藤田が見ていたエリアで浦和のシャドーの長澤がフリーになり、そこにボールが出てしまった。そして、長澤にはデサバトが当たりに行ったのだが、既にカードを1枚貰っていたため激しく行けず長澤に入れ替わられてしまい、長澤がオープンになってドリブルを開始した。長澤はハーフウェーラインまでボールを運ぶと、左サイドをフリーで上がって来た荻原に展開、荻原がセレッソペナルティエリア内に持ち込んで左足でシュートを放った。ボールはファーサイドに飛び、GKジンヒョンが飛びついたが触れず、ポストに当たって、逆サイドから詰めてきた興梠の足元へ。興梠が体勢を崩しながらもこのボールを押し込んで、スコアは1-1となった。

この得点で浦和の方は完全に火がついて、「絶対に逆転する」と言う雰囲気になった。一方のセレッソの方は、もう一度突き放すと言うよりも、まずは落ち着いて守備から、という意識のサッカーだった。上で書いたとおり、セレッソの方は守備的に戦う時は2トップが相手ボランチの位置まで下りる。相手とのマッチアップで考えると、2トップは相手のCBを見るのが自然なのだが、浦和の槙野、岩波はボールを持った時はSBのようにサイドの高い位置に出てくるので、それに付いて行くとFWがサイドに寄る形になり、2トップ同士の距離も離れてしまう。そうなるよりも、ボールを奪い返した時に中央に2枚の起点がある方が良い、という考え方になっている。そして、奪い返したボールをこの2枚のうちの片方に当て、もう片方のFWは相手のCBが上がったスペースに飛び出して、そこにSHやSBがフォローに入ってカウンターが始まる。
一方浦和の方は、攻撃に人数を掛けている分、このカウンターが起こると一気にピンチになる。それをどうやって防ぐかと言うと、ファウルで止めていた。そして、このファウルに対する審判のジャッジが、この試合の一つのポイントになった。

この試合、セレッソの方は前半の早い時間に水沼、デサバトにイエローが出て、特にデサバトへのイエローは1失点目の遠因にもなったのだが、後半の浦和のファウルにはイエローが出ないので、セレッソの選手はずっと抗議していた。セレッソが貰った2枚のイエローのうち、水沼が貰ったものは阿部に対して足裏を見せて飛び込んでしまったプレーに対してだったので、これは疑いの余地なしだったのだが、デサバトの方は、22分に浦和陣内で長澤を後ろから倒してしまって貰ったものだったので、それだったら浦和の方がセレッソのカウンターをファウルで潰していることに対してもイエローが出るべきだろう、と言うのが抗議の内容だったと思う。恐らく主審の基準としては、ボールに対して厳しく行って、結果的にファウルになってしまうプレーに対してはある程度許容する、そのかわり、最初から意図的にファウルで止めるプレーに対してはイエローを出す、という基準だったのかなと。デサバトのイエローは、長澤に対してアフター気味に足が入ったプレーに対してだったので、後者と判断されたのではないだろうか。

セレッソの方は、後半20分にはメンデスを下げてFW鈴木孝司を、後半25分には柿谷を下げて田中亜土夢を投入。

セレッソ大阪フォーメーション(後半25分時点)
18
鈴木
32
田中
25
奥埜
7
水沼
5
藤田
6
デサバト
14
丸橋
3
木本
22
ヨニッチ
2
松田
21
ジンヒョン

この交代采配と、審判のイエローの判定基準、この2つが、試合の行方を決める分水嶺となった。

後半24分、この時間は柿谷が交替する直前だが、浦和のボランチ阿部が柿谷のドリブルを手で抱え込んで止めて、イエローを貰った。そして後半33分には、関根が柿谷と交替で入った田中をアフターで倒して、これもイエロー。浦和の選手は徐々に疲れが見えてきて、セレッソのプレーを意図的なファウルで止める、もしくは遅れてアフターチャージになる、というシーンが増えてきた。これらのプレーはこの試合の基準ではイエローになる。
そして後半35分。セレッソ陣内、右サイド深い位置で荻原に身体を入れてボールを奪った松田が奥埜にフィード。上述の通り、セレッソは引いてしまっても2枚の起点が中央にある。奥埜が浦和のCB鈴木大輔に潰されながらも交代で入った鈴木孝司に繋いで、鈴木孝司がサイドのスペースでドリブルを始めた。鈴木に対してはボランチの阿部が背後から追いついたのだが、ドリブルで抜きに来た鈴木に足を掛けて倒してしまい、このプレーに対して2枚目のイエローで退場となってしまった。阿部の方からすると、1回プレーを切ってしまいたい、という思いがあり、まだゴールまで遠いからイエローも出ないだろう、と考えたのだと思うが、この試合の基準だと、最初から意図的にファウルで止めるプレーはイエローなので、その判断は誤りだったかなと。

1人減った浦和は、この阿部のファウルに対するFKの前に、興梠を下げて柴戸を投入。そしてセレッソの方は、浦和陣内右サイドからのFKを藤田がキックした。浦和はペナルティエリア中央で杉本がボールを跳ね返したが、セカンドを田中が回収。もう一度サイドに展開してクロス、また浦和が跳ね返してセレッソがセカンドを回収、という流れの後、今度はボールが右サイドの松田、その更に外に開いた水沼とつながった。ここはセレッソも浦和も、セットプレー用の配置から本来の配置に戻ろうとしている最中で、水沼には荻原、松田には交代で入った柴戸が付いて、その少し内側、浦和のペナルティエリア角付近の鈴木孝司には槙野がマークに付いていた。セレッソは水沼が鈴木孝司にボールを当て、松田が内側にダッシュしてリターンを受けた。これを見てペナルティアーク付近にいた奥埜がゴールニアサイドに向けて走り出す。浦和の選手も付いて行く。結果、ファーサイド側からペナルティアーク前に入って来た田中が完全にフリーになった。田中は松田からのボールを1トラップして足元に止めると右足を一閃。ボールはシュートコースに飛び込んだ4人の浦和の選手の上を越えた後、縦に大きくドライブ。ゴール左へ突き刺さった。

浦和にとっては選手一人を失ったファウルのFKで今度はスコア一つを失うという痛恨の出来事だった。
浦和の方はこの後、CB槙野を前線に上げ、槙野と杉本をターゲットとしたロングボールで何とか同点に追いつこうとしたが、セレッソの方も対策として水沼の代わりに片山を投入。結果的にスコアは動かず、試合は1ー2でタイムアップとなった。

セレッソはこれでリーグ戦4連勝。前節は鈴木、今節は田中と、途中投入された選手が決勝点を挙げており、そこも選手層の上積みという面で明るい材料である。
一方、浦和の方はリーグ戦連続未勝利が7試合に伸びる結果となった。この試合では、序盤、中盤までは審判のジャッジに寧ろ浦和の方が適応していたのだが、疲れが見え出した終盤に徐々に適応できなくなり、最終的には退場者を出してしまった。やはりACLと並行してリーグ戦を戦う、と言うのは大きな負担である。このまま行くと、ACLでは優勝するが、国内リーグ戦では入替戦(J1参入プレーオフ)に回る、と言う可能性もあるが、どうなるだろうか。