デスクワークの毎日だから夕方になると外の空気を吸いたくなる。
さてどこを歩こうか。
一番簡単なのは市立病院の脇を抜けて、勝納川(かつないがわ)のナンタル市場の側の小さな喫茶店があるが、いかんせん散歩コースとして距離が短い。であればそのまま足を伸ばし、むしろ川の手前の道を海側へ進路を変えると田中酒造の古い大きな建物が左側に現れる。回りが広い駐車場なので量販店みたいな空気だが、内部は見学コースが設けられた酒蔵である。それをやり過ごして臨港線の道路で勝納川を渡り、左折すると空き地が目立つダラダラとした通りだ。ようやく海側通りに出て右に曲がれば大型量販店が見えてくる。いつも出かけるファーストフードの珈琲は、このなかだ。
こんな殺風景なところも、雪が降れば見られるのだが、やはり今は退屈な風景だ。
こんな時間にくれば、多分今日も美希さんと鉢合わせするだろうと予測していた。店に入るなり、めざといことにかけては人並み以上の美希さんにみつけられ、「叔父サーーん」だ。しょうがないから美希さんの片隣の窓辺のカウンターに座った。
「今日も彼氏待ち?」
美希「うん、ええーーっと三番目の彼氏ね?」
小春の話が正しいとすれば10人目と聞いた。そこで指を10本だしてみた。
美希「あらやだ!、オジサン知ってるの?、どうして・・・」
「カンかな!」
美希「つられてちゃったジャン、実はそうなんだけど・・・」
「どうして、そんなに沢山彼氏をつくるの?」
美希「オンナの生理かな。だってえ、オトコの人って1回しかできないじゃない。次やろうとするとスマホを充電する以上に時間がかかるよね。そこなんだよ。数回ぐらい続けてできる彼氏が欲しくて探したけど、そんなのは、いないことに最近気がついたの」
(当たり前だろ!、納まりきることがないオンナの欲望かぁー)
美希「最近ねぇー、一太郎兄ちゃんのオヨメサンと気があうの」
「優子さんで・す・か・・・」
美希「そう、なんかあの人、不思議な空気が漂っていない。女の勘かなあー?」
「確かに、得も言われぬ空気が漂っていることは、アチキも認める。あれ、なんだろうね」
美希「あの人!、レズとか・・・・」
「相変わらず、とっぴなことを言い出すな、でもあたっていたりして・・・」
そう思っていたら彼氏がやってくる。
「あの彼氏は、もつの?」好奇心で聞いてみた。
美希「他のオトコよりは少しいい、あんなボケが、意外でしょ!」
頑張って、耐えて、もてといわれて、ボケ呼ばわりされる可哀想な彼氏だが・・・。
その彼氏がフゥーーっと荷物をカウンターに置きながら挨拶してきた。
・・・納まりきらない欲望を抱えながら、オンナも不憫な生き物だと思っていた。
余計なお世話だけど、早く看護師の学校にでもいって社会に貢献しろよ、と心の中で叫んでいた。そうすると多分晃子さんみたいな看護師になるだろう。
「オッサン、検査・・・えっ排便したあと!。しょうがないなあ、じゃあ掻き出すか、そういってガラス棒を肛門に差し込みグリグリとかき回して前立腺を刺激して、「あらっ、勃起しちゃったじゃん」、そんな看護師だろうか・・・」
そんな妄想をしていたら、オジサンじゃーーあね!、という声が聞こえた。
・・・
今日は海岸に二人の姿が見えないから、多分山の方へいった。あそこの廃寺のお堂かな、と小春情報を反すうしていた。