峩々たる、ギザギザした稜線が大好きな小生としては、南ア深南部の地図上に堂々と「鋸歯」とあるのは以前から知っていたが、なかなか訪れる機会に恵まれなかった。また、若かりし頃(高校くらい?)の「アルパインガイド」の最終項にはこの山域が載っており、探検的要素を備えた秘境の趣のあるガイド文を何度も読み返し、いつか行ってみたいと思っていたが、平成の最後になってしまった。
今回、山行を終えての感想は以下の通り;
・田代集落上の諏訪神社から1泊した小無間小屋を経て小無間山までの標高差は相当なもので、しかも少々凝った夕食造りのための食材、水を担ぎ上げたため荷もやや重かったが、往路の登りでは、道の付け方が良かったか、(息が上がった箇所もあったが)意外とスムーズに高度を上げることができた。大無間山までのピストンだったが、復路の小無間山から田代までの下りは、「昨日、ホントにこんな急登をこなしてきたのか」と自分でも驚くくらいの急降下の連続であった。登りの時より下りの方が辛かった印象。
・鋸歯の区間は、一般に「P1~P4」とされているが、往路では順に、P4(小屋)、P3.5、P3、P2(最も顕著なピークでこの前後のアルバイトが厳しい)、P1というように、登った感じだと5つのピークのように感じた。
・P1と小無間山の鞍部からは稜線の両側の崩壊過程にある。根こそぎ倒れかけた枯れた大樹が何とか周辺の土壌を支えている状態だったが、稜線自体の幅はそこそこあり、「キレット」「馬の背」というほどではなかった。しかし、全区間の中で、小無間山の登りがもっとも急であった。
・小無間山から大無間山の区間はうねうねと穏やかな稜線で、赤テープが所々にある。唯一、中無間山の通過が迷いやすい箇所で、ここは直進せずにほぼ直角に折れるのが正しい(よく見れば道形ははっきりしている)。
・大無間山の手前の露岩2箇所から、南ア南部の秀峰を眺められる箇所がある。大無間山山頂のすぐ手前に寸又方面に進む縦走路が伸びている(地面に道標アリ)。
▼田代集落から細い簡易舗装路を上がって神社前の林道に駐車。神社には水とトイレあり。
▼この神社本堂から鳥居に向けて退社するように進むと登山届所があり、その先に山道が伸びていた。提出されていた最近の届を拝見すると意外にも「日帰りピストン」が多かった。
▼12:30に神社を出発し、急登に耐えて、15:45に小無間小屋に到着。
▼今日は我々で独占。中は小綺麗な感じ。
翌朝は未明の5:45に小屋を出発。満月を見ながらヘッドライトの明かりを頼りに小径を進む。
▼小屋を出てすぐに道崩壊の注意を促す看板(復路で撮影)
▼P2と呼ばれる顕著なピーク。この前後のアップダウンが最も厳しかった。
▼P1の下りから見た小無間山。稜線の左右に崩壊地が広がる。
▼進むにつれて、稜線がやせてくる。
▼最低鞍部から振り返ると富士が
▼足元が崩れやすい小無間山への登り。ロープが設置されていた。
▼小無間山の登りから辿りしP1を振り返る。
▼P1から小無間山の登りを小無間山の西稜線から眺めるとこんな感じ
▼8時過ぎに小無間山に到着
▼鋸歯経由に代わり小無間山の基本ルートになりつつある「北東尾根」への降り口には「赤石温泉」と赤く書かれた道標と数多くの赤リボンが下がっていた。この日、この尾根を登ってきたトレラン青年1名に会う。
▼唐松谷ノ頭から見た羽を広げたような大無間山
▼中無間山を直角に折れ、大無間山手前の露岩上から見た南ア南部の秀峰群
▼無人の大無間山に到着(10:20頃)。山頂少し東側にその先の主稜への道が伸びていた。
復路は、特に小無間山からの下降に慎重さを要した。小屋には14:40に戻った。陽の短い季節ではあるが、今日中に田代へ下山するべく、急いで小屋に残置したデポを回収し、下山に取り掛かる。案の定、送電線の辺りでヘッドランプを出さざるを得ない状況になり、往路で念のために設置した赤テープを目印に、植林帯の中の踏み跡を確認しながら下山路を探し当て、無事17:10頃に神社に到着した。
この後、田代温泉の「民宿ふるさと」にて、疲れた身には心地よいやや熱めのヌルヌルのアルカリ泉を堪能させていただき汗を流すことができた(500円)。できればここで食事を頂きたかったが、急な訪問であったことなどから叶わなかった(にもかかわらず、まだ温かみの残っていたおにぎりを頂いた。おかみさんの優しさに感謝)。
田代温泉を出て、すこし下流に進んだ所にまだ明かりの点いた「おでん店」を発見。恐る恐る扉を開けると、閉店の18:30まであと僅かという微妙なタイミングにもかかわらず、コーンの入ったかやくご飯、揚げ物、サラダ、多種のおでんを堪能させて頂くとともに、井川の歴史についてのお話を聞かせていただくなど、思わぬ歓待を受けることができ、心身ともに温かい気持ちで、田代集落を後に帰路に就くことができた。
南ア深南部のメインである大無間山、小無間山に足跡を残すことができたので、今後はその周辺にも足を延ばしてみたい。