「アベ政治許すまじ」と叫ぶ方は多い。
・ 老人医療費が年間10兆円に迫り、財政破綻が近づいていること
・ 過去最少の失業率の一方で「働かない方がトク」という風潮、あるいは税負担をしないひきこもりを大
量に生み出していること
・ 増加する刑事犯(収監者6万人)、そして幼児虐待死・ストーカー殺人など極悪事件に対してあいも変
わらぬ「永山基準」で結果的に犯罪を助長していること
等々、確かに「一体どうなってんだ!」と言いたくなることは多々ある。
しかしこれらはいわば戦後70年の歪みというか澱のような構造問題が根源にあり、一概に「安倍ガ~」では済まないようなものが殆どである。
(許さないのは勝手だが、じゃあどうすればよい?安倍さんの次は誰?)
そんな中、安倍政権の最大の失政と言えるものが「ふるさと納税」である。この制度の何がひどいって
「全体の税収額は不変であるにもかかわらず自治体の寄付獲得合戦で本来不要の歳出が膨らんでいる」という点、それから「釈然とはしないが寄付しないよりした方が得だからやっちゃおう(=私だ)」という具合に国民モラルを低下させる点である。
先月総務省が発表した「ふるさと納税」の実態調査報告(2017年暦年分)によると、制度利用者は
300万人、寄付総額は3482億円(うち住民税控除額2448億円)に達した。
住民税納付者は全国推計で6200万人だから、利用者はいずれ1千万人に達するであろう。
この寄付額に対して30%相当の返礼品を送っているものと仮定すると、全国計で1000億円の歳出があったことになり、近い将来には3000億円に達するものと予想される。
日本国中が老人医療、子育て支援、防衛、インフラ維持・更新に必要な税収の不足に喘ぎ、やれ出国税だ(増収額500億円)、森林環境税だ(同600億円)と血道をあげている傍らで、それらの効果を食いつぶす不要の支出が全国で堂々と行われているのである(ふるさと納税の最初の記事は → ここ )。
まあ多少のことなら納税者にはうれしいプレゼントだし(私を含めて)、町興しにつながらないわけでもないので許容範囲であろうが、寄付額ゲット上位の市町村を見るとそうも言えないように思える。
寄付額上位第5位の佐賀県上峰町(2017年寄付受取額67億円)。住民一人当たりの寄付受領額(70万円)はおそらく日本一だろう。
上峰町の平成30年度当初予算案は、
町民税収入 14億円
地方交付税収入 9億円
ふるさと納税寄付金 40億円 (29年度実績は67億円であったが予算上は過少に計上している)
返礼品購入支出 24億円 (29年度実績不明)
ふるさと納税諸経費 5億円 (ポータル使用料、決済代行手数料等)
となっている。
ここまで来るともはや「市財政の一部を寄付金で」という範疇を大きく逸脱している。同町は、町民税と地方交付税交付金を上回るカネを返礼品の牛肉代(同町返礼品人気第1位)や米代(同2位)に支出している。もはや自治体というより税金を流用した通販業者だ。それでも、
「30億の費用で40億稼いだんだから、上出来だ!」となるから、ふるさと納税は始末が悪い。
マトモな自治体(?)の東京都日の出町と比べてみた。
上峰町は住民一人当たり42万円の寄付金をもらい(予算計上ベース)、25万円(!)の牛肉等を購入。町民税単価を見ると返礼品景気で町民の所得も日の出町以上だ。せめて地方交付税交付金位は自主返納したらどうだろうか。
一方の日の出町は寄付金収入は一人当たり18円(涙)。返礼品も4円(涙)で郵送費が1円という惨状(?)である。
これでは日の出町の住民がかわいそうに思えるが
「じゃあ、もっとやればよか。真面目に町興しに取り組みんしゃい!」となるのがふるさと納税の厄介なところである。
(上峰町返礼品人気第1位の「黒毛和牛切り落とし1.6キロ」(左)、
日の出町は一択でジャム、ケチャップ、「つるつる温泉無料券」等詰め合わせ 日の出町はこれが30
個必要、と予算計上している どちらも1万円の寄付(=本人負担2000円以下)に対する返礼品だ)
私はふるさと納税そのものを止めろ、とまでは言わない。
せめて返礼品はなしとするか、カネのかからないものにすべきだ(「名誉市民章」だの「一日町長券」だのいろいろあるはず)。それでも他市町村との競争上カネのかかる返礼品を送りたいというのなら、そのカネは一般歳出予算には計上させず、市町村長及び職員の給与から支払わせるべきだ。そうすりゃ少しはアタマを使うだろう。
それはそれとして、今年の返礼品は何がいいだろうか。
「頭とクチは別物」、情けないが事実である。
(寄付額全国第2位宮崎県都農町 返礼品人気第3位「鰻のかば焼き5尾」 寄付しました~)