2020年1月23日木曜日

【山の歌】(その3)~山のシゴキ~

私の若い頃の登山全盛期には、大半の山岳会が、既成の登山道を辿って歩く一般登山に飽き足らず、いわゆる欧米風アルピニズム、即ち、冬山登山や岩壁登攀を競って目指していたために、新入会者には、激しい訓練いわゆる「シゴキ」が課せられました。その激しさは、おおむね、私大山岳部>国公立大山岳部>>社会人山岳会>>職域山岳会、の順であったようです。

当時、「シゴキ」は大学の運動クラブ全般で蔓延しており、その中で起きた事件に下記がありました。

農大ワンゲル部死のしごき事件
http://yabusaka.moo.jp/noudai.htm

私も、若い頃、京都北方の愛宕山頂上から少し下ってゆくと、いかにも重たそうなキスリング(帆布製の横長ザック)を背負った学生が登ってきました。さらに下ってゆくと、次々と同様の風体の学生に出会いました。

下になればなるほど疲れた様子で、中腹以下になると、のけ反り喘ぎ登る学生のキスリングから「石」が覗き、更に下ると、なんと、喘いで今にも倒れ込みそうな学生を何も荷物を担いでいない上級生風の学生が罵声を浴びせて棍棒でしばきあげていました。キスリングには確か「関西大学」と書かれてあったと思います。軟弱な私は、私大のシゴキの凄まじさに震え上がりました。

私が大学に進学した時、父親に大学山岳部入部を強硬に反対され、仕方なく社会人山岳会に入会したのも上記のような背景からです。

ネットで見たジョークに、母親が大学進学した息子に
「御願いだから、学生運動と山岳部だけはやめて!」
というのがありました(笑)。

なお、誤解のないように断っておきますが、上記の訓練は、

ボッカ訓練(歩荷訓練)といってわざとザックに石や砂を入れて重くして担ぐ基本的訓練

でありその目的は

重荷に耐え、かつ安定した歩行技術を会得するため

であり、現在でもまともな山岳会なら大なり小なりどこでもやっていることです。

さて、そのような厳しくシゴかれる新人部員の様子を歌った歌が下記です。

「新人哀歌」曲:『練鑑ブルース』さらに遡れば『可愛いスーチャン』の替え歌、詞:いくつか存在


1.いいぞいいぞと おだてられ
  死に物狂いで 来てみれば
  朝から晩まで 飯たきで
  景色なんぞは 夢のうち
  
2.チーフリーダーは 爺くさい
  サブリーダーは 婆くさい
  あとのメンバーは エロくさい
  メッチェン通れば 頭右
  
3.二年部員は 小生意気
  先輩なにかと 話好き
  地獄の二丁目 山岳部
  好んではいる 馬鹿もいる
  
4.蝶よ花よと 育てられ
  何の苦労も 知らないで
  ボッカ稼業に 身をやつし
  泣き泣き登る 雪の山
  
5.家へ帰ればお坊っちゃま
  山へはいれば 新部員
  何の因果でしごかれる
  まぶたに浮かぶ 母の顔
  
6.いわゆるアノコはお嬢さま
  おれはしがない 山がらす
  月を眺めてあきらめる
  笑ってくれるな お月様

    一、
    嫌だ嫌だよワンゲルは
    お偉い顔した人ばかり
    一つや二つの年ちがい
    どうしてそんなに偉いのか

    二、
    部長先輩雲の上
    三年 四年はお偉くて
    二年のガキども山の上
    大山の大将で大いばり

    三、
    いばりなさるな二年生
    一年無駄めし先に食い
    揃いも揃ってごくつぶし
    一年前を忘れたか

    四、
    パイプくわえてのし歩き
    あごでしゃくって指図する
    リーダーと立てればつけあがり
    昼寝ばかりが能じゃない

    五、
    時告ぐ鶏ではあるまいに
    朝も早くから起こされて
    米とぐ水の冷たさよ
    国の母さん恋しかろ

    六、
    可哀そうだよ新人さん
    新人歓迎でおだてられ
    ホンワカしたのも夢の中
    新人錬成でしごかれた

    七、
    いいぞいいぞとおだてられ
    死物狂いで来て見れば
    朝から晩まで飯炊きで
    景色なんぞは夢の内

    八、
    チーフリーダーはじじくさい
    サーブリーダーはばばくさい
    後の部員はエロくさい
    メッチェン通れば頭右

    九、
    二年部員は小なまいき
    新米何かと話し好き
    地獄の二丁目山岳部
    好んで入る馬鹿もいる

    十、
    蝶よ花よと育てられ
    何の苦労も知らないで
    ボッカ稼業に身をやつし
    泣き泣き登る雪の山


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2 件のコメント:

bandlover さんのコメント...

およよ~
しごきに近い特訓
強靭な体力は、このような基礎訓練からでしょうか?

歌は、当時の雰囲気をうまく語ってますね

>ネリカンブルース
なるものをご存じとは、幅が広いですね
そういう私も知ってるんですが・・・

今でも、単独遡行・有名ではない山頂登山記録の方はすごいと思います

漫遊さんも、私から見ると トンデモナイ健脚の雲上人です

軟弱な、わたくしは、今日も車横づけ、明治時代の地形図に記録されている鉱山探索を試みて、沢登4~50分ででかい坑口を見つけました。ハンマーでは歯が立たない閃亜鉛鉱らしき鉱石・ザクロ石などがありました。当地に来られるようなことあれば、異極鉱がある、近くの鉱山も含めて案内します。 高見より知られてないようで、意外とズリ残ってます

迷山漫幽 さんのコメント...

まいど!

>強靭な体力は、このような基礎訓練からでしょうか?

私もボッカ訓練よくやりましたよ。

>ネリカンブルース
なるものをご存じとは、幅が広いですね

いやいやユーチューブの説明欄に書いてあった文句のコピーですよ。

>漫遊さんも、私から見ると トンデモナイ健脚の雲上人です

体力テストでは同年代に劣っていると思いますよ。
長年の登山経験でラクに登るコツが身に付いてるだけと思ってます。

>軟弱な、わたくしは、今日も車横づけ、明治時代の地形図に記録されている鉱山探索を試みて、沢登4~50分ででかい坑口を見つけました。当地に来られるようなことあれば、異極鉱がある、近くの鉱山も含めて案内します。 高見より知られてないようで、意外とズリ残ってます

暖かくなれば思い切って遠出したいと思っているので御願いしたいですね。
明治時代の地形図・・・鉱山記号も徐々に消えてゆきますからね。
それに例の地図も鉱山穴発見に役に立つかと思います。

ではでは~。