1代目の話に、すっかり興味を惹かれて、善行たちは黙って

彼に耳を傾けます。

1代目は、店内を見回しましたが、目当てのものが、

見つからなかったのか、諦めたように、ポケットから

自分の時計を取り出しました。

 

「いいかい、この時計の中には、たくさんのネジや

ゼンマイや、細かい部品が入っていて、一瞬たりとも

止まらずに、動いている。

コイツは、電池式だが、あの柱時計は、もとはネジ巻き式だ。

つまり、定期的に巻かないと、いけないわけだ」

淡々と話す口調は、とりたてて特別なことでもなく、

ごくありきたりなことを話しています。

だけど、オヤジたちは、一斉に真面目な顔でうなづいています。

もしかしたら、心当たりがあるのかもしれません。

「ところが、ネジを巻かないといけないのに、その穴が

ふさがっていたり、うまく巻けなかったら、どうなるだろうか?

・・・それは、言わなくても、わかるだろう?」

そう言うと、1代目は時計をテーブルに載せて、まっすぐに

善行の顔をみつめます。

「そりゃあ、いつかは止まる」と善行。

1代目はうなづいて、

「そう、動かなくなるよな」と、大きくうなづきました。

そうしてゆっくりと、時計の長針と短針を指し示します。

「そこから導き出されることは・・・

元の持ち主は、なんらかの理由で、時計を手放さないと

いけなかった。そして、なにかの理由で、わざと動かないように

した。そうとしか、考えられないんだ」

ポンという音を立てて、机の上に、先ほど見た、石のような

物体を、机の上に置きました。

 

 

 

 

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