シニアオヤジーズのメンバーが、困り果てた顔をチラリとみて、付き添いの
中年の女性が言いました。
丁度聞けない空気になっていたので、善行は心の中で
(ナイスフォロー!)と言って、喝采を上げたい気持ちです。
ハナエさん…と言われた女主人は、少しもったいぶった様子で、
話そうか、話すまいか、ためらっているように見えました。
「この時計は…もともと、あの人のものなんです…」
重い口を開いて、ハナエさんはようやく、静かに話始めました。
遠い昔の想い出を、ゆっくりとひも解くように…
懐かし気に微笑みながら…
「私がお嫁に来る前だから、何年前のことかしら?
あの人も、お父さんからもらった、形見だから…と、
大切にしてたのです。彼には、当時付き合っていた人・・・と、
後で彼に聞きました。
何か事情があて、離れ離れになった・・・と。
この時計、彼女との思い出があるらしいのだけれど、
その辺の詳しい話はまだ、聞いていません」
そう言って、部屋の隅にポツンと置いてある柱時計を、
じぃっと見つめました。
「じゃ、どうして、あなたは知ってるのですか?」
善行は、ウスウス気付いていました。
この人は、すべてを理解したうえで、この時計を持っているのだろう…と。