母さんのお小言が、3周目に入ったところで、
「もう、いいじゃないか。そろそろ家に入れてやりなさい」
奥の方から、じいちゃんの声がした。
母さんは、少しブスッとしたが、
「先生ももう来てるぞ」
ようやく玄関先に、じいちゃんがやって来たので、まだ言い足りなさそうでは
あったけど、ここで無罪放免となった。
さすがの母さんも、じいちゃんには頭が上がらないらしい。
なんせ、居候だもんね。
そのまま奥へと引っこんでしまった。
裕太は救われた…と思い、救いの神だ、とばかりにじいちゃんを
見上げると、じいちゃんはニヤリと笑い、
「悪いヤツじゃないんだ。まぁ、気にしないことだ」
鷹揚な顔で、そう言った。
じいちゃんの後ろから、先生も遠慮がちに顔をのぞかせる。
丁度、母さんが家に戻るのと、入れ違いだった。
「相変わらず、元気そうだな」
久しぶりに会った岸本先生。
ニヤリと笑うと、裕太は少し笑ってごまかすようにする。
「そういえば!」と裕太が叫ぶと、思い出したように、
背中のリュックサックを下ろして、フタを開いた。
この中には、今日手に入れた『戦利品』が入っている。
洞窟の中で、見つけたものと、灯台で命からがら取って来たもの、
それから先ほど拾ったばかりの…(罠かもしれないが)
水晶と思しき仏像も入っていた。
リュックの口を大きく開くと、それがチラリ、と見えて
「おっ、これはすごいぞ!」
思わずじいちゃんは眼を輝かせて、裕太からリュックサックを
受け取った。