「まずは ここのボタンを押して」
ジュンペイが指し示すと、裕太はおそるおそるコントローラーを手に持った。
「まずは、飛ばすことから始めよう」
ジュンペイがそう言うと、緊張の面持ちで、裕太はこわばった顔でうなづく。
言われた通りに、ボタンを押して、操作をすると、プロペラが回り始め、
ドローンはフワッと浮かび上がる。
「うわぁ~」
思わず夢中になり、コントローラーで左に振る。
思いのほかスムーズに動くので、大丈夫かと思っていたら、
自分の足元が、段差があるのに気付かず、裕太は石に足を取られる。
「あっ!」
目を離したすきに、コントローラーを落っことしそうになり、あわてて手を伸ばすと
バランスを崩して、ドローンはグラリと揺れ、あっという間に急降下してきた。
「あぶない!」
ジュンペイがあわてて飛び出すと、目の前の人にぶつかる。
「すみません」
ドンと衝撃を感じ、下を向いたままあやまると、ふいに手元に気が付いた。
(ドローンはどこ?)
きょろきょろとして探す。
「おっと、きみ、元気がいいなぁ」
ごく近くに、しわがれた声が聞える。
誰?
思わず裕太とジュンペイが顔を上げると…
目の前に、小柄な老人が立っていた。
2人はビクリと体をこわばらせる。
怒られる、と思って、ギュッと目をつぶった。
しかし全く、この老人の気配を感じなかった…
それに気づくと、ジュンペイの方を見る。
やはり彼も驚いた顔で、裕太と全く困った顔をして、こちらを見ている。
ヒョイッと音もなく近付くと、
「ほぉ~面白いおもちゃがあるんだなぁ」
感心したように、足元を探った。