まさかカスミさんに、見せるわけにはいかない…

とりあえずどこかにしまおう、と思う。

もちろん 安全な場所など、思いつきもしない。

そっとソファーの側に、カバンを置くと、買ってきたばかりの下着などと共に、

バスケットの側に置いた。

 なぜだか信子は、ソワソワする。

悪いことではないのだけれど…何となく後ろめたい気持ちになる。

カスミさんには言えない秘密を、持ってしまった…と感じた。

 月の光を浴びて、ガラスの靴はキラリと光る。

もしかして…自分をまた、どこかへ連れて行ってくれるのではないか…と、

信子は少しだけ、夢想した。

 

 

「ね、信子ちゃん、あなた…学校へ行ってみない?」

 このまま 家で、ゴロゴロしているのはよくない…と、カスミさんは心配そうな顔をして、

信子に聞いた。

 この家に来て、1週間。

 家とスーパーと公園くらいにしか、出かけない彼女に、

カスミさんは心配しているのだ。

「タクトと相談してね、何とかあなたを…学校へ行かせようと考えているのよ」

じぃっと信子の顔を見つめて、カスミさんは言う。

この子…まだ義務教育なんじゃあないの、と疑っているのだ。

「ね、あなた…今、幾つ?」

そのものズバリ、聞いてきたのだ。

信子はためらいつつも、小声で

「15です」と言う。

 もしかして…黙っておいた方が、よかったのかしら…と、

ちょっとだけ迷っていた。

「ふーん、15かぁ」

腕組みしながら、カスミさんは言う。

「…ということは…中学3年生?」

やはり そうきたかぁ~と、信子は目を泳がせた。

 

 


 

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