「えっ、なに?」
俄然ジュンペイは、その奇妙な老人に興味を持ったようだ。
老人の顔を穴があきそうなほどにじぃっと見る。
浅黒くて、黒光りのする鮫肌の、ボーボーの白髪頭のおじいさん。
仙人というよりか、世捨て人のようにしか見えない。
すると「おっ」と老人が急に、目をカッと見開くと、イキイキと輝かせる。
「これを使って、探って欲しいことがあるんだ」
急に腰をかがめ、声をひそめるようにして言った。
「それにはまず…カメラを使えるようにして欲しいのだが」
白く濁った眼を、まばたきもせず、ぎろりと見開くと、裕太に向ける。
「出来るかね?」
急に真面目な顔をして聞くので、裕太はジュンペイの方を振り向いた。
だがジュンペイは、少しもビクつくこともなく、ニヤリと笑うと
「出来ます!」と大きくうなづく。
「だけど、それには…少し手間がかかるけど…」
と言いつつも、好奇心で、その目をキラキラと光らせて、老人の顔を見返した。
かなり自信があるのか、元々動じない性格なのか、まったくオドオドする様子もない。
裕太は、この2人のやり取りを、ドキドキしながら 黙って見守っている。
どんな風に細工するとか、どこに手間がかかるのか…
裕太には全くチンプンカンプンだ。
それが本当に出来る、と言い張るジュンペイを、ただただ尊敬のまなざしを
向ける…
「ほぅ、そうか」
満足したように、老人は大きくうなづく。
白く濁った瞳が、キラリと光を放ち、やけにおっかなく、
ついこの間の人と、同じ人とは思えない裕太なのだ。
「それは そうと…」
ふと老人は改まった口調になる。
「なぁ、知ってるか?この島には…古くから、ある言い伝えがあるっていうのだ」
面白そうに、裕太とジュンペイの顔を見比べた。