元気なのは、確かにいいことなのだ。
だが…年寄りにもわかりやすく説明してくれないと、イカン…
育て方を誤ったか…
ま、育てたのは、娘の綾女なのだが。
そんなことを、つらつらと考えて、じぃっと裕太を見る。
一方の裕太は、そんなじいちゃんの気持ちなどおかまいなしに、ただのん気に
「ねぇ~あの井戸はなに?
なんで、あんなトコにあるの?」
また前触れもなくそう言いだすので…一体この子は、どうしちゃったんだ、と
思わずしわだらけの手を、裕太のオデコに当てる。
はははは!
くすぐったそうに、裕太は身をよじると、
「大丈夫だよ!ボク、熱何てないよ」
じいちゃんの手をぐぃっとつかむと、オデコから引きはがす。
ごつくて、しわだらけで、しみの浮き出た無骨な手をじぃっと見ると、
「ねぇ、じいちゃん!
この島に住んで、ずいぶんになるの?」
突然また、奇妙なことを聞く。
おいおい、どうしちまったんだ?
あのジュンペイという男の子に、影響されたのか?
それとも暑さにやられたのか?
何だって今、そんなことを聞くのか?
「おい、大丈夫か?どうしたんだ?」
そう言いつつも、じいちゃんの答えを、裕太は辛抱強く待って、じっとこちらを見ているので、
「あぁ、そうだな。
じいちゃんのじいちゃんも…
そのまたじいちゃんも、ずぅーっとこの島に住んでいるんだよ」
真っ白な眉毛を、への字にさせて、孫の裕太を見つめた。
「へぇ~そうなんだぁ。すごいなぁ」
裕太は純粋に感心して、無邪気な声を上げる。
「すごいもんか。
この辺の人はみんな…そういう人ばかりだよ」
裕太を満足させるような、心浮きたつ出来事など、自分は知らない、と
じいちゃんはひそかに思う。
あるのは退屈で、平凡な毎日だ。
それなのに裕太は、目をキラキラさせて、
「でも、自転車屋のオジサンは、違うと言ってた」
半ばムキになるように、裕太はじいちゃんの顔を見上げた。