そこまでしなくても、いいのではないか…と思うけれど、どうやら違ったようで
オジサンはヘラリと笑い、
「男の子は、元気な方がいい」と言う。
どうやらオジサンは…ジュンペイのような元気な男の子が好きなようだ。
元気過ぎる、とも思うけれど。
裕太は返事に困り、それをごまかすように
「で、どうなったの?」
どうにか話を元に戻した。
「えっ」
すっかり忘れていたのか、オジサンは一瞬ポカンとして
「どう、とは?」と聞き返す。
「だから、かくれんぼ!」
「えっ、見つかった、と言ったじゃないかぁ」
またもジュンペイが先に、口をはさむ。
「いやぁ~そういうことじゃなくって…」
木のトンネルを抜けた後、何があったのか…というのを聞きたいのに、
どうやらうまく伝わっていないようだ。
まぁ、いいかぁと、あきらめたように口をつぐんだ。
するとオジサンが、ハハッと笑い、
「何しろ驚いたよぉ~
見たこともない景色が、広がっていたから…」
そう言うと、黙って前方を指し示す。
「あっ」
オジサンの視線の先を見ると、思わず息をのむ。
丁度その時、目の前をさえぎるものがなくなり…
2人を圧倒した。
一面の海原だ!
もちろん切り立ったガケはそのままだが、天然の要塞のように、
目の前に碧一色で、埋め尽くされている。
ここは、車も立ち入れないような場所だ。
人の手が入らない、自然の景色がそのままに、一大パノラマが広がっていた。
「うわぁ~」
ひと声叫ぶと、ジュンペイが走って行こうとする。
「こらっ!危ないから、気をつけて!」
すかさずオジサンの鋭い声が響く。
「落っこちたら、真っ逆さまだ!
それよりも…あの世行きかもなぁ」
やや険しい顔で、そう言うので、ジュンペイは「うん」とうなづくと
おとなしく走るのをやめた。