私は両親から「食べ物を粗末にするな」と教えられて育ちました。
「歯を磨くときは水を出しっぱなしにするな」というのも、私の中では常識です。
それが!
働いているレストランのキッチンでは、それは常識ではなくなります。
まあ捨てる捨てる。
野菜をまっすぐに切れば無駄は少なくなるのに、見た目を良くするために斜めに切るので、捨てる部分が大きくなります。
あるいは、例えばローストしたビーツの大きさがまちまちなので、切ったときに中まで火が通っていないものもあります。
捨てます。
「もうちょっとホイルかなんかでくるんで火を通したら・・・」と、私なんかは思うのですが、捨てます。
皮も剥いてしまったし、新たに加熱しても同じようにはならないのでしょう。
ハーブの束が、色が変わってきているものがあると即、束ごと捨てます。
「古くなってきたところだけ取り除けば、まだ使えるものもあるのに・・・」とひそかに思いますが、捨てます。
色が変わってしまったということは、香りも違ってしまっているのでしょう。
作ったソースなどが、どういうわけか味や濃さがいまひとついつもと違うと、全部捨てて作り直します。
ドレッシングやソース、調理済みの食品は3日経ったら全部捨てます。
ブリオッシュを焼いて作るサラダに添えるクルトンや、かりっと揚げたオニオンは、一日の終わりに残ったら捨てます。
冷凍してあったステーキ肉や鴨肉を解凍するために、水道の水がざーざー出しっぱなしになっています。
最初の頃は、いてもたってもいられないくらい、気になりました。
これらを「うわーもったいない!」と思うのは、「お客に出すもの」というプロ意識を私がまだ持てていない証拠のように思われます。
良いとか悪いとか、正しいか間違っているかではなく・・・いや、この場合、貧乏くさく「もったいない」と思う私が”違う”のでしょう。
働き出して3ヶ月で学んだこと。
もちろん、なにもやたらめったら捨てているわけではなく、最優先すべきはベストのものをお客に出すこと、それがレストランの矜持というものなんですね。