僕は眠れない、人が当たり前のようにやってのける睡眠が、僕にとっては困難を極める、不眠症を発症したのは小学生の頃、隣にオカンが寝ていてすぐにイビキをかき出してうるさくて眠れなくなった、高校生になって一人部屋を確保したのだが「あれ?どうやって人間は眠るのだ?」と布団に入って考え出すと眠ることが出来なくなってしまった、何度も何度も眠れない独りぼっちの夜の世界に取り残され、心を病んだ、30歳になって心療内科の門を叩き、うつ病と睡眠障害と診断された、薬を処方されてから赤ちゃんのように眠ることが出来るようになった、しかし睡眠薬で眠るのは睡眠ではなく気絶に等しく、睡眠よってもたらされる恩恵が受けられないと知り絶望した、打って変わって嫁は睡眠のプロだ、眠りのヘコキブタンと言われるほど一度寝たらテコでも起きない、試しに剃り残しの脇毛を抜いてみたが図太く眠り続けていた。