先日、シリンジポンプで薬液投与を開始した際にチューブのクランプを開け忘れてしまい、長時間投薬できていなかったというアクシデントの話を聞きました。
シリンジポンプで薬液投与を開始したつもりでも、チューブクランプや三方活栓の開け忘れなどで投薬できていなかったという事例は過去に何度も聞いたことがありますので、使用開始後にクランプ等が開いているか再度の確認が必要になります。
では、シリンジポンプでチューブクランプを閉じたまま開始したり、チューブの屈曲などで閉塞した場合にはどのくらいで閉塞アラームが発生するのでしょうか?
実は、閉塞アラームが発生するまでの時間はシリンジポンプの閉塞圧設定によって変わってきます。
普通に使用しているとあまり意識して見ることがないと思いますが、シリンジポンプは閉塞圧設定が表示されています。下の赤丸で囲まれたところが設定値になり、L(Low)、M(Middle)、H (High) の3種類があります。
通常はMになっていることが多いと思います。
テルモ社製シリンジポンプの場合、50mlのシリンジを使用し、設定流量が50ml/hでの閉塞アラームが発生する圧力は下の表のようになっています。
閉塞圧設定値 |
閉塞圧アラーム 発生圧力(Kpa) |
L |
26.7〜53.3 |
M |
53.3〜80 |
H |
80〜133.3 |
圧力測定器を使用してシリンジ10ml、20ml、30ml、50mlを同じシリンジポンプで使用した場合、閉塞圧が発生するまでの時間を測定しましたので結果をみていきましょう。
閉塞圧設定は通常使用しているM設定で行いました。(個人での測定ですので、閉塞圧が発生するまでの時間は参考程度にしてください)
設定流量を2ml/hで投与した場合、各シリンジでの閉塞アラームが発生するまでの時間と、閉塞アラーム発生時の圧力は下の表のようになりました。
設定流量2ml/hの場合 |
||
シリンジサイズ |
閉塞アラーム発生時間 |
閉塞アラーム発生圧力 |
10ml |
14分 |
69.07Kpa |
20ml |
24分 |
76Kpa |
30ml |
29分 |
63.07Kpa |
50ml |
71分 |
59.74Kpa |
シリンジの種類によってアラームが発生するまでに大きな差がありますね。
50mlのシリンジでは1時間以上もアラームが発生しませんでした。
設定流量を1ml/hの場合ではどうでしょうか。
設定流量1ml/hの場合 |
||
シリンジサイズ |
閉塞アラーム発生時間 |
閉塞アラーム発生圧力 |
10ml |
29分 |
78.67Kpa |
20ml |
43分 |
67.34Kpa |
30ml |
53分 |
72.54Kpa |
50ml |
93分 |
56.14Kpa |
こちらもシリンジの種類によってアラームが発生するまでに大きな差がありますし、スタートしてから長時間アラームが発生しないことがわかりますね。
50mlシリンジで設定流量が0.5ml/hの場合では4時間以上閉塞アラームが発生しないことがありました。
シリンジポンプで薬液投与する場合、低流量では閉塞圧が発生するまでに長時間かかってしまいま、その間、患者さんには薬液が投与できていないということが起きてしまいます。特にシリンジのサイズが大きいほどアラーム発生には時間が掛かりました。
閉塞やクランプの開け忘れがあった場合などでも、設定流量に応じて使用するシリンジのサイズを選択することで早期にアラームが発生させることができます。
また、シリンジポンプを見るとある程度の閉塞状況がわかります。
下図の赤枠で囲まれたところが回路内の閉塞圧をインジケーターで表示してくれます。通常は何もランプが付いていません。
回路内圧が高くなるとランプが点灯します。
さらに圧力が高くなると点灯するインジケーターの数が増えます。
最終的に閉塞圧アラーム発生圧力に達した時点でアラームが発生し、異常状態をお知らせしてくれます。
シリンジポンプ開始後は定期的に閉塞圧インジケーターのチェックをすることにより、早期に閉塞状態の発見を行うことができますので、注意して見てみてください。
最後に
シリンジポンプを使用して投与する薬剤は微量で効果のある薬剤が多いです。何らかの原因で閉塞し、長時間投与されないと患者さんの容態が悪化してしまうことがあります。
適切なシリンジサイズの選択や機器の確認ポイントを知ることで、閉塞があっても早期に発見できるようになると思いますので、ぜひ参考にしてみてください🤗