モーニングセミナー | おおとり駆の城日記

おおとり駆の城日記

子供の頃からお城好き 今までに巡ったお城の感想 その他どうでもいい趣味のことなどあれこれ綴っていきます

愛知学院大学のモーニング・セミナーに参加してきました。
これは毎月1回大学の中で開かれるもので、早朝7時からスタートするオープンセミナーです。我が家の近所にある大学なので、このセミナー自体の存在は知っていましたが、今回は夏休み特別企画で奈良大学の千田嘉博先生が講演されるということで早起きして初めて参加しました。


会場には6時半に着きましたがすでに会場は半分以上埋まっていました。
7時前には司会者の人がこの会場は500人入りますが、すでに立ち見が出て資料も足りない状況です、こんなことはこのセミナー始まって以来です、と驚いた様子で話していたので、千田先生の人気ぶりがうかがえます。


今回の講演のテーマは「名古屋城物語~名古屋城の秘話~」ということでしたが、名古屋城の歴史というよりは、現在名古屋市ですすめている天守の木造再建計画については重大な問題がある、ということについて解説されました。

以下講演の内容です。

課題として語られたことは
1) 名古屋城の歴史的価値とは
2) 天守木造建設の何が問題か
3) 史跡整備とバリアフリー
の3点です。

1)名古屋城は特別史跡であり、櫓、門ももちろん、石垣や堀、城のかたちこそが名古屋城の本質的価値である。いかに史実に忠実な天守を復元しようと所詮は原寸大レプリカでしかなく、当然のことながら何年たっても国宝になることはない。むしろ戦後市民の多額の寄付で戦後復興のシンボルとして復元された現行の天守に価値はないと言い切れるのか。これは文化庁からも指摘されている問題である。

2)通常特別史跡の原寸大建物復元には10年以上の期間が必要。綿密な保存活用計画を文化庁が審議する手続きになっている。 しかし、名古屋市は後付けで保存活用計画を作成したにすぎず、事実、文化庁から門前払いをくっている。天守台石垣の基礎的調査ができていないことが最大の問題である。

名古屋城の天守台の石垣はS字変形を起こしており、石垣裏の栗石が沈下し、さらにその背面の土が表面に露出してきているところもあり、極めて危険な状態である。また空襲で天守が焼失した際、石材が熱劣化し、剥離している部分もみられる。

木造天守の再建を請け負った竹中工務店には石垣の専門家はおらず、江戸期の石垣を修繕できる人材(石工)は全国でも限られている。その人たちも現在熊本城や弘前城などの修復にかかりきりの状態である。

また、本丸御殿スロープのコンクリート基礎が石垣の根石の状態確認をできなくさせている。もっと悪いのは、小天守に接近しすぎて建てられた本丸御殿が石垣修繕のためのクレーンも入れなくしている。

名古屋市は天守を木造復元したあとに、9年間かけて石垣を調査し修理するとしているが、 史実に忠実な天守のために特別史跡である本物の石垣は壊してよいという考え方は史跡の整備ではありえない。

 3)特別史跡の整備で、史実に基づいた整備とバリアフリーを両立するのは当然。金沢城の二の丸多聞櫓、首里城正殿などは木造復元だが、いずれもバリアフリーのエレベーター・スロープなどを設けている。名古屋城も石垣の調査・研究と、それを踏まえた安全確保が最優先。そもそもスロープやエレベータがあるのが格好悪いという意識が格好悪い。

私たちは名古屋城を軍事施設として再現するのではない。誰もがより豊かな文化を体感し、我が国固有の歴史を実感する場として史跡整備をする必要がある。

千田先生が一貫して主張しているのは「木造再建そのものに反対ではない。名古屋城の本来の歴史的価値のある石垣を調査し、保全対策をしてから再建に取り組むべき。天守を再建し、そのあとで土台の石垣を解体、改変することは本末転倒である。」ということです。名古屋市長にも何度か提言をされたそうですが、聞き入れてもらえなかったそうです。


暗澹たる気持ちになったので、講演のあとでツイッターで千田先生に直接質問をしました。

「名古屋市が文化庁の許可がおりないまま再建工事を強行する可能性はないのですか?」


千田先生からのお答えは

「文化庁の許可なく特別史跡名古屋城の現状を変更すると、無断現状変更になります。管理団体である名古屋市が無断現状変更を行うことは、政令指定都市が意図して法を破る行為にあたるのでふつうは起きないと思います。」


なるほど。半分は安心しましたが、この先我々名古屋市民のシンボルはどうなるんだろうかとも不安になりました。


今月の「文藝春秋」にも千田先生が書かれた「名古屋城天守復元の問題」というこの日の講演と同内容の記事が掲載されています。ご興味のある方は是非お読みください。




ランキング参加しています。

よろしければご協力お願いします。