【癌を患っていると温泉には入れないか?】
「癌を患っている人は温泉に入ってはいけない!」と皆さんの多くは思ってらっしゃるのではないでしょうか?野田市北部の内科医も数年前まで「本当に悪性腫瘍に温泉は悪いのか?」と疑問に思いつつも「確たる医学的根拠はないが悪性腫瘍で温泉入浴は禁忌だ」と認識していました。
今回のテーマは「悪性腫瘍(=癌)と温泉」です。
【温泉で掲示されている禁忌症に悪性腫瘍の記載がある】
皆さんは温泉の脱衣場などに、温泉の成分、効能、禁忌などといった内容の掲示がされているのをご覧になったことはありますでしょうか?そのような掲示をご覧になったことがある方はかなり多いように思われます。そして、そこに温泉の禁忌症の一つとして「悪性腫瘍」と書かれていることに気付いた方も多いのではないでしょうか?そして、「癌での温泉入浴はしてはいけない」と認識しているのはその掲示を見て、という方が多いのではないかと私は思います。
ここで一つ解説をしておきたいことがあります。それは温泉で掲示されている禁忌症(禁忌とはしてはいけない医療行為という意味です)は癌に対する温泉療法はしてはいけないということをを指すものだということです。
それでは、なぜ、癌に温泉療法は駄目だと掲示されていたのでしょうか?千葉県野田市の内科医がそれを次で考えていきます。
【温泉で掲示される禁忌症の内容が平成26年に改訂されています】
実は掲示する温泉の禁忌症の内容は平成26年に改訂されています。改定前はただ悪性腫瘍と記載されています。一方改定後は「進行した悪性腫瘍・・・・など身体衰弱の著しい場合」とされています。
改定前のものには形容詞が付かない「悪性腫瘍」が禁忌症に入っていますが、その記載は少なくとも昭和23年制定の温泉法に記載があり、平成26年に改訂されるまで続いていました。大規模な比較検討試験といったものは、その性質上当然と思われますが、なされていない印象を受けます。 (財) 中央温泉研
が報告をされた、「温泉の適応症・禁忌症及び注意事項の策定経緯についての変換」というものを読む限りは疑問の余地はあまりないと思われます。
【悪性腫瘍が温泉療法の禁忌症と記載されていた理由】
上記策定経緯についての報告で挙げられている、文献、パネルディスカッションの内容をから野田市北部の内科医が考えると、悪性腫瘍が温泉療法の禁忌とされ続けてきた理由は次の2つが大きな原因と思われます。
1交通手段が現在のように発達していなくて、利便性に欠けていた当時は温泉に行くという行為だけで身体に大きな負担がかかり状態の悪化に繋がる例が少なくなかったこと。
2温泉地では今日のように救急時の対応が十分に整備されていなかったため十分な治療を受けることができないことが多かったため状態が悪化した例が多数であったこと。
それでは、そのような医療事情が是正された平成26年の改定内容の記載はどうかについて考えてみます。
【進行した悪性腫瘍は妥当な記載】
新しく改訂された内容は 「活動性の結核,進行した悪性腫瘍,高度の貧血など身体衰弱の著しい場合」 となっています。野田市北部の内科医はこの記載は妥当だと思います。全身状態が良好であれば悪性腫瘍の場合でも温泉での療養は問題ないと思われます。
温泉療法は温泉に入浴による作用に加え温泉地という環境による心理状態への影響、温泉地の気候・景観といった作用が人間のもつ回復力に寄与、それを向上させるといった効果があると判断されます。
身体衰弱の状態では、温泉療法での様々な作用に対しそれを受けて反応することが出来ないので、温泉療法はしてはいけないのです。
旅行に行って、その日1日か宿泊しての2日間の入浴は、温泉療法とは違います。その場合はその時の体調などによって入浴の可否を決めることになるとおもわれます。
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