もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ホルムズ海域でのタンカー攻撃を考える。

2019年06月14日 | 軍事

 ホルムズ海峡(海域)で商船2隻が攻撃を受けて損傷する事件が起こった。

 事件は日本時間13日正午ごろ、中東のホルムズ海峡付近で、日本の海運会社が運航するケミカルタンカー「KOKUKA(パナマ船籍/2万トン/メタノール積載)とノルウェーの企業が所有する軽質油たんかー「フロント・アルタイル(マーシャル諸島船籍/11万トン/ナフサ(粗製ガソリン)積載/火災発生)」が何者かの攻撃を受けたもので、KOKUKAは約3時間後にも再度攻撃を受けたとされている。現時点では攻撃の詳細や実行者は明らかでなく、攻撃武器も機雷・魚雷・砲弾と錯綜しているが、アメリカのポンペオ国務長官が記者会見で「(攻撃は)情報活動と、使われた武器、作戦実行に必要な専門知識の水準、イランによる最近の類似した船舶攻撃から見て、この地域で活動する代理集団でこれほど高度な行為をするための資源や能力を持つものは他にいない。攻撃の責任はイランにあるというのが米国の見解だ」と明言したことから、イランが攻撃に関与しているという確度の高い情報を持っているものと推測する。素人目に攻撃を分析すると。①アメリカの意を受けた安倍総理のイラン訪問中に行われたこと。②係争中のサウジ・UAE等を刺激するであろう深刻な海洋汚染を局限するために原油タンカーではなくケミカルタンカーと軽質油タンカーを標的にしていること。③イラン軍の監視・救助活動が始まっている可能性が高い3時間後に再度攻撃していること。④掲揚された国旗に惑わされることなく米中露が運航に関係しない日本とノルウェー船舶を狙っていること。⑤11万トンの船腹に損傷を与え得る武器(少なくとも対戦車ミサイルや携SAM以上)を使用していること。⑥複数の目標に対して同時期に攻撃していること。⑦どの組織からも犯行声明が出されていないこと。等々を考えれば、イラン政府の高いレベルの判断と情報と組織が関与しているとするアメリカの分析は信頼できるのではないだろうか。

 船舶の実質的は所有者(運航者)と積み荷を特定する方法を考える。航行中の船舶は、船籍を示す国旗を船尾に掲げ、仕向地(行く先)を示す国旗をマストに掲げる。今回の「KOKUKA」の例では船尾にパナマ国旗を、マストには仕向地のシンガポールかタイの国旗を掲げており、日本の海運会社が運航していることを外見からは知ることはできない。余談であるが、現在外洋にある船舶の6・7割はパナマかリベリアの国旗を船尾に掲げている。積み荷に関しても、空船以外のほぼ全てのタンカーはマストに「B旗(国際信号書に定める危険物積載船)」を掲げているために、ケミカルタンカーの積み荷が環境汚染の誘因となる有害物質か、海洋汚染をそれほど心配しないで済むメタノールかを知ることはできない。両者を特定できるのは港湾管理機関のみであり、テロリストがたやすく入手できるものだはないだろうと推測する。


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