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 第5回分をしたためる前に、改めて確認しておかなければならないことがある。

 

 言うまでもなく、脚本・池端俊策の代表作は1991年の大河ドラマ『太平記』。歴代の大河ドラマでは唯一、鎌倉時代末期~南北朝時代(室町時代初期)を扱っている『太平記』は、その複雑かつ描写も解釈も非常に難しい時代であるにもかかわらず前年の『翔ぶが如く』、後年の『信長 KING OF ZIPANGU』以上の視聴率を記録、いまだに語り継がれる大河の名作として、池端俊策という脚本家の名を不動のものとした。

 

 池端自身は室町時代そのものに思い入れがある様で、これが『麒麟がくる』の方向性を大きく特徴づけている。というのは、従来三英傑を中心とした「戦国時代」を、長く続いた応仁の乱から生まれ落ちた新しい時代、という描き方が当たり前であった「ある種の」伝統的手法をそのまま踏襲してはいない、ということ。

 

 池端が描こうとしているのは一見すると「戦国時代」ではあるが、本質的には「室町時代末期」である。これまでの回を振り返ってみても、従来は斎藤道三らを描く上での脇役程度でしかなかった美濃守護である土岐家、そして今回の将軍足利家における足利義輝(向井理)や細川藤孝(眞島秀和)、今後登場する足利最後の将軍・義昭(滝藤賢一)の描かれ方を見ていくと、この先ますますその視点は鮮明になる。

 

 

 従来の大河に見られなかった『麒麟がくる』の斬新さというのは、まさにここにあることを覚えていただいて良いかと思う。

 

 今後もあざとくならない程度に、『太平記』のオマージュというか、続編的なニュアンスがそこかしこに見られるハズだが、私はまさにそこを、楽しみに観ていきたいと思っている。

 

 そんな『麒麟がくる』第5回・「伊平次を探せ」は、これまで以上に「室町時代末期」を前面に押し出した回である。

 

 …さて、ここまでが前置き、ここからが本編となる。

 

<あらすじ>

 

 常在寺の住職から聞いた、足利将軍家が京の本能寺に命じて鉄砲を製造しているという話を踏まえ、斎藤利政(本木雅弘)は公方(将軍)が鉄砲に執心する理由を知りたがる。

 

 自らの館に戻った十兵衛光秀(長谷川博己)は家臣の藤田伝吾(徳重聡)から、かつて領内にいた伊平次(玉置玲央)という男が、鍛冶屋として近江の国の友村に流れていき、鉄砲を作っているという噂を聞く。

 

 十兵衛は三日かけて友村の刀鍛冶を訪ねるが、刀匠は将軍家からの緘口令を盾に、一切の情報を伝えようとしない。

 

 しかし若い鍛冶が、金と引き換えに、伊平次が本能寺にて鉄砲鍛冶として雇われていることを十兵衛に漏らす。美濃に戻った十兵衛は利政に京までの旅費を願い出る。


 京、本能寺。巨大な門と城塞の様な堀、そして多数の護衛の武士。

 

 十兵衛は、背負った鉄砲に目を付けた若侍に尋問され、鉄砲を置いて行けと迫られる。十兵衛が断ると、若侍は刀を抜く。これに応戦する十兵衛。

 

 

 その時、馬に乗った高貴な少年が数人の家臣に囲まれ門から出てきた。甲高い声で、二人の立ち合いを諫める。

 

 群衆からは「公方様じゃ」、という声が。足利家十三代将軍・義輝である。

 

 

 十兵衛が義輝の後姿を見送っていると、以前堺で出会った武士がいるではないか。侍の名は三淵藤英(谷原章介)。今しがた立ち会ったのは弟の細川藤孝で、兄弟共々将軍の側近を務めているのだという。

 

 

 三淵はこれから松永久秀(吉田鋼太郎)に会うというので、これに同行する。三淵は伊平次を知っており、既に本能寺から姿を消し、皆が行方を捜していることも教えてくれた。ならばここに留まっていても仕方がないと考え、三淵とともに松永に会って、かつての鉄砲の融通の礼をしようとしたのであった…。

 

 

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 冒頭の通り、従来ならば戦国の世の旧勢力程度にしか描かれてこなかった将軍足利家を、事細かに描写してみせた今回から、いよいよもって池端俊策の描きたかった世界の深みに突入していく様が、よくわかる回と言って良いかと思う。

 

 また、松永の仕える三好長慶(山路和弘)‐室町幕府管領・細川晴元(国広富之)ラインにせよ将軍家にせよ、この時代にまだその実用性が疑わしかった鉄砲を、所持する数によって戦への抑止力にしようとする構想は、現代の核軍縮にも繋がる発想であるが故にリアルで、単にセリフで平和平和と繰り返されるよりかは遥かに説得力がある。

 

 しかし…今回最も美味しいところをさらっていった演者は、長谷川博己との殺陣を見せた細川藤孝の眞島秀和でも、十兵衛光秀をいよいよもって本格的に慕う心情を見せ始めた駒(門脇麦)でもなく…やはり松永弾正の吉田鋼太郎だった。いけないと思いつつも巷の声の通り、どうしても長谷川博己との絡みの中に『おっさんずラブ』を見出してしまう自分が、少し嫌だった位だ。

 

 

 次回第6回の「三好長慶襲撃計画」では、かろうじて均衡を保っていた京の束の間の平和が一気に動き出しそうで、否応無しに期待してしまう。

 

 ちなみに…もうひとつの焦点である帰蝶(川口春奈)と駒の「女子会」は…今回はない。

 

 そもそも意外なことに、今回は川口春奈の出番そのものがなかったのである。

 

 

 

『池袋ウエストゲートパーク』 2000年4月14日~6月23日 金曜日21:00~21:5(初回放送) TBS
原作:石田衣良 脚本:宮藤官九郎 監督:堤幸彦 プロデューサー:磯山晶
オープニング:Sads「忘却の空」

 
出演:
長瀬智也、窪塚洋介、渡辺謙、山下智久、佐藤隆太、阿部サダヲ、加藤あい、妻夫木聡、高橋一生、坂口憲二、古田新太、西島千博、須藤公一、矢沢心、小雪、きたろう、森下愛子、小栗旬 他