深夜業務の最中に右膝を怪我し
まもなく1年がやってくる。
近くの整骨院で
マッサージを施してもらっていたが
歳のせいもあり、治りが遅く
週末のテニスにも支障をきたして
苛立つ日々。

適度なウォーキングと筋トレを。

医師が言っていた一言を思い出し、
私は河川敷に繋がる春先の土手を
歩こうと決めた。
尋常じゃない風が私を阻む中、
フィールドコートの襟を耳まで覆うと
隙間から入る風のせいで
イヤフォンから入る音楽が
聞こえなくなった。
ならばとフードをスッポリ被ると
すれ違う飼い犬が怪しさのあまり
牙をむき出しにして私に吠える始末。

マラソンなら折り返しがあるが
帰りは自分が決めないと
我が家はどんどん遠くなる。 
陽が落ちると街灯の無い道は
ジャングルの様で
けものこそ出ないが(たぶん)
誰もいない静寂の空間は少し怖い。

2時間近くも歩くと空きっ腹を催し、
すんなり折り返す事にした。
乳酸が貯まり始めた足は重く、
頭の片隅に明らかな後悔があった。


*実際の復路の景色

第二子が産まれた時は
40代にして20代の体力と
言われていい気になって、
明らかに老いは細胞を蝕み
つじつまを合わすかの如く
現代に至る。

遠いな。

そんな弱音を吐いた。
救いは、西から吹く風が
私の体を後押しをしてくれ
少し楽だった事。
フードを下ろすと
まだ冷たい風が
薄くなった頭髪をなめ、私は
寒さで白く粉を吹いた両手を
摺り合わせ、軽く息を吹き込んだ。

春はまだ遠いのか。

そんな
早春の情景。