フレンチトースト訴訟

父ちゃん大法廷に立つ(計画)



控訴理由書(3)

高裁に提出した控訴理由書です。全部で6章ありますので、今回は3章をUPします。

 

(8)がラーの鏡に映った真実です。これを発見した時は、心が踊りました。これで原判決が取り消せたらいいな。

 

 

第3 所得が500万円を超えるひとり親世帯の平均収入額について

 

(1)原審では,所得が500万円を超えるひとり親世帯の父母の平均収入額に差異があることを推認し,それを判決の基礎にしているので,以下のとおり反証する。

(2)前提として,就業構造基本調査での収入金額は,税引き前の収入金額を集計したもの(甲13号)で,税法上の給与所得控除を適用した所得額ではないので,まず税法上の所得500万円を統計上の収入金額に換算する。税法上の500万円を超える所得は,給与所得控除前の給与収入額に換算すると688万8889円を超える収入に相当する。ゆえに就業構造基本調査のデータを取り扱う際には,688万8889円に最も近い700万円を境にした階級による分析を行うものとする。

(3)また,度数分布表から平均値を求める場合は一般的に知られる以下の公式を用いて算出する。ただし,最上位の階級には上限がないため,階級値としては階級の下限を階級値とする。例として,600万円から699万円の階級の階級値は650万円,1500万円以上の階級の階級値は1500万円である。

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(4)まず,甲12号に記載された平成24年の就業構造基本調査の[表Ⅰ-24 男女,主な雇用形態,所得階級別雇用数(役員を除く)の割合]に示された度数分布表の中から正規職員・従業員の平均収入を700万円未満と700万円以上に分け,男女別に平均収入額を算出する。その結果は以下の表とグラフに示すとおり700万円未満の男性の平均収入額は約402万円,700万円未満の女性の平均収入額は約310万円,700万円以上の男性の平均収入額は約942万円,700万円以上の女性の平均収入額は約903万円となる(甲14号)。

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(5)この結果からは,確かに正規職員・従業員で700万円以上の男性の平均収入額が,700万円以上の女性の平均収入額より高いことを示している。原審は,この事実からひとり親世帯も同じ傾向であると推認したと解される。

(6)とはいえ,この結果をそのままひとり親世帯にあてはめ,寡婦寡夫)控除の適用可否を論ずるには明らかに不釣合な点が存在する。まず,所得500万円を超える母子世帯の母親に該当する収入700万円以上の女性の平均収入額は903万円,所得500万円以下の父子家庭の父親に該当する収入700万円未満の男性の平均収入額は402万円となっており,その差は501万円もある。しかし,この両者はこのような差異があるにもかかわらず,等しく寡婦寡夫)控除が適用され,26万円の控除が認められている。また,所得500万円以下の母子世帯の母親に該当する収入700万円未満の女性の平均収入額は310万円で,男性は402万円となっており,その差は92万円で,率にすると約30%の差異がある両者は,控除額に4万円の差があるものの,どちらも寡婦寡夫)控除が認められている。一方,所得500万円を越える母子世帯に該当する女性の平均収入額は903万円で,男性は942万円となっており,その差は39万円しかなく,率にすると約4%しかないにもかかわらず,前者は26万円の控除が適用され,後者は適用がない。これは,明らかに不釣合であり,この程度の差異では,本件区別の理由の根拠とするには弱いといえる。(下図参照)

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(7)次に,ひとり親世帯に限った場合の平均収入額を確認する。総務庁統計局は,5年ごとに実施する就業構造基本調査において,母子世帯と父子世帯についても収入階級別の調査をしている。それらの調査データは一般に公開されているので,直近の3回のデータを集計し検討する(甲25号)。この調査での母子世帯や父子世帯とは,ひとり親と18歳未満の子で構成されている世帯であり,大学生などの18歳以上の子やその他の構成員がいる世帯は含まれてはいないが,父子世帯と母子世帯の基本的な性質や傾向を分析するには適した資料である。

(8)平成19年分(甲15号,甲16号),平成24年分(甲17号,甲18号),平成29年分(甲19号,甲22号)の度数分布表から前述の公式を使用して平均収入額を算出したのが次の表(甲25号)で,そのうち平成29年分についてはグラフに示している。

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(9)収入700万円未満のひとり親世帯では,父子世帯の平均収入額のほうが母子世帯より高い傾向があるが,収入700万円以上ではその傾向は見られず,同等,若しくは母子世帯のほうが高い傾向となっている。これは,高所得の父子世帯の父親に比べて高所得の母子世帯の母親のほうが,社会的な理解を得られていたり,高い報酬を与える企業側によって就業上の受け入れ体制が整っていたりする等の理由によるものと考えられる。

(10)その理由はともあれ,所得が500万円を超えるひとり親世帯に限ってみた場合に,母子世帯の母親の平均収入額は父子世帯の父親よりも低いということはなく,同等,若しくは高いのが事実である。従って,父子世帯の父親と母子世帯の母親との間には平均収入額の点で相当程度の差異が存在するとした原審の事実認定は,明らかに誤認である。