著:鈴木 高広
日本で1年間に使われているエネルギーは約2000万テラジュールという膨大な量にのぼる。今や原発への依存を見直さざるをえない状況となり、化石燃料の輸入に莫大な巨費が投じられている。
必要なエネルギーはあまりに大きいため、残念ながら一部で期待されているような自然エネルギーでまかなえる量ではないし、そもそも、太陽光発電や風力発電は気象条件に依存するので安定供給が難しい。
木材は成長に時間がかかるし、木材や廃材を利用するとしても日本が必要とするエネルギーをまかなうには量が全く足りない。ミドリムシは健康食品にするのはいいが、バイオ燃料用に大量生産するのは経済性の点で難がある。では、他にエネルギー自給の道はないのか?しかも、できればCO2の排出量を抑えた形で。
イモならそれが可能だ、というのが本書の主張である。より適しているのはサツマイモ。それをメタン菌で発酵させてメタンガスを取り出す。
サツマイモは繁殖力が非常に強く、栽培が簡単。種芋不要で、土地が痩せていても問題なく育つし、連作障害が発生しづらく、水栽培すら可能。水分量はジャガイモより少なくて長期保存もできる。
メタンにするのだから質量さえあればよくて、小さいものも形が悪いものも全て利用できる。メタン発酵すれば家畜にとって毒性のある有機酸も分解するので、残るのは繊維質だけ。これは家畜のえさにそのまま使えるので無駄が無い。CO2は栽培からエネルギー化を経て自然界で循環するだけなので増えないし、大変クリーンなエネルギーでもある。
では、どこで栽培するのか?実は、全部で460万haの日本の農地のうち、耕作放棄地や遊休農地が40万haある。また、米の消費低迷で250万haを占める稲田のうちで実際に米を作っているのでは160万haに過ぎず、残りの90万haは転作したり調整田になっている。これらの土地を利用すれば、かなりの量を生産できる。
そもそも、栽培が簡単なサツマイモは、著者が解説しているような多層栽培もできる。多層栽培すれば400万haの農地で40億トン生産できるので、あくまでも計算上ではあるが、日本が必要とする全エネルギーをまかなうことも可能になるという。
経済性の面においては、化石燃料と競うには1kgあたり5円程度にしなければならないので問題になるが、実はメタン発電にすると1Kw/hあたり39円で買い取ってもらえる固定価格買い取り制度があるし、コージェネレーションシステムで給湯も利用するメタン発電を前提に考えれば1kgあたり15円〜20円で採算が取れる可能性がある。食用ではない加工用イモは1Kgあたり20円くらいだからだ。
後半では、著者の半生について簡単に紹介されている。かなり貧しい家に育ったという。MIT留学で研究者がビジネス感覚を持つことの重要性を学び、ロンドン王立医科大学院では多くの実験技術を身につける、といったことを経験したそうだ。
やりたいことを求めて転職を重ね、「いくつになっても、人生はやり直し出来る」「人生にもイモにも、無限の可能性がある」という熱いメッセージを綴っている。
単行本、190ページ、WAVE出版、2014/4/9
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