旅するニート-[小樽]汽車が通る道

The following two tabs change content below.

みのむしクリップ

主に電気関係で仕事をしてきたけれど、気が付いたとき、日本の電機の会社ってほとんどなくなっていた......... そんな需要のない今を 日々生きています。

[シナリオ風味]
・小樽、鉄道史料館の敷地、駐車場
ニートと彼女、二人、崖の方に歩いている。
ニート「さっきの蒸気機関車が、しずか号で昔は弁慶、
□義経と一緒にいたんだよ。義経号はたまに会いに
来るらしい。」
彼女「へーっ。なんか織り姫、彦星みたいだね。」
□先に歩いていた彼女、振り返ってニートの方を見る。
後ろ歩き。少しずつ距離が縮まる。
ニート「この場合、会いに来るのは、だいたい男の方
□なんだけど。」
彼女「まあ、常識でしょ。人の世界も鳥の世界も。
□だからニートも、もっと私にサービスしないと。」
ニート「サービスしてるつもりなんだけどなぁ。」
彼女「まあ、・・・私たちはこのぐらいが、いいかな。」
ニートが彼女を追い越し、崖の壁の方に指を差す。
ニート「あの崖がレンガになっているところが、
□かつて蒸気機関車が石炭を乗せて船に積み込む桟橋が
□あった所で、崖沿いに線路が通ってたらしいよ。」
ニート港の方の空の上を指さす。
ニート「あのぐらいの高さまで、登っていたらしいよ。」
彼女「へー、蒸気機関車って、重くないのかな。」
ニート「それが石炭をつんだトロッコみたいな貨物だけが、
□上がっていったんだって。途中で機関車から切り
□離されて。」
彼女、海の方を見ていたが振り返りニートに向き合う。
彼女「えーー、意味わかんない。どぉゆこと。」
ニート「こういう港町の港湾線って良くあるらしいけど、
□連結された状態で港まで来ると、貨物車両の後ろから
□いくつかに切り離して、目的の支線まで運ぶらしいよ。
□当然、それぞれに人がしがみついていて、
□フットブレーキで減速したり、ポイントっていう線路の
□切換をしたりしながら運ぶらしいよ。」
彼女「へー、そんな惰性で高いどころまで上がって
□行くんだ。良く止まれるねぇ。」
ニート「止まれなかったかも。なんて。とにかく
□スピードとカンでやるしかないよね。」
二人擁壁の方に歩いて行き、案内看板をみる。
ニート「こんな感じで橋が建っていたんだ。」
彼女「これ、登った後は、どうするの。」
ニート「真ん中に線路があるでしょ。」
ニートが案内板の写真を指さす。

ニート「一台ずつ真ん中の線路に移動すると、そこから
□一段、落ちるような急な坂になっていて、その勢いで、
□本線の方に戻っていくらしいよ。」
彼女「ちょっとした、ジェットコースターだね。それも
□やっぱり人が乗ってるの?」
ニート「もちろん。だから、事故もあったと思うよ。」
彼女「今じゃ考えられないね。」
ニート「石炭の切り出しとか、蒸気機関車の運転とか、
□昔は危険なことが多かったんだろうね。それが今じゃ
□何も残っていないけど。」
二人、しばらく看板を見立ていたが、ニートが隣の建物の
方に歩き始める。彼女もそれに続く。
彼女「その建物は?」
ニート「手宮洞窟。古代文字が見つかった場所。」
彼女「大森貝塚とか、あんな感じ?」
ニート「まあ、あんな感じだけど、暖かくはないかな。」
彼女「どゆこと。」
ニート「大森貝塚って、公園みたいじゃん。草が生えてて。
□北海道のこういうのは、岩が多いというか、石器時代と
□いうか、なんか厳しい生活が見えて、ちょっと寒い
□感じがする。感覚的にね。」
彼女「かんかく、てきに?」
彼女「感覚的に、か・・・」
彼女は立ち止まる。ニート少し進むが、気がついて振り返る。
彼女「感覚的に冷たいのは分かる気がする。あの崖も
□そうだし、機関車やあの史料館にあった建物も、そう。
□空気が静かで、そこに孤立して存在している感じがする。」
ニート彼女の方に近づく。
彼女「だから、寂しくなるし、毎日無事で帰ってくる事にも、
□感謝できると思うよ。」
ニートが彼女の近くに立つ。彼女はそのままニートの胸の
あたりを見ている。
彼女「会いに来るのは、いつも男の方って言ったけど。」
彼女、顔を上げる。
彼女「帰りを待つのは、いつも女の方なんだ。」

スポンサーリンク