以前、射出精子がいてもTESEをした方がいい場合がある? その1 その2 でご紹介いたしましたが、
高度乏精子症の場合、精巣内精子採取術(TESE)によって回収した精巣精子の方が精子のDNA損傷率が低く顕微授精の成績が良かったという報告がありました。
この報告では症例数が少なかったためエビデンスレベルが乏しい事が問題でしたが、最近メタ解析による報告が発表されましたので紹介したいと思います。
Testicular sperm is superior to ejaculated sperm for ICSI in cryptozoospermia: An update systematic review and metaanalysis
(超高度乏精子症において精巣精子は射出精子より顕微授精の結果が良い:システマティックレビューおよびメタ解析)
システマティックレビュー、メタ解析とは関連する信頼性の高い論文を集め、総合的に評価することでより高いエビデンスを得ようとするものです。
この論文は2018年に台湾のKang氏らがScientific Reports 誌に発表した研究です。
この研究では今まで発表された313の報告から解析可能な6の研究を抽出して解析しています。
結果として578人の男性不妊の方と761周期の顕微授精の結果を基に解析されています。
さっそく結果を見てみましょう。
上の図は顕微授精による受精率を射出精子と精巣精子で比較したものです。
全体でみると精巣精子の方がやや良いという結果ですがリスク比1.08倍で95%信頼区間は0.98-1.20ですから、有意な差とはいえません。
それでは、良好胚盤胞率、着床率、妊娠率はどうでしょう。
次回から順を追ってみていくことにします。
以前の記事もご参照ください
(文責:[医師部門] 江夏 徳寿 [理事長] 塩谷 雅英)
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