母子家庭に見る養育費受給の現状
母子世帯家庭の現状
母親一人(シングルマザー)で子どもを育てるのは、想像以上に以上に大変なことです。
一説には、子ども一人を成人まで育てるのにかかる費用は、1,000万円程度かかると言われています。
子どもが成長して、高校の進学クラスや大学、専門学校などの高等教育機関への進学を希望する場合はさらにお金が必要になります。
このような理由から、生活が困難になるケースも珍しくありません。
そのため、元夫による養育費の支給は、欠かすことの出来ない重要なものであると言えます。
このページでは、厚生労働省の内部部局の一つ「子ども家庭局」の調査資料を元に、母子家庭の現状と養育費の受給状況について検証していきます。
母子世帯の数
近年の母子世帯数の推移は以下の通りです。
平成5年(1993年) | 79.9万件 |
---|---|
平成10年(1998年) | 95.5万件 |
平成15年(2003年) | 122.5万件 |
平成18年(2006年) | 115.1万件 |
平成23年(2011年) | 123.8万件 |
平成28年(2016年) | 123.2万件 |
全国の母子世帯の数は、平成23年(2011年)がピークで平成28年(2016年)にはやや減少していることが分かります。
しかしながら、平成15年(2003年)以降、総じて高い水準であることに変わりはありません。
母子世帯の世帯人員
下表では、平成28年(2016年)の母子世帯の世帯人員をまとめています。
2人 | 31.9% |
---|---|
3人 | 33.0% |
4人 | 18.4% |
5人 | 9.3% |
6人 | 3.6% |
7人以上 | 2.7% |
分からない | 1.1% |
平成28年(2016年)の母子世帯における平均世帯人員は、3.29人でした。
母子世帯の世帯構成
平成28年(2016年)の母子世帯の世帯構成は下表の通りです。
母子のみ | 61.3% |
---|---|
同居あり | 38.7% |
調査の結果、母子家庭の約6割が「母子のみ」で生活していることが明らかになりました。
同居者の種別
「同居あり」と答えた人の内、同居者の種別は以下の通りです。
親と同居 | 27.7% |
---|---|
兄弟姉妹 | 9.7% |
祖父母 | 3.6% |
その他 | 12.3% |
※同居者の種別については複数回答が含まれています。算出された割合は、総数との比較です。
母子家庭の就業状況
下表では、母子家庭の就業状況の推移をまとめています。
就業している者の雇用形態
「就業している」と答えた人の雇用形態は下表の通りです。
平成23年(2011年) | 平成28年(2016年) | |
---|---|---|
正規の職員・従業員 | 39.4% | 44.2% |
パート・アルバイト等 | 47.4% | 43.8% |
派遣社員 | 4.7% | 4.6% |
家族従事者 | 1.6% | 0.5% |
自営業 | 2.6% | 3.4% |
会社などの役員 | 0.6% | 0.9% |
その他 | 3.7% | 2.5% |
平成23年(2011年)、平成28年(2016年)共に、「就業している」と答えた人の大半が、『正規の職員・従業員』もしくは『パート・アルバイト等』ということが判明しました。
この5年間で『正規の職員・従業員』の割合が増加し、『パート・アルバイト等』の割合が減少していることが分かります。
また、収入面においても改善が見られたようです。
年収の推移
平成23年(2011年)、平成28年(2016年)の年収の推移を『正規の職員・従業員』、『パート・アルバイト等』に分けて下表にまとめています。
ここで算出された数字はあくまでも平均値ですが、この5年間で雇用面や待遇面などが改善されたことが見て取れます。
母子世帯の母親の預貯金額の推移
母子世帯の母親の預貯金額の推移については下表の通りです。
平成23年(2011年) | 平成28年(2016年) | |
---|---|---|
50万円未満 | 47.7% | 39.7% |
50~100万円未満 | 6.9% | 6.6% |
100~200万円未満 | 9.4% | 10.6% |
200~300万円未満 | 4.6% | 4.9% |
300~400万円未満 | 3.1% | 4.5% |
400~500万円未満 | 1.1% | 1.7% |
500~700万円未満 | 2.5% | 3.8% |
700~1000万円未満 | 1.0% | 1.4% |
1000万円以上 | 4.0% | 4.2% |
分からない | 19.7% | 22.8% |
平成23年、平成28年共に、預貯金額「50万円未満」と答えた人の割合が最も多いという結果になりました。ただし、その割合は、5年間で8%程度低くなっています。
子どもを育てていくためには、多額の費用がかかるものです。
就労により収入を得ていたとしても、そのお金が預貯金に回らず、生活が厳しいという母子家庭も多いようです。
もし、あなたが離婚した相手から養育費を受けていない場合は、あなた自身や子どもの将来のために、養育費を請求してみることをおすすめします。
母子家庭の養育費の取り決め状況
協議離婚では、離婚後のトラブルを回避するために、夫婦間で様々な項目について取り決めを行うことが必要とされます。
下表では、平成23年・平成28年の母子家庭における養育費の取り決め状況についてまとめています。
養育費の取り決めに関する文書の有無
「養育費の取り決めをしている」と答えた人の中で、文書に残している人と残していない人の割合は下表の通りです。
※ 73.3%の内訳 : 判決、調停、審判などの裁判所における取り決め、強制執行認諾条項付きの公正証書58.3%、その他の文書15.0%
「養育費の取り決めをしている」と答えた人の内、約7割がその内容を文書に残しているようです。
養育費の取り決めをしていない理由
下表では、母子家庭において、養育費の取り決めをしていない主な理由についてまとめています。
自分の収入等で経済的に問題がない | 2.8% |
取り決めの交渉がわずらわしい | 5.4% |
相手に支払う意思がないと思った | 17.8% |
相手に支払う能力がないと思った | 20.8% |
相手に養育費を請求できることを知らなかった | 0.1% |
子どもを引き取った方が、養育費を負担するものと思っていた | 0.6% |
取り決めの交渉をしたが、まとまらなかった | 5.4% |
現在交渉中または今後交渉予定 | 0.9% |
相手から身体的・精神的暴力を受けた | 4.8% |
相手と関わりたくない | 31.4% |
その他 | 7.1% |
分からない | 2.9% |
最も多い理由は、31.4%で「相手と関わりたくない」でした。
やはり、離婚した相手と関わりを持つことに抵抗のある人が多いようです。
そして、20.8%の「相手に支払う能力がないと思った」、17.8%の「相手に支払う意思がないと思った」が続きました。
これらはいずれも相手側の都合によるものですが、養育費の支払い義務は、親の経済的事情に関係なく、自分と同じ生活を保障する(生活保持義務)責任があります。
つまり、親子が分かれて暮らすことになった場合でも、子どもへの養育費の支給は最低限の義務なのです。
この義務は、相手側にどのような理由があっても、必ず果たさなければならないものです。
youikuhi-soudan.hatenablog.com
そのため、子どもと暮らす親は、離婚した相手に対して養育費を請求する正当な権利があります。
相手の事情を斟酌する気持ちも分かりますが、まずは、子どものことを第一に考えて行動することが重要です。
youikuhi-soudan.hatenablog.com
母子世帯の養育費受給状況
平成23年、平成28年の母子世帯における養育費の受給状況は下表の通りです。
平成23年(2011年) | 平成28年(2016年) | |
---|---|---|
現在も受けている | 19.7% | 24.3% |
過去に受けたことがある | 15.8% | 15.5% |
受けたことがない | 60.7% | 56.0% |
分からない | 3.8% | 4.2% |
平成23年(2011年)の「現在も受けている」と答えた人の割合は約20%でしたが、平成28年(2016年)には約24%となり、やや上昇しています。
「受けたことがない」と答えた人の割合も約60%から56%となり、ほぼ同じ程度の割合で下がっていることが分かります。
データを見る限りでは、養育費の受給状況は、改善傾向にあると言えます。
しかし、未だに半数以上の母子家庭で養育費の未払いが起きていると解釈することが出来るため、決して見過ごせるものではありません。
また、継続して養育費を受け取っている母子家庭世帯は、全体の4分の1程度であるという事実にも注意を払う必要があると言えるでしょう。
母子世帯になってからの年数
母子世帯になってからの年数と養育費の受給状況(平成28年)をまとめたものが次の表です。
0~2年 | 2~4年 | 4年以降 | 分からない | 総数 | |
---|---|---|---|---|---|
現在も受けている | 40.3% | 37.3% | 18.9% | 12.6% | 24.3% |
過去に受けたことがある | 7.7% | 10.6% | 18.9% | 11.9% | 15.5% |
受けたことがない | 47.3% | 51.3% | 57.6% | 69.6% | 56.0% |
分からない | 4.7% | 0.8% | 4.6% | 5.9% | 4.2% |
上記のデータから分かることは、養育費を受給している家庭の割合が最も高い区分は離婚から2年以内で、離婚してから4年以降が最も受給割合が低くなっているということです。
単純に考えれば、離婚してから期間が経過すればするほど、養育費の支払いは滞る傾向にあると言えます。
つまり、当初に約束した内容通りに実行されないケースが多いということです。
ただし、期間が経過する過程で、養育費の支払い期間が終了している(支払い終期に達している)ことも考慮に入れる必要があります。
まとめ
近年は、離婚をして一人親・母子家庭で子どもを育てる方が増えており、養育費への関心は、年々、高まりを見せる傾向にあるようです。
そのため、それに比例して、養育費の受給状況も、ゆるやかに改善されているようです。
しかし、未だに半数以上の母子家庭で「養育費を受けたことがない」という結果が確認されています。
子どもを一人で育てていくことは、決して容易なことではありません。
日々の生活を送る過程で、離婚した当初の予定とは事情が違ってくることも珍しくありません。
そのため、離婚時に養育費の取り決めをしていない場合でも、養育費の請求は可能です。
養育費を負担するのは親の義務であり、養育費の請求は子どもの権利でもあります。
なにより、子どもの将来のために、経済的に困窮しない生活を送ることを第一に考えるようにして下さい。
出典:社会保障審議会児童部会 ひとり親家庭への支援施策の在り方に関する専門委員会 資料
- 母子世帯数は2003年以降高い水準にある。
- 養育費の取り決めをしている家庭は全体の約4割。
- 養育費の取り決めをしていない理由の第1位は「相手と関わりたくない」。
- 養育費の受給状況はやや改善されてはいるものの、依然として低い水準。