●ロイヤル・バレエ「ザ・チェリスト」
振付 キャシー・マーストン
ローレン・カスバートソン/マルセリーノ・サンベ/マシュー・ボール
16歳でチェロ奏者としてデビュー、21歳でダニエル・バレンボイムと結婚、多発性硬化症を発症して28歳で事実上引退した、ジャクリーヌ・デュ・プレを描いた、とても興味深い作品でした。
才能を開花させていくデュ・プレの、チェロを弾く喜び、音楽と一体化する幸福感、手の異常が始まってからの恐怖や苦悩などが繊細な振付で表現されている。ローレンは利発さを湛え、感情のうねりや心理的葛藤をとても丁寧に見せていた🎉 バレンボイムはデュ・プレの才能を自分のキャリアに利用したような感じで、演じたマシューは、そのクールな表情が役柄にぴったりでした😍 彼女が病を患ってからの距離感もよかったし。
しかしな〜、ダンサーのリアルな形態模写(擬人化という人もいるけど……)がどうしても居心地悪かった💦 サンベがチェロなのはいいですよ。人がモノを演じることでモノ=チェロのもつ精神性が体現化されるし、奏者とのつながりがよくわかるけど、写実的すぎないか?🙄 母親が幼いデュ・プレを指導するとき、サンベの上げた片腕をネックに見立てて母親がそこにある弦を抑えるような動きをするとか😓 ローレンがサンベの身体を抱えて弾く動きとかさ、ちょっと引いたな😑 終盤では、レコードプレイヤー、スタンドライト、テーブル、振り子時計などをダンサーが形態模写するしね🌀 スタンドライト役のダンサーの腕(だったかな=スイッチ)を引っ張るとダンサーが手のひらをパカパカさせて明かりが灯ったとか……😅 これ笑っていいところなのかなと思っちゃった😂
モノや概念を抽象化、象徴化して表現することを好まない傾向にあるイギリス人。この作品が良いレビューをもらってるのを見ると、イギリスでベジャール作品が一般的に受け入れられないのも分かる気がするな😞
●サンフランシスコ・バレエ「Snowblind」
振付 キャシー・マーストン
同じマーストンの小品で、イーディス・ウォートンの小説「イーサン・フロム」に触発された作品。寒村で展開する、不毛な結婚をした男と、その夫婦の前に現れた若い女性との、ドロドロの三角関係です😱 身体イメージや動きを重ねて「踊りで物語る」中に感情の流れを表現するマーストン。これは「ザ・チェリスト」ほど写実性が強くなく(人間チェロみたいなのが出てこない😁)、振付も好みでした。3人それぞれの苦悩と孤独がとてもストレートに伝わってきたし、雪(吹雪)を表す群舞がとてもよかった。
●ローマ歌劇場バレエ「くるみ割り人形」
振付 ジュリアーノ・ペパリーニ
一般的な「くるみ割り人形」を読み替えた作品。古典的ストーリーから離れ現代色を付けてあり、曲に対応するダンスシーンも変えてあって、すごく面白かった🎊
まず、舞台セットがアート作品のようにハイセンスで、さすがイタリア(といっても、なぜか舞台はパリなのね。エッフェル塔みたいな塔に「PARIS」とネオンサイン)。ツリーの造形も斬新です。衣装もハイファッション。クリスマスパーティーに招かれた大人たち、女性のドレスは洗練されて色がイタリアン・ビビッド、ヘアスタイルもおしゃれ。男性のディナージャケット姿は似合いすぎでしたね😎
口ひげを生やしたドロッセルマイヤーがいかにもイタリア〜ン👍 部下の4人も粋なファッションです。彼は催眠術を使うのかな。大人たちを面白おかしく操ったり、眠らせたりする。でもって、自分の孫?とマリーを引き合わせるマッチメイカーで、お膳立てした夢の中で2人はラブラブになります。ツリーが大きくなると(ここも素敵な演出)、その向こうにベッドがあってマリーに夢を見させます。
一方、パーティーに招待された悪ガキとマリーの兄は、つるんでいたずらばかり。この悪ガキはマリーの夢の中で、ネズミになって現れ王子(ドロッセルマイヤーの孫)を襲ったりするんです。えっと、王子役のダンサー、サポートがちょっと不安定でしたが💦
夢の宮殿で繰り広げられるディヴェルティスマンも、衣装と振付がユニークです。GPDDのコーダでドロッセルマイヤーが踊りに入ってくる。そうそう、このドロッセルマイヤー は結構踊るんですよね。ご機嫌なおじさまです😸 マリーの夢が覚めると、そこにドロッセルマイヤーとその孫がいて、マリーの夢の中で心を通わせ合った2人はいい雰囲気になるというエンディングでした。いや〜、楽しかった😊