順位戦B級組の谷川九段vs山崎八段戦で、山崎八段が右玉を採用してくれた。
棋譜は以下の通り。
2018-09-20 順位戦谷川浩司 九段 vs. 山崎隆之 八段 第77期順位戦B級1組6回
山崎八段といえば、元祖西の王子。関西の強豪で、飄々とした解説でも人気だ。
一方の谷川九段は言わずとしれた棋界の大スター。山崎八段同様、関西所属でもある。
山崎八段、一直線右玉!
序盤、角交換のあと山崎八段は右玉へ。
プロの右玉と言えば、ギリギリまで態度を決めないことが多いので、少し珍しい。
少し進んだ局面。8一飛と引いて右玉の完成。アマチュア同士の対局でもよく見かける局面だ。
ソフトの評価はほぼ互角。
山崎八段、手待ちして先手の出方を伺う
36手目から後手は金を4ニと5ニの間で移動して手待ちをする。
右玉の陣形としては、この形で完成と見ているのだろう。
先手、6筋に攻めを集中。右玉は早逃げ
先手は6筋に戦力を集中して攻め態勢に入る。
対して、右玉は早逃げ。戦場となる6筋から遠ざかりたいところ。
仕掛けは右玉から
右玉は徹底して耐久と思いきや9筋から先に仕掛ける。
同歩、7五歩として、9五香と走って歩を補充して、7六歩。
香車を犠牲に桂頭への歩が入った。
局面はまだ互角のようだ。
右玉から飛車切りの強襲!
さらに少し進んだ局面。
右玉から飛車先の歩を交換したところに、8七銀と立って受けたところ。
ここで思い切った手が出る。
8七飛成!
後手陣はお世辞にも飛車打ちに強い陣形じゃないだけに気合の手。
ソフト的にも第一候補。さすがの踏み込みだ。
同金は当然だが、次の手も鬼手。
9六角打!
これが飛車成からの継続手。この手が見えてないと、飛車切りはできなかっただろう。
この角を取ってしまうと、7七歩成で右玉勝勢。
というわけで、先手は8ニ飛打と王手をかけつつ8筋を受けた。
先手、馬を取らない勝負手も……
この局面は、龍で馬が取れる。
当然取るものと思ったが、次の手は違った。
なんと、取れる馬を取らずに飛車を逃げつつ攻めに活を入れる2九飛!
恐らく、同龍とした場合、7七歩成、同龍、8五桂という展開が嫌だったのだろう。
以上が変化図。これなら評価はまだまだ互角に近い。先手はこちらを選ぶしかなかったかもしれない。
気がついたら戦型が入れ替わっている?
81手目の局面。
まるで先手が右玉、後手が矢倉のような形になっている(笑)
忘れてはいけないが、後手が右玉である。
先手は2四香打。
桂馬でよくある手筋だが、香車でも代用が可能。
かなり厳しい一手に見えるが、7一歩打として右玉が耐えている。
ここからは山崎八段の流れるような攻めが決まって、以下の局面で先手投了。
2六歩打からの詰めろ。投了もやむなしか。
以上、山崎隆之八段の右玉。
右玉らしい早逃げが生きた一局で、参考になる手筋も多い。
なお、山崎八段と言えば、一手損角換わりの本も出しているので参考にしてほしい。