職場の人間関係がうまくいかない 【1】


感情の取り扱い事例
職場の人間関係がうまくいかない。。。

受講生は職場の人間関係でつまづくことを繰り返していた

受講生はライセンスを持ったスペシャリスト。10年弱勤めた最初の会社を退職すると、その後は人間関係でうまくいかず何度も転職を繰り返していた。明るく優秀で、誰にでも好かれるキャラクターなのに職場での人間関係のどこにつまづいているのかが私にはよくわからなかった。

短い間に何度となく繰り返された、人間関係がうまくいかないことによる退職で、受講生は恐れと疲れを感じ、しばらく働くことを休んだ後、まずはパートとして専門職で勤務しはじめた。

その職場はとても良い職場だったので「勤務時間を少し長くしたい」と会社に申し出ると、その職場ではなく別の支店に行ってくれるよう言われた。というのも、受講生が持っているライセンスを持った人がいない支店だったのだ。不安はあったものの受講生は承諾した。が、その不安は的中した。

新しい勤務先で、勤務初日に命じられた仕事はスペシャリストとしての仕事ではなく、誰でもできる雑用に近い仕事や書類整理を割り振られたのだ。このことに受講生は何とも言えない感情を抱いていた。その後も立て続けに、まるで小間使いのように専門性など全く不要な仕事を依頼された上、専門の仕事においても「今までやってきたんでしょ?」といった口ぶりで上司から指示を受けたことに、怒りを覚え、3日目には情けないが泣いて家に帰ったと言う。「職場」に対する恐れが長年、払拭されないことに対して、受講生は更に恐れを感じていた

「仕事は職場の人たちと相談して仕事の割り振りするのだろうと思ってたのに個人的にたくさんの仕事を振られているように感じてキャパオーバーした。雑に扱われているように感じる。職場ではみんなで協力してやっていけたらいいなとは思っているが、ひっきりなしに仕事をふってこられている感じがして、、、。私は「困る」と言ってるのにさらに困らせられているように感じる。何度も転職を繰り返してるので、今回は自分ができる範囲でやっていこうとは思っているが、今まで辞めてきた職場の再現のようで嫌だった。もうこの職場は続けられない…。」

受講生は、職場の人間関係がうまくいかずに転職を繰り返すのは、職場の人によって自分が困ることが続々引き起こされ、自分がそれを断れずに受けてしまっていたからだと感じていたようだった。

受講生の情報からは『雑な指示を受けたり、理不尽な取り扱いを受ける→怒る→悲しくなる→会社を辞める』といったパターンが見て取れる。まさにここ数年、転職を繰り返したパターンの再現だった。

繰りかえす現実には緩めるべきB(認知)がある

そこで、受講生と一緒に投影図を使ってひとつひとつ見ていくことにした。まず繰り返す現実は『職場で軽く扱われる、小間使いされる』この現実を引き起こすB(認知)があるとすれば?(Bは「〜であるべきだ」「〜でなければならない」で表現される)という私の質問に受講生は「私は大切にされるべきだ」と答えた。

私は更に以下の質問をしてみた。「「私は大切にされるべきだ」と考えなければならない人は、自分は大切にされることが自然な人?それとも、自分は大切にされないかも?と恐れている人?
すると、「大切にされないと思っている」と答えた。受講生は「私は大切に扱われないかも…」といった恐れを持っている。つまり、受講生の根元に近いセルフのB(自己認知)は「自分は大切にされる価値がない」だった。

セルフのB(自己認知)は現実に投影される。
歪んだ認知は現実を歪ませ、歪んだ現実は歪んだ認知を強化する。「私は周りの人から大切に扱われる価値がない」と思っているので、それを現実に写し出す。そして、「ほら!大切にされないじゃないか。」と感じて、「やっぱり、私は大切にされる価値はないんだ…」と歪んだ自己認知を強化している。

新しい職場に行く時は本来、「職場の人と馴染めるかな?」とか「仕事のやり方はどんな感じかな?」といったことに関心があるのが自然だろう。しかし、受講生の関心は「この職場の人たちは、自分を大切に扱う人かどうか?」に常に強く向けられていた

受講生は、職場の人間関係を使って「自分は大切にされる価値があるか?の確認」をしていたことに気づけた。自分の価値は他者の反応で測るものではない。しかも、そもそも職場はそう言う目的の場所ではない。

歪んだセルフのB(自己認知)に気づいただけで、現実は随分と変わるものだ。しかし、受講生は、それがわかってもどうしていいかわからない…と言う。

そこで、次のステップに進むことにした。
続きは次回。