04:行灯カブレストア記
前回の記事
akiyuki2119067018.hatenablog.com
信じられないことに前回の投稿から1年以上が経過してしまった…
前回の記事を書いた昨年の7月以降、夏は暑いから、冬は寒いからとなかなか作業が進まず、4月以降は大学の研究室が離島の配属になりますます整備から遠のき…といった感じで気が付けば1年後の冬になっていた。
ちなみにCD125Tは一度は走行可能状態になったものの、充電電圧が高すぎる問題が一向に解決できず、ある日出先でレギュレーターが飛んで不動になってしまった。
その後もあれこれ条件を変えて電圧を正常に戻そうとしてみたが、なかなか上手くいかず、なんか疲れて廃車にして今は倉庫にしまってある。未来の自分に期待したい。
キャブレターをいいものに交換して、燃調を調整してどうにかあと頑張れば行けるはず…
という感じで、2022年もカブが完成しないまま終わってしまうことが今の時点で確定しているが、それでも前に進まなければいけない。
これを書いている今は車体は7割程度組み立て終わって、エンジンのボアアップもやって配線も12Vレギュレーター化して(半波整流のまま)、あとはキャブレターを付けてタイヤ周りをちょちょっとやれば完成!という状況である。
とはいえ前回の記事はパーツの塗装をしたところで終わっているので、その続きから書いていく…
まずはボディフレームにフロントフォークを取り付けたい。
その前にフロントサスペンションを新品に交換する。
こういう普通の車種では絶対に出ないであろうパーツが売っているのがスーパーカブの魅力である。しかも安い。
サスペンションアームは付いてこないのでそのまま続投。
中のカラーを出して清掃して再びグリスアップする。
スプリングやボルトだが、状態や取り付けた感じが良いものを選んで純正と混ぜて使った。
フォークスプリングは純正の方が作りもしっかりしており、まだヘタってもなさそうだったので純正を使用した。(多分…)
今回、レストアをするにあたってスーパーカブのパーツリストを探したのだが、この年式のものは希少価値が高くどれも1万円以上するような状態だったので安く手に入る比較的最近(90年代半ばくらい)のものを買って代用している。
ありがたいことに大体のパーツは1970年式と1995年式とで互換性がある。
ステムベアリングもその一つ。
ボールASSY. ステアリング 部品番号:53210-GS9-003
ちなみに上下で2つ使います。
グリスを塗る。下のレースはそのまま。
ここはあんまり強く締めすぎないらしい。
少しバイクっぽくなった。
センタースタンドも塗装する。
かなり綺麗になった。
諸々を取り付けてステアリングステムナットを締める。トルクは88N・m。
カブっぽい。
配線を通す。
続いて、リアウインカー
配線はリアフェンダーの裏を通ってそのままタンクに抜けていく、
結構通すのが難しい。
ここに出てくるので、非常にすっきりとした見た目になる。
続いて、キーを取り付ける。
行灯カブのキーは左のサイドカバーのところにある。
隣にあるのはキーを照らすライトで、ホーンボタンを押すと光るらしい。
とりあえず、今回はここまで。
次回はエンジンのボアアップをやっていく予定。
~つづく~
03:行灯カブレストア記 ~塗装編~
前回の記事
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前回で、車体の解体と各部の掃除を行った。
今回はフレーム及び各部品の錆を落とし、塗装をしていく。
手始めに燃料タンク。
まずはこの塗装を剥がす。
↓塗装はがし液
価格:1,672円 |
最近の塗装剥離剤は従来の成分を代用した”地球にやさしい”ものが多く売られているが、もれなく塗装にも優しいのか、イマイチ効果が薄い。
結果的にかなり時間がかかるので従来のタイプの剥離剤を使用したほうが良い。
Holts ホルツ ペイントリムーバー 塗装はがし剤 250ml MH261 価格:674円 |
そこそこ剥がれた。
剥離剤で落ち切らない塗装や表面の錆はディスクグラインダーで削り落としていく。
このくらいが限界だった。
下地はいつものさび止めスプレー。もう3年の付き合いになる。
垂れないように、細かな段差が埋まるように塗っていく。
同時進行でフレームの塗装も剥がしていく。
3日くらいかかった。
こちらも下地を塗る。
錆の跡が微妙な凹凸になるので、出ている部分を紙やすりで削り、平らにしてはまた下地を塗る、という作業を繰り返す。
そしていよいよ色を塗る。
今回選んだ塗料はアサヒペンの高耐久ラッカースプレーの青。
安くて塗装が強く、塗りやすいのでこれにした。色のバリエーションがやや単調なのでどの色にするか迷ったが、あまり暗い色にすると車体の形状が目立たなくなってしまうので明るい青を選んだ。
カメラによって微妙に色が違って見えるが、思った以上にドラえもんの色だった...
他のパーツも同様に、塗装と錆を落として塗装していく。
下地。
塗装。
タンクとフレームを合わせるとこんな感じ。
最後に、塗装の仕上げとしてクリアを吹く。
正直無くてもいいのだが、このままではガソリンが少しかかったくらいでドロドロ溶けてしまうので、その対策としてウレタンクリアを吹く。
これでどのくらい効果があるのかは不明。
今の技量と予算ではこのくらいが限界である。高いと思ってウレタンクリアを1本しか買わなかったのでツヤツヤしている部分とくすんでいる部分とあり、若干ムラが出来たが気にしないことにする…
これで大体、組み立てる準備ができたので、そろそろパーツを買い集め、車体を組み立てていきたいと思う。
~つづく~
02:行灯カブレストア記 ~解体編~
↓前回の記事。
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前回、購入時の点検としてとりあえずエンジンを掛けてみたスーパーカブc50。半世紀以上前の個体であるが状態は比較的良く、少しの修理で公道に戻れそうだと分かった。
今回から本格的にレストア作業を進めていく。
レストアの方針としてはとりあえず車体を全て解体し、各部品の状態の確認をする。ゴムなどの劣化しやすい消耗品や経年劣化で使えなくなっている部品は新品に交換したい。また、車体表面の錆は全て削り落として防錆処理をする。塗装については純正の色を残すべきかかなり迷ったが、汚いとゴミと思われて盗まれたりしたら嫌なのでこの際綺麗に塗り直すことにした。
ということで各部の解体を行っていく。
まずはハンドル。配線やブレーキケーブル、メーターケーブル、アクセルワイヤーを外してハンドル下の二つのナットを外すとハンドルが外れる。
最近のカブと異なる点はこのアクセルワイヤーの機構。ワイヤーがハンドルの中を通っている。グリップの中にらせん状の溝が切ってあり、グリップを回すことでその溝をそって金具が動き、ワイヤーを引っ張るという仕組みである。
正直この機構は好きじゃない。錆や汚れで金具の動きが渋くなりやすい上に、パーツがおそらくもう出ないからである。
ハンドルが外れた図。
さらに分解を進めていく。
ここで最初の難関が...外れないことで有名(?)なステムナット。
これが本当になかなか外れない。「ステムナットレンチ」という特殊工具があれば比較的簡単に外せるらしい。
↓ステムナットレンチ
今回はフックレンチでなんとか頑張った。
元から強く締まっている上に50年の時間と錆によって普通にやったのではビクともしない。こういう時はガスバーナーで炙るに限る。
↓これがあると固着したネジを外すときに非常に便利。小型で火力も丁度よく、扱いやすい。
冷めないうちにマイナスドライバーをナットの溝に当て、クソデカハンマーで叩く。
フックレンチを引っかけて叩くのもよい。
外れた。
どんどん分解していく。
なんか結構複雑に色々ついている。
最後にこのナットを外せばフロントフォークが取り外せるようになる。
この年式のカブはフロントフォークのベアリングが玉なので何も考えないでいるとボロボロと玉が転がって行ってしまい非常に面倒である。ちなみに私はそれをやってしまい、今1球足りない...
続いてタンク。古いカブの特徴的であるフレームと別体式のタンクは4本のボルトで留まっている。
取れた。
行灯の愛称で知られるポジションランプ。なんと未だに社外製の補修パーツが売っている。普通のカブに取り付けて行灯カブ風にするというカスタムが存在し、どうやらそのために需要があるらしい。
これは...抵抗器?
おそらくだが、この年式はセレン整流器で交流→直流に変換し、バッテリーで電圧を制御している(レギュレーターがない)ため灯火類を切った状態で走行すると過充電状態になってしまう。それを防ぐために灯火類を切っているときはこの抵抗が電気を消費しているのではないだろうか。
チェーンカバー。
リアサスペンション。旧カブは現行車よりかなり長さが短い(スイングアーム側が高いため)ので購入するときは注意が必要。
フロントスプロケットとチェーン。チェーンは420サイズ、スプロケは純正で13丁。
リアスプロケット周り。スプロケの形状も少し今のと違うような気がする。全体的に細いというか...
エンジンも降ろす。
クランクケースカバーがネジで固定されているのでいつもなら舐めてしまうところだが、その対策のためにショックドライバーを買った。
どんなネジでも大体外れる。買ってよかった。
全体的に油にまみれた砂埃がすごい。
ウインカーリレー
途中経過。
スイングアームも外す。裏が結構錆びていた...
ブレーキペダル、センタースタンドも外す。カラーの割ピンを外して
反対側から棒を突っ込んで叩くと外せる。
電装系も外していく。イグニッションコイルはタンクの下に配置されている。
ポイント点火用なので部品の調達に苦労しそう...まだ元気そうなのでいいが。
キーランプとメインキー。ランプはカバーが風化してボロボロになっている。
社外の補修パーツは今のところ無さそう。削ってきれいにならないものか。
リアウインカー。裏に何かの巣か卵の廃墟があった。
一か所、錆があまりに酷く、ネジがねじ切れたところがあったので溶接されているナットごとノミで叩いて落とした。
テールランプ、リアウインカーの配線はリアフェンダーの裏に出ている(80年代以降のカブは上を這っている)。
カチカチに風化したゴムで留まっているので外しにくい。
メインハーネス。
コードを束ねているビニールがガチガチになっていて少し曲げるとパキパキ割れた。充電系統がダメになっているのはこの配線のどこかが断線しているか、もしくは端子が絶縁しているのか。
最後にフロント。
ブレーキ周りは今と同じなのだろうか...
フロントフェンダー。幸いにも割れや大きな傷はない。
フロントサスペンションも分解して状態を確認したい。
旧タイプのカブは少し構造が異なり、その後の年式のカブのサスペンションは使えない。
まずここのナットを外して、
↓補修用の社外サス、若干長いらしいが使えるとのこと。
このボルトを緩めると
サスペンションが外れる。
バネは案外まだ大丈夫な感じである。左右で長さは同じ、おそらく幾らかは縮んでいるだろうが、許容範囲なのかは分からない。
ショックアブゾーバーは多分圧が抜けている。縮めたら戻ってこないのは仕様か、それとも劣化しているのか、比較対象がないので分からない。
これでほとんど全てのパーツが分解できた。最後に泥だらけのフレームを洗車。
フレーム表面の状態は塗装もある程度綺麗に残っているし、錆もそこまで広がっていない。
次回はこの錆と塗装を削って落として再塗装していく。
~つづく~
タウンメイト、二度目のエンジンブロー。
前回の記事。
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昨年7月頃に、シフト操作のミスでエンジンが壊れたタウンメイト。変形した排気バルブとピストンリング、ステムシールなどを交換した。
修理後はまた以前のように元気に走っていたのだが...
先日、また「壊れた」と連絡があった。どうもまた前回と同様、4速からニュートラルを経由してそのまま1速に入れてしまったらしい。
軽トラの荷台に乗って運ばれてきた車体の状態を見ると、キックを下ろしても圧縮が全くなくエンジンが始動しない。
とりあえず、どこが壊れたのか分解して原因究明。
キャブとマフラーを外してヘッドを取る。
ヘッド。もうこの時点でどこが壊れたか分かる。
どうやらまた排気側に当たったらしい。バルブが曲がって隙間が空いている。
ということで排気バルブを交換する。
ロッカーアームのカラーは手で引っ張っても簡単には抜けないが、ホームセンターのステーとボルト、ナット(M8)でこのような工具(?)を作ると苦労なく外すことができる。
ロッカーアームが外れた。ここにはダメージなし。
続いて「バルブスプリングコンプレッサー」を用いて排気バルブを外す。
これが問題の排気バルブ。前回よりも多めに曲がっている。
こちらは問題ない模様。
燃焼室側。なんと…欠けている…曲がったバルブが無理やり引っ込んだせいでヒビが入ってそのまま一部が割れたらしい。
その他、ピストンにもバルブがヒットした跡がくっきりついていた。
通常ならピストンとエンジンヘッドをダメージのないものへ交換する必要があるが、今回はこれ以上修理にお金を掛けられないので、変形した排気バルブのみの交換で対応する。
バルブは部品番号「22K-12121-01」でまだ新品が出るようである。
雑にすり合わせをして元のように組付けた。パーツクリーナーが漏れ出てこなければokといういい加減な基準。次はバルブコンパウンドと光明丹を買おうと思う。
ヘッドの一部が破損していたが、バルブが引っかかるなどということは手で動かした範囲では無いようであった。
バルブとロッカーアームを組んだらヘッドを元に戻す。
フライホイールのTマークとカムの印が合うように。
完了。
キャブレターやマフラーを取り付けキックしてみると一発で始動した。あちこち破損していて心配だったが、特に問題はなさそうである。
故障前とパフォーマンスは変わらず、60km/h巡行も難なくこなし最高速もそれなりに出る。下道を走るなら十分な性能だろう。
もうダメかと思われたが2000円の部品代のみでまたもや直ってしまった。
今度は前回とは異なりバルブ以外の部品に幾らかダメージがあったので、これからしばらく走る上で何か異常が出ないか少し心配ではある。
~おしまい~
08:CD125Tレストア記。 ~エンジンを掛ける~
前回の記事。
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前回まででエンジンのピストンリング交換、フレームの再塗装をしエンジンを載せるところまでやった。
ここで一度エンジンの始動テストをして問題が無いようだったら他の部品を付けていく。
エンジンを始動するためには燃料噴射と点火が正しくできればよいのでとりあえずはこの2つを整えていく。
まずはキャブレター。これは純正。
キャブクリーナーで内部を洗浄し、レストア前にエンジンを掛けた際はアイドリングは正常に出来ていた。しかし、ダイヤフラムが硬化しているのかピストンの固着か、スロットルを開けても一向に回転数が上がらない。
ダイヤフラムはまだ新品部品が買えるようであったが(部品番号:16140-402-004)、当時1500円だったものが40年の間に値上がりして今や6000円近くした。
ダイヤフラムが思った以上に高く、これの交換で直るとも限らない。そして今後このキャブレターの部品が出る保証もないので代替品を探すことにした。
PD22という型番の後継の「PTG22」というのを購入。
お値段なんと5500円。安すぎる、少し不安…
取付けピッチは純正キャブと同じなので特に苦労なくそのまま取り付けできる。
スロージェット、メインジェットは純正より僅かに番手が小さい。今回は純正と入れ替えた。
ちなみにエアクリーナー側は純正キャブより径が細いため、純正エアクリーナーを使用する場合はゴムか何かで径を調整する必要がある。
説明書を読むと「エアスクリューアジャスターがありません」と書いてあった。どうやってアイドリング時の調整をすればよいのか分からない。それっぽいネジがあったのでドライバーで回していたら脆くてネジがつぶれてしまい 訳の分からない位置から回せなくなってしまったのだが、全く問題がないのでやはりエアスクリューは無いのかもしれない。
キャブが変わったことで純正スロットルワイヤーが使えなくなったので新しいものを用意した。
↓ハンドルを交換する予定なのでそれに合わせて若干短いものにした。
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続いて、点火系。
メインハーネスにレギュレーター、イグニッションコイル、メインキーなどエンジンをかけるのに必要な部品をつけていく。ウインカーやそのリレー、スイッチはつけなくても大丈夫。
案の定グジャグジャ...
点火に必要な部品を組み付けてキックしてみたが、プラグに火が飛んでいない。
これは困った…
火が飛ばない原因としては
①ポイント部の調整不良
②レギュレーターの故障
③イグニッションコイルの故障
などが挙げられる。今までのバイクと違いポイント点火の調整という面倒な要素が加わっている。点火ができない原因が調整不良であるのか部品の故障か、そもそも点火ができないとそこが見極められないという状況であり、どこから手を付けてよいか分からない…
①ポイント部の調整不良
この車体はは現在主流のCDI方式より古い、ポイント点火という方式を採用している。
CDI方式では磁石とそれを読み取るセンサーで点火タイミングを把握しているが、ポイント点火ではコンタクトブレーカーと呼ばれる部品の接点が物理的に閉じたり開いたりして点火を行う。故にこのコンタクトブレーカーの接点がいつ開くか、そしてどのくらい開くかがきちんと調整されていなければ、正しく点火が行えない。
コンタクトブレーカーとコンデンサ、新品を購入した。
このコンデンサはコンタクトブレーカーの接点が焼けないよう調節をしてくれているらしい。ここが弱ると接点にバチバチ火花が飛ぶようになる。純正部品を注文したところなんと1700円もした…
耐圧など条件を満たせば市販の電子工作用のコンデンサも普通に使えるらしい。容量は0.3μFくらい。
ポイントギャップの調整。
まずクランクを反時計周りに回してポイント接点が最大に開く所で止める。そしてポイント接点の開き(ギャップ)が0.3mm~0.4mmになるように調整する。俗に名刺1枚分と言われている。
次はタイミングの調整。
調整用の窓を覗くと「スパークアドバンサー」と呼ばれる部品にTとかFとか文字が彫ってあるのが見える。このTがエンジン本体の印と合わさった時はピストンが「上死点」にあることを示し、そこから少し離れたFは点火のタイミングを示す。この、Fマークがエンジン本体の印と合わさった瞬間に、コンタクトブレーカーの接点が開くよう調整を行う。
これが、目視で行うのは非常に難しい。
※通常は「タイミングライト」という専用工具で調整を行う。点火の瞬間にフラッシュのように点滅するライトを調整窓にかざすと、Fマークの位置が浮かび上がるという仕組み。
調整前、めちゃくちゃタイミングがズレている。
調整後。アイドリングが安定したのと、若干燃調が変わった。
※ちなみにエンジンがかからないとできないので、後日エンジンが始動してからタイミングライトによる調整を行いました。
この時、点火タイミングの調整が出来なければエンジンがかからないが、エンジンが掛からなければタイミングの調整も出来ないという「詰み」状態に…とりあえず目視で何度もタイミングを調整しながらその後の作業を行うことにした。(目視で調整してもエンジンはなんとかかかります。)
②レギュレーターの故障
タイミングの微調整はエンジンが始動してから本格的にやるとして、ひとまずレギュレーターが故障しているかもしれないという可能性を考える。
「回路をつないだ状態でキックしてもNランプが光らない」「ヘッドライト以外の灯火類が一切つかない」というような症状からレギュレーターの故障を疑った。
純正部品は高い上に6Vでは何かと不便であるので、12V化も同時に行う。
CDに使われているレギュレーターは「全波整流レギュレーター」というタイプ。全波整流レギュレーターはさらにジェネレーターの発電方式によって「単相」と「3相」という2種類に分かれ、この車体(CD125Tz)は「単相全波整流レギュレーター」が純正で使用されている。レギュレーターから伸びているコードの内、赤はバッテリーのプラス、緑はアースで、2本の黄色線はジェネレーターへと繋がっている。この黄色線が2本なら「単相」、3本なら「3相」である。ちなみにスーパーカブなどに使われている半波整流レギュレーターはこの黄色線が1本。
まず買ったのは三相全波整流タイプのこれ。スクーター用の汎用品。
黄色線をつなぐところは3つあるがそのうちどれか2つを使用する。
交換したところ、Nランプがキックで点灯するようになった。やはりレギュレーター故障していたようである。
しかし、結論から言うと、これは失敗。
このレギュレーターでは電圧が全く下がらないのである。電圧計で測るとなんと50Vも出ている…聞いた話では三相レギュレーターには黄色線が3本ないと適切に動作しないものがあるらしい…
しばらく使っていたら焼けたサンマみたいな匂いがしてきた。どうやら中でなんかショートしたらしい。しばらくすると壊れてまったく反応が無くなってしまった。
気を取り直して次はこの単相全波整流タイプを購入。
購入当時は300円台だった…
赤がバッテリーのプラス、緑がアース、ピンクと黄色がジェネレーターである。
精度や耐久性は不明だがとりあえず使えた。電圧が若干高いかなとは思うが…
③イグニッションコイルの故障?
ポイント調整とレギュレーターの交換までやってなおも火が飛ばないのでいよいよイグニッションコイルの故障を疑った。
ポイント点火、二気筒用のイグニッションコイルを買ってきて取り付ければいいのだが一つ問題がある。それは「コイルの一次抵抗値」である。イグニッションコイル内には一次コイルと二次コイルというのがあり、これらの相互誘導作用によって12Vから数百Vという高電圧を作り出している。詳しいことはよく分からないがこの1次抵抗値が3Ω程度なければならないらしい。この一次抵抗値が低すぎると、電流が流れすぎてコンタクトブレーカーの接点にバチバチと火花が飛び、点火の効率が下がるばかりか接点が焼けて部品の寿命が短くなる。
ポイント点火用の二気筒用イグニッションコイル、一時抵抗値が3Ω付近という条件であれこれ探した結果、条件に近いものが見つかった。
これがレビューによると一時抵抗値が3Ω付近あるらしい。
めちゃくちゃ雑にセット。
プラグをつけてキックしてみると光った。
ようやく点火が上手くいった。レギュレーターの故障に加えてイグニッションコイルにも何らかの不調があったらしい。
ガソリンを入れるとエンジンも無事始動した。
ヘッドを組んだのはこれが初めてであったが、異音もなく調子がよさそうである。
(後日談)
純正イグニッションコイル、生きていた。
Amazonで買ってきたよくわからないイグニッションコイルもしばらくは使えていたが、ある時回路を組み間違え、またもや焼けたサンマのような香ばしい匂いとともに壊れてしまった…そこでゴミ箱から純正イグニッションコイルを引っ張りだしてきて今度は接点不良を疑い、コードを切って新しくキャップを付けなおしてみた。
プラグを入れてキックすると火花が飛んだ。どうやらコード、キャップ間の接点不良だったらしい。ポイントとレギュレーターなど条件をコロコロ変えていたため、何が原因か把握しきれていなかったようだ。
ちなみに純正レギュレーターは6V仕様であるため、12Vの電装系で使うにはコイルの一次抵抗値が足りない。ポイント接点からバチバチと火花が飛んでいる。
そこで、外部抵抗として適当な抵抗器をコード間に取り付け、一次抵抗値が3Ω近くになるように調整してみた。どうも効果があるらしく接点のスパークが多少収まった。
↓こういうやつ。
以上がエンジンがかかるまでの作業工程。
ポイント点火は分からないことが多く、試行錯誤の連続で結局フレームにエンジンを載せてから始動まで5ヵ月くらいかかった。
今回の車体で特に面倒くさかったのはバッテリーがなければエンジンが始動できないという点であった。本来ならこのCD125Tはバッテリーがなくてもエンジンがかかるようになっているはずなのだが、この車体はどこが悪いのかバッテリーの補助がないと正常に点火ができない。しかし、レギュレーター次第ではバッテリー無しでも点火できたり、かと思えばそのレギュレーターだと電圧が異常に高かったりと、何かと苦労が多かった。また故障診断の目安としていた灯火類が6V、新しくつけたレギュレーターが12Vであったため、よくバルブが飛んだ。12Vのを買えよ、とそういう話なのだが車体年式が古いためか電球もあまり見ない規格でなかなか手に入らなかったのである。
年式が古いせいで情報もあまりなく、また今ではあまり見ない点火方式で分からないことも多くあり、仕組みを理解するのにも結構な時間が掛かった。いくつか買ったばかりの部品を壊したが、そのおかげでどういう汎用品で純正パーツの代用ができるのかある程度分かったので、まぁ良かったと思う。
思えば1979年というのは当然インターネットなんてなかったのだから当時の人が何か書き残していることもないのである。インターネットに無いものはこの世にないと思い込みがちであったことに少し反省した。
~つづく~
YB-1のスプロケット交換。
前回の記事。
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前回、クラッチを修理した友人のYB-1、今回はフロントスプロケットの交換とチェーンの交換を行う。
フロントスプロケットは純正の11丁から2つ上げて13丁にした。登坂性能は落ちるが、その代わり巡航時のエンジン回転数を下げることができる。一般的にフロントスプロケットを上げると加速は鈍くなるが、元々がかなりのローギアに設定されているビジネスバイクにおいては 、加速が悪くなると感じることはあまりなく、むしろ乗りやすくなることが多いように思う。
チェーンはサイズ420、リンク数は純正状態で96である。スプロケットの交換によって長さが足りなくなることがあるので、今回は長めのリンク数100のものを買った。
もし余るようならチェーンカッターで切ればよい。
では取り付け。
チェーンを外すため、チェーンカバーと左のリアサスペンションを外す。
外す前の純正スプロケット。クリップで留まっているので専用工具で外す。
純正スプロケットの11丁と交換する13丁の比較。だいぶ大きさが違う。
交換するスプロケットが謎に硬くてなかなか軸に入らない。大きめのソケットを当ててゴムハンマーで叩いて、なんとか入った。
続いてチェーン。
新しいチェーンを通した後、クリップで留めて張りの調整をする。
面倒なのが、車軸のボルトを締める前と後で張り具合が変わってしまうこと。そのズレを予想して若干緩めに設定しておくと、締めた後ちょうど良くなる。
スプロケカバー、チェーンカバー、リアサスペンションを戻して完了。
乗ってみた感想だが、1速、2速が使いやすくなり、引っ張れるようになったので加速が悪くなったようには感じなかった。平地での最高速は若干上がり60km/h+αくらい、登坂性能は試していないので分からないが、山道を登るようなことがなければそこまで問題にならないだろうと思う。
~完~
YB-1のクラッチ修理。
以前友人が購入し、整備をした2ストエンジンのYB-1。
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ある日、ybで出かけている友人から電話があった。どうもクラッチが突然切れなくなってしまったらしい。詳細を聞くと走行中、シフトチェンジの際にクラッチを握ったところ「バン!」と音がしてクラッチレバーがスカスカになったとのこと。
思えば、納車時からクラッチのキレが悪かった。グニャ~とした握り心地でどこで繋がるのか分からない感じであった。
クラッチワイヤーがどう調整しても余ってしまう状態らしく、このときはワイヤーがほつれて伸びたのではないかと予想。ワイヤーが結構高いので買う気になれずしばらく目いっぱいまで調整してごまかしながら乗っていたが、ようやく修理することになった。
とりあえずクラッチワイヤーが繋がっている方のクランクケースを開けてみる。
これがクラッチを切る機構。
写真中央のレバーがクラッチワイヤーに引っ張られ時計周りに回ることで前方に出てくるようになっている。これがエンジン側のクラッチにつながっているロッドを押すことでクラッチが切れるという仕組みになっているようだ。写真を見てもらうと分かるが、レバーを引っ張っているバネが不自然に伸びているのが分かる。
当初心配していたクラッチワイヤーには何の以上も見られなかった。
故障していたのは「プッシュスクリュー」という部品でこの図でいうと19番。クラッチワイヤーがレバーを引っ張る力をクラッチを押す力に変換する重要な部品である。使用頻度が多くかつそこそこの力が加わるパーツであるにも関わらずプラスチックで出来ている...
案の定経年劣化が進み、クラッチの力に耐えられず変形しヒビが入って割れていた。走行中に「バン!」と音がしたのはこのパーツが限界を迎えて弾けた音であったようだ。
ヤマハのパーツリストを見ているとこの部品だけ対策品が販売されている。ここの故障はYBの持病であるようだ。
スクリューのみ単体でも買えるがレバーへの圧入の手間を考えると組付け状態で売っている対策品を買うのもアリ。今回はこのASSYを買った。
早速新しい部品と交換する。
適当にグリスを塗って
元のように戻すだけ。
伸びたバネは今回手に入らなかったのでそのまま、伸びていても使えるのでよしとする。一応まだ在庫はあるらしい。
ということで、クラッチの修理が完了した。納車時からのキレのないクラッチフィーリングも改善し、カチッとした握り心地になった。
~完~
01:行灯カブレストア記
最近、古いスーパーカブを買った。
以前、山中でタウンメイトのエンジンがブローした時、メイトを回収しに行くついでに道中の廃品回収業者から3.5万円で購入した。
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最近はネットの普及で簡単に相場が分かるので、こういう業者も結構高い金額を提示してくるようになった。かえって田舎のバイク屋で不動車を見つけて買ったほうが状態も良いし価格も安い。それでも同じものをヤフオクで買うよりは安い。
今回買ったのは一般的に「行灯カブ」と呼ばれる60年代後半~70年代の車体で、あだ名の通りポジションランプが行灯のように光るらしい。もう今の時代行灯なんて使ったことはおろか実物を見たことすらないので、私が見ても「行灯みたいだなぁ」とはおそらく思わないだろう。愛称自体に時代を感じる。
エンジンがOHVからOHCに変わった頃のかなり昔のモデルだが、結構よく走るらしい。
右から。この年代のカブの特徴はやはり別体式のガソリンタンクとモナカマフラー。
前から
ハンドル周り
ぱっと見た印象は最近のものとあまり変わりがないが、ハンドル径が若干細い。
マフラー周り。
マフラーはどうやらもうダメそう。完全に腐って中が詰まってしまっている。取り外して振ると腐って土みたいになった鉄がぎっしり詰まっているような感じがした。
リアブレーキ周辺も構造は今と同じだが、細かい作りが異なる。
左サイドカバー、味のあるかわいらしい作り。カバーがプラスねじで留まっているのが少し嫌(舐めるので)。
とりあえず、エンジンを掛けてみる。
レッグシールドを外して、キャブレターを掃除する。
レッグシールドを外すと、最近のカブにはない、見たことのない部品がたくさんある。
この黒い胃みたいなのはインテークチャンバーで、見た目の通り「胃袋」と呼ばれているらしい。
キャブレターもダウンドラフトタイプとかいう上から吸気して混合気がそのまま下に抜けていく珍しいタイプ。「縦キャブ」と呼ばれる。
何が悪かったのか、スーパーカブでもかなり初期の頃にしか採用されていない。
なんだこれ...構造が全く違う...
これはフロート、つまようじみたいなのはフロートバルブ。
ガソリンの流入によってフロートが浮き上がり、フロートについてるこの芯が流入口を塞ぐという仕組み。
チョークバタフライ
残りの構造はよく分からない。
キャブクリーナーで掃除して再度取り付ける。
ガソリンタンクの中。若干の錆はあるが50年前の個体であることを考えると状態はかなり良い方だろうと思う。
オイル交換も忘れずに。
キックを下すとプラグに火花が飛んだ。点火系は生きているようである。
6Vポイント点火、なんとなくCDIの火花より淡い色の柔らかい火花に見える。
プラグの型番はC5HSA。
プラグの汚れをふき取って再度装着し、何回かキックするとあっさりとエンジンが始動した。流石スーパーカブ。
当たり前だが、よく聞くスーパーカブの音がする。
一点気になったのが、ヘッドライト以外の灯火類が一切点灯しないこと。
電球を新品に交換しても一切点灯しなかった。
後日、色々外して充電電圧を測ってみると、どうやら故障しているらしい...
購入して以来、どうやって直そうかあれこれ考えている。どの程度まで部品を新しくしようか、車体は再塗装するかそのままにするか、電装は12Vにしようとか、ボアアップして70ccで乗ろうとか...
この直す前の時間が一番楽しいのですぐにやってしまわないでゆっくり時間をかけて直していこうと思う。
~つづく~
駆逐艦「蕨」「葦」海中調査記 ~「蕨」の映像撮影に挑む~
前回の記事。
akiyuki2119067018.hatenablog.com
前回の記事では今年5月にアサヒコンサルタント株式会社様のご協力のもと行った駆逐艦「蕨」の調査について、得られたデータの解説とそれを元にした考察などを書いた。そして、前回の終わりにも少し書いていたが先月、9月中旬に駆逐艦「蕨」の追加調査を行った。内容はまず、水中ドローンを用いて5月の調査で確認された「軍艦」と呼ばれる謎の沈没船が本当に「蕨」なのか直接撮影して確認し、その後船体の3Dモデル作成のための写真撮影を行った。
今回の調査は鳥取県を拠点として国内外広く研究活動をされている水中考古学者の山舩晃太郎さん、ドローンを用いた遺跡の3Dスキャン等をしておられる東京の民間会社「ワールドスキャンプロジェクト」、九州大学浅海底フロンティア研究センター等多くの方のご協力によって実現されたものであり、今までで一番大きなプロジェクトになった。
今回もボランティアで、つまりは無償で協力していただけることになり、そればかりかワールドスキャンプロジェクト様には調査に使う船の燃料代まで出資していただいた。本当にありがとうございました。
前回からの展開が急で、過去記事から読んでも訳が分からないのではないかと思う。そこで簡単にここまでの経緯を説明する。
そもそものきっかけは今年の2月末、東京で開かれた「水中戦争遺跡の保護と課題」という講演を聞きに行ったことである。
内容はミクロネシアでの日本の水中戦争遺跡の現状や保護に向けた現地での取り組みなど....この講演を行っていたのが山舩さんであった。
5月に予定していたアサヒコンサルタント様との調査とその後についてのヒントを得ようと参加したのである。この頃は「調査をやる」ということ以外は全く何も決まっていない状況で、取り合ってもらえるか非常に不安であったが、美保関沖事件のことを説明すると関心を持っていただいた。また山舩さんのご実家と私の家が同じ市内にあるという偶然もあって講演以降も連絡を何度か取り合っていたのである。
そして5月、マルチビームによる調査で沈没船らしき物体を発見し、それが7月に地元の新聞で報道されることになった。そこで、得られたデータについて専門家としてのコメントをもらうため再度ご相談させていただき、その際に追加の調査として今回の調査計画が浮上したのである。
↓山舩さんのホームページ
↓今回の調査について。
↓調査の結果と「水中慰霊碑」設置の重要性などについて。
ワールドスキャンプロジェクト
youtubeチャンネル。
九州大学浅海底フロンティアセンター
↓前回の調査でお世話になったアサヒコンサルタント
↓テレビ朝日の「報道ステーション」で今回の調査が放送されました。
初の水中撮影 駆逐艦『蕨』93年ぶりに発見(2020年9月21日)
調査0日目。
この日は調査チームの皆さん、それから報道陣を連れて美保関事件の慰霊塔や所縁の地を半日かけて巡った。
この日は非常に有意義であった。
5月末からの一連の調査は、複数の民間企業や考古学者、大学機関等のご協力によって行われたものであるが、それ同時に昭和2年以来、90年以上慰霊顕彰と歴史継承に努めてきた境港、そして美保関の人々の長年の活動の上に実現し得たものでもある。今回の調査を実施するにあたって調査チームの皆さんにこれまでの地元の活動を少しでも知ってもらう、また地元の人には今までの活動が今回の調査に繋がっていることを感じてもらえれば、今回の一連の調査はきっと双方にとっても、より意義深いものになるだろう。
そして雨による延期を1日挟みいよいよ調査1日目。
この日は水中ドローンを用いて「軍艦」の撮影を行うのが主な内容である。
報道陣も多かったため、船を2隻用意し、それぞれに分かれて現地へ向かった。
私が載った「オスプレイ-Ⅴ」がメイン(1号船)の調査船で、ドローンによる撮影はこちらが行う、もう一隻(2号船)は次の日以降に使用する装置の運用試験と、オスプレイの補助が主な任務であった。
↓ちなみに2号船はこの時の船をまたお借りした。
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午前9時に出港し、前回のように2時間後、「軍艦」の真上に到着した。
船の魚探で「軍艦」の影を探し真下にあるのを確認すると、早速ドローンを投入する。
ちなみに今回使用したドローンだが、水深100mまで行ける性能を有している。聞くところによると数年前に比べて随分と価格が安くなったそうだ。以前は300万円ほどしていた物が、今では50万円以下で買える、驚くことにAmazonで「水中ドローン」と検索すると同じものが売っていた。
多くのテレビカメラが見守る中、海面に浮かぶドローンがボコボコと激しく水しぶきを上げ、潜行を始めた。いよいよ「軍艦」の正体が明らかになるのかと思われたが、これがなかなか難しいのであった。
まず船がうねりと潮に流される、そして風で向きを変える、当然ドローンも潮の流れによって流れていく・・・これらの影響で船のすぐ横に置いたはずのドローンがみるみる遠ざかっていくのである。当然船が流れるのであるから「軍艦」の上に留まるのも難しい、アンカーを下ろしても海底が砂であるためしっかりと掛からず、ずるずると引っ張っているようでまるで意味がなかった。極めつけは海底付近の視界の悪さ、「軍艦」にかなり接近しない限りは四方八方真っ青で何も見えず、海底を見ても永遠に砂地が続くばかりである。さらに船上では液晶ディスプレイに日光が照り付け画面が見えにくくなるのも捜索を難しくした。
さらに機材トラブルにも見舞われ、その対応のため調査が2時間以上中断。
トラブルが一応の解決を見せた頃には時計は午後2時を回っていた。
ここで一旦休憩を取り、仕切り直し。
午前中の反省を生かして、船の操作やドローンの降ろし方を工夫する。
風と潮の流れの向きを読み、そこから船がどう流されるか予想する。そして、その向きを計算に入れながら船を動かし「軍艦」に接近したらアンカーを下ろしてエンジンを止め後は船がどう動くかは天に任せた。
これを「軍艦」の真上で船が停止するまで何度か続けた。
またドローンが流されるのを防ぐため、ケーブルに重りを追加した。
4、5回目の移動で「軍艦」の直上に留まることに成功した。なかなか掛からなかったアンカーも向きによっては効くようで、風と潮とアンカーの絶妙なバランスで船が止まった。
魚探に「軍艦」の影が映っているのを確認するとすぐさまドローンの準備をする。
先ほどのトラブルで本来使用するはずだったドローンが使用できなくなってしまったため、念のため持ってきていた予備機が投入されることとなった。
船と「軍艦」の位置関係を確認してGoサインが出ると、海面に浮かべたドローンが再び深い海へと潜っていった。今度はケーブルに重りがついているため、それに引っ張られるようにして急速に潜行していく。電池を消費せず潜っていくので都合がよいとのことであった。
「20m、30m、40m...」と水深が読み上げられ、ドローンは再び「軍艦」の沈む水深96mへと近づいていく。気分はさながら惑星探査機を見守るNASAの管制室であった。
5分ほど潜行を続け、もう少しで海底に到達するいうその時「何か見えた!」と声がした。ついに来たか、と思うのと同時に妙な緊張感が込み上げてくる。
私は一目散にモニターへ駆けて行き、映像を見せてもらった。
暗幕をめくってモニターを見ると、巨大な沈没船が映っていた。
魚礁になっているというのは本当だったようでおびただしい数の魚の大群に囲まれている。船体は全体的にかなり劣化が進んでおりボロボロになっているようだ。
— 美保関沖事件慰霊の会 (@mihonoseki1927) 2020年9月21日
この沈没船は駆逐艦「蕨」なのか。
私はとにかくその確証が得たくて映像と手元の写真を何度も交互に見たが、甲板上の構造物は既に崩れてしまっており判断の手がかりがなかなか見つからない。
美保関から北東33km、水深96mの海底に沈む駆逐艦蕨。
— 美保関沖事件慰霊の会 (@mihonoseki1927) 2020年9月21日
[提供:WORLD SCAN PROJECT/九州大学浅海底フロンティア研究センター] pic.twitter.com/97MOhWLiH7
しばらくすると先の尖った船体の端が見えた。「軍艦」の東側の端で当初、船尾部分と予想していた部分である。
映像をじっと見つめる。仮説の通りここが艦尾なら先端は丸みを帯びており下の部分にはスクリューや舵が見えるはずである。
ドローンが近づくにつれてぼんやりしていた部分が次第にはっきりと見えてきた。
どうも艦尾にしては不自然な形状をしている...
先端部は傾斜が掛かっており、丸みは帯びておらず鋭い形状をしていた。海底付近まで行って見せてもらったが、先端部の傾斜はそのまま下まで続いていてスクリューも舵もついていなかった。
「これは艦首だ...」
頭の中で何かがひっくり返ったような驚きがあった。
それは誰がどうみても船の艦首の形状をしていた。
しかもよく見ると「スプーンバウ」とよばれるタイプの、駆逐艦「蕨」のそれと非常にそっくりな艦首である。
このスプーン型の艦首形状は、これが駆逐艦「蕨」である結論付けるのに十分であるように思われた。
夢中で画面を見つめていたので、しばらくするとかなり酔ってきた。暗幕から顔を出すと2台のテレビカメラが私のリアクションを撮るべくすぐ目の前まで迫ってきている。少し恥ずかしく思うのと同時にふと我に帰った。
「何が見えましたか」とマイクを向けられ、「大きな沈没船が見えました。もしこれが蕨だとすると....」などと答えた。
この時は発見に喜ぶというより、次のステップに進めることにホッとする気持ちが強かった。
海底に横たわる「蕨」の船体とそれを取り囲む魚の大群......今まで見たことがない光景だった。ここは100名以上が亡くなった悲惨な事故の現場であるのに、沈没船と魚のコントラストは神秘的というほかないほどに美しく、感動すら覚えた...
その後も数回撮影を続け、午後4時を回ったころ港へ向かって引き返した。
到着したのは午後6時過ぎ。
その後、行きつけの喫茶店で調査の報告会を開き、慰霊の会の会長さんらに報告を行った。
沈没船が駆逐艦「蕨」と断定されたこと、そしてその姿が撮影できたことを非常に喜んでいただいた。会長さんは40年以上美保関事件の慰霊祭や歴史継承のための活動に関わり、その中で蕨艦長の息子の五十嵐邁さんを始め、遺族の方にも多くお会いしている。
そういう方に喜んでいただけたことは、今回の一連の調査の意義や成果を証明する何よりのものだと思う。
また、蕨の調査を計画した時、専門家と交渉すると相談したとき、「それはいい考えだ」と言って背中を押してくれたのも会長さんであった。
同時にこの時、映像の解析も行った。
船上では太陽光と船酔いでよく見えていなかったが、艦首の他にも強い力が加わり切断されたと思われる船体の断面など沈没船を駆逐艦「蕨」と判断する証拠がいくつか見つかった。
5月のマルチビームでの調査によって得られた、沈没船の全長、全幅、全高のデータと船体形状、海上保安庁と県水産課からの回答、そして今回撮影した映像....これらを総合すると、今回撮影された沈没船は駆逐艦「蕨」で間違いないだろう。
この日は私にとっても、また慰霊の会においても、忘れられない一日となった。
次の日以降も現地へ行き、2日かけて3Dモデル作成のための作業を行った。
こちらの様子については今回は割愛させていただく。
以上が、9月に行った水中ドローンによる調査である。
全6回にわたる駆逐艦「蕨」「葦」の調査は、これで一応一段落した。
「蕨」「葦」の調査の話が初めて話題に上がったのは昨年7月のことであったが、その時はまさかここまでのことが出来るとは想像もしていなかった。これもアサヒコンサルタントを始め、山舩さんやワールドスキャンプロジェクト、九州大学など多くの方の賛同とご協力によるものである。
次の活動として、これが最も大切なのだが、今回確認された「蕨」の船体の傍に「水中慰霊碑」を設置する予定である。これは事故で殉職された119名の慰霊に加えて、沈没からまもなく100年を迎える駆逐艦蕨を海の墓標、水中の戦争遺跡として周知し適切に保護していくために必要なことである。
詳しくは↓の山舩さんのHPで解説されているので是非ご参照いただきたい。
碑についてはある程度計画がまとまってきており、来年夏頃の完成、そして来年8月から開催を予定している美保関沖事件の展示会で展示した後、再来年6~8月頃に現地へ設置する見通しである。
今回の「蕨」発見によって美保関沖事件が再び話題となった。そしてこれは山陰が舞台となった重要な歴史的事実が新たに周知されるそのきっかけとなったのではないかと思う。
また、慰霊の会を通してこの蕨の調査と今後行う水中慰霊碑設置を水中の戦争遺跡を保護する一つの取り組みの実例として、これから広く発信していきたい。
~つづく~
07:CD125Tレストア記。 ~フレームとか諸々~
前回の記事。
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前回は塗装したエンジンの組み立てを行った。作業自体は1年以上前に行ったのでこのエンジンがどうなったのかはもう分かっているが、今のところきちんと動いている。
今回は前回とは時系列が前後するが、フレームの再塗装など細々した作業をまとめて書いていく。単純な作業ばかりであるため内容は薄いと思う。
まずはフレーム。将来的に車体の色を変えるかもしれないと考えていたのでいい加減に塗ることにした。
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まずは錆を削り落として表面の塗装を剥がす。
フレームに錆転換材を塗る。正直この作業は不要だった。
転換材が乾いたら下地を塗る。
安いので毎回これを使っている。しかし安いのであまりおすすめしない。
下地が乾いたら色を塗っていく。今回は純正と同じく黒。
何度か重ね塗りしてムラがないようにする。
...フレームの大部分は隠れて見えないのでセーフ...
同様にしてその他のパーツも塗っていく。
まずはフロントフォークカバー、早速ネジが外れない。
裏からバーナーで炙って、
熱いうちに貫通ドライバーで回す。
外れた。
ネジ穴が死んでいたのでタップで修正する。
同様に下処理の後、下地を塗って塗装する。
これも。
フロントサスペンションも塗った。
スイングアームも
黒に塗装。
続いてトップブリッジ周辺。
古いグリスを拭き取って
塗りなおす。ここを外す際、ベアリングの球が転がってどこかへ行ってしまわないように注意。私は6球ほどこぼし、探すのにかなり時間がかかった。
上も同様にする。
そしてトップブリッジを取り付ける。ナットを締める際についでにフロントフォークも取り付けた。
その他の部品も錆と汚れを落とし、塗装した。
リアスプロケット
リアブレーキ
ヘッドライト
ブレーキアーム
リアサスペンション
これはマフラーの固定の金具。かなりさびている。
ワイヤーブラシで削って
耐熱スプレーで塗った。
フロントブレーキ
メーターケーブルの固定ネジが舐めた...どうやらネジ溝まで完全に固着しきっているらしく何をしてもビクともしない。
裏側の清掃もする。古いグリスをふき取って新しく塗りなおした。
仕上げに塗装。
この時点での完成度はこのくらい。
ある程度主要な部分は綺麗になった。次回以降はまずエンジンが掛けることを目指して作業を進めていく。
~つづく~