9月5日よりラファエル前派の軌跡展が
大阪、あべのハルカス美術館で開始しました。
早速、初日に見に行って来ました。
初日のお昼過ぎに入館しましたが、
混んでなくゆっくり見れました。
ラファエル前派（Pre-Raphaelite Brotherhood）とは
19世紀イギリスにて当時、Royal Academyを頂点に、
ラファエルを美術の理想としていた
それまでのイギリス美術界に反旗を翻した
急進的な芸術家グループです。
John Everett Millais, William Holman Hunt,
Dante Gabriel Rossettiの
三人を中心に７名のメンバーがおりました。
彼らは自分の作品に「P.R.B」と署名し、
機関誌「The Germ」に絵や詩などの
作品を掲載し、発行します。
彼らの存在がヴィクトリア朝美術界にて賛美両論、
特にその斬新性に対し、批判がおこるのですが
RuskinがPre-Raphaelite Brotherhoodを擁護した事で
権威からのお墨付きを得ます。
Pre-Raphaelitismの特徴は、
１ Ruskinの言葉の通り、
見たものを忠実に描写する写実性。
これは特に植物や風景の描写に如実に表れてます。
２ 1の描き方により遠近感を失っている点や
遠近法の軽視です。
３ 中世趣味（Medivalism）。
ラファエル以前の芸術への回帰を提唱すると同時に、
彼らは作品のモチーフを
中世（アーサー物語やシェイクスピア）から
用いています。
また作品の服や色彩に中世趣味を見ることができます。
４ 詩や文学（要はtext）と絵の融合。
彼らは詩や文学のシーンを描いたり
また絵に詩をつけたりと
textと絵画のコラボレーションが多いです。
5 Symbolismの多用。
このことから象徴主義の先駆けとしても
評価されています。
この展示会ではPre-RaphaelitismにおけるRuskinの影響に
焦点を当てております。
ラスキンの美術観に影響を与えたターナーの絵を
Pre-Raphaelitismの祖をして展示しております。
次にPre-Raphaelitismの思想的な根底を作った
ラスキンの風景画を展示しています。
前期Pre-Raphaelite Brotherhoodの作品が続き、
そして後期Pre-Raphaelite Brotherhoodの作品で
終わります。
以下は作品リストです。
作品リストの裏には
ラファエル前派の人物相関関係図が記載されています。
今回の展示会の不満点はこの図です。
ラファエル前派の他の特徴として
女性アーティストが存在が多い点があります。
Royal Academyが女性の入学をまだ認めておらず、
女性は正式な絵画の教育を受けられない時代において
ラファエル前派のメンバーの妻や姉妹たちは
彼らの影響もあり作品を産み出しています。
20世紀後半の美術史ではアートフェミニズムの流れから
このPre-Raphaelite Sisterhoodの作品の
発掘、再評価が進められてきました。
しかし、上記の表ではその女性アーティストの代表格の
リジー（エリザベス・シダル）は単に妻であり、
モデルとしてしか記載されておりません。
これはアーティストとしてのシダルの矮小化です。
せっかくラファエル前派に興味を持って来てくれた方に
美術館としてより正確な情報を
提供して貰えればと願います。
展示会の一部のスペースでは
作品の写真が撮れるコーナーもありました。
ロセッティの作品はジェーン・モリスをモデルにした作品が
ほとんどでした。
しかし、シダルをモデルにした作品もありました。
一番観れて嬉しかったのはハントの
「The Lady of Shalott」です。
私はフェミニズム批評の観点から
The Lady of Shalottのストーリーと
それを描いた絵に関心があります。
コースワークエッセイではこのハントの作品を含め
The Lady of Shalottの作品解釈を行いました。
思い入れの強い作品の一つになりましたので
観れて良かったです。
全体的な配置の流れも良く、観て回りやすかったです。
後の印象派や耽美主義の下地を作ったとして
活動期間は短かったものの、美術界に多大な影響を与えた
ラファエル前派（Pre-Raphaelites）。
沢山の方にぜひぜひ見に行って頂ければと思います。
ラファエル前派の作品の展覧会、美術館のその他の記事
