海外のトップ大学に合格した、

日本の普通の女子高生の話

 

著:山本つぼみ

 

2020年4月7日 初版第1刷発行

IBCパブリッシング株式会社

東大阪図書館より貸出

 

大阪府箕面高校出身の著者が、

どのようにアメリカの大学を目指して合格し、

アメリカでの留学生活について書いた本です。

著者は明るく、努力家で、普通の公立高校から

アメリカのトップ大学に行けた体験を語ることで

チャレンジする大切さのメッセージを送っています。

AMAZONのレビューを見ても大評判です。

 

でも個人的には著者のことが好きになれませんでした。

答えのでない事柄に自分なりの答えを

見つけて言語化することや批判的思考の大切さなど

同意する意見もあるのですが、

この本から感じられる著者の性格や考え方は

私としては人間として嫌いなタイプです。

 

まず著者は中学生の時に、親によって塾に入れられます。

それが嫌でかなり反抗します。

わざと遅刻する、宿題をしない、

個別指導で先生を無視する、などです(p.18)。

序盤のこのエピソードで、あ、無理と思いました。

私が塾で働いているからでしょうが、

この態度にドン引きです。

自分が塾に行きたくないというのは家庭内の問題であって、

そこに塾を巻き込むなと思います。

宿題をしない生徒さんも遅刻する生徒さんも、

現実にはいます。

それでもわざと相手を無視するというのは

いくら子どもでも無礼ですし、

そんな生徒さんはほぼいません。

でもそれをこんな風にどうどうと語り、自らが行った行為に

反省も後悔も見られない著者の態度にがっかりです。

もっと言えば、彼女は自分のご両親が

自由にさせてくれてよい親だったといっていますが、

私としては人様を無視しておいてなんとも思わない

ろくでもない人間を育てたろくな親じゃないとさえ思います。

私の親も放任主義ですが、挨拶などの礼儀を払わなくてよい、

などと教えられたことはありません。

こんな著者がもてはやされるなんで

私はどうかと感じています。

この件だけで私は到底著者を好きにはなれません。

 

その後、著者は箕面高校で

よい校長先生と英語の先生にサポートされ

アメリカの大学を目指します。

ただ私には著者が何故アメリカで勉強したいのか、

アメリカで何を勉強したいのか、

一切伝わってきませんでした。

 

卒業後、第一希望の大学から合格通知を受け取った著者は

恩師に伝えるために、高校に行きました(p.85)。

ただ高校は体育祭の日。

体育祭というイベントで忙しい中、遠慮なく

先生に時間を取ってもらうことに対し申し訳なさが

感じられない姿勢にも好感を抱けませんでした。

後日でもいいのでは?そもそも卒業生なのに

現役生より優先されて当然のような振る舞いについて

疑問に思いました。

 

また著者はアメリカやオーストラリアの大学に

合格を貰っていながら、大学生活に慣れたいという

理由だけで三か月間国立大学に通います(p.83)。

合格したのだから著者の権利かもしれませんが、

中退、それもたったの三か月、する前提で

大学に行くことにも私は批判的です。

著者が合格した分、1人が落ちているのです。

著者と違ってその大学を志望している人間が。

その人間に対する配慮のなさも嫌いです。

 

著者はリベラルアーツの名門校、

ウェズリアン大学に進学します。

著者はリベラルアーツを

「未来社会のリーダーを育成すること」

と定義づけています(p.113)。

リーダーとして教養や幅広い学問の見識を

身に着ける必要があると。

私見では、大学は学問の場であるべきで、

そうあって欲しいと思います。

だから私には一般教養で様々なことに触れられる

日本やアメリカの大学よりも

専門性が高いイギリスなどの大学が好ましいです。

これは個人の価値観なので

多様な学問に触れる機会があるということの良さも

勿論分かります。

 

本書の最後で著者は自分が行ったTOEFLやSATの対策や

奨学金リスト、アメリカ以外の海外大学の特徴を

紹介しています。

驚くべきことにイギリスについては名前も出てきません。

イギリスはアメリカと並ぶ名門大学が

多く存在するにも関わらずです。

「ヨーロッパの大学は歴史が長く、

学費も安いので、学費を抑えたい場合には

選択肢に入れてもいいかもしれません」(p.177)

とありますが一般的にイギリスは学費が高いです。

またヨーロッパの大学の魅力はドイツのように

学費が安いだけでなく、

アメリカ以上に人種や国籍の多様性があるところです。

 

私が著者にあまり共感できませんでしたが、

進学までのプロセスや

留学中の授業や生活について書かれており

アメリカの大学を目指す人や、お子さんが海外進学を

考えている親御さんには参考になると思います。