若いみなさんは、物心ついたときからパソコンがあり、新任教師は、ほとんどワードやエクセルを使いこなします。
 30ん年前、教員になった私の頃はやっとパソコンが市場に出回ったばかりで、何十万もする高価なものでした。新任の給料では当然買えず、(買えたとしても使いこなせるはずもなく)、指導案から、教材のプリント、成績処理などなど、すべてが手作業でした。ですから、通信表の時期になるともう大変です。若い方たちには想像できないでしょうが、「5段階評価」をつけるために、中間試験と期末試験の合計を算出し、それに小テストの結果を加味して生徒全員の「成績」を出します。ここまでは、電卓で・・・。ここからが大変!一人一人の成績をハサミで短冊状に切り取り、成績の良い順から並べていくのです(※セロテープで止めておかないと、誰かが通っただけで努力が水の泡)。これは、学年の生徒が200人いたら、200人分上から下まで並べるのです。さらに、宿題などの提出物の出来不出来で調整し、200人の順位を確定します。これで、一教科の「成績一覧表(順位表)」が出来上がります。コピー機もない時代なので、確定した時点で厳重にテープで貼り、これをもとに「5段階評定」をつけていきます。この作業だけで、気が遠くなるような思いをしました。
 それが、今はどうでしょう?点数の打ち込みは各試験が終わった時点で入れておけばOK!あとは、合計点数順の表作成はエクセル君がボタン一つでやってくれます!おおっ!なんて、素晴らしい!
 指導案も、教材プリントもワープロソフトで、簡単に修正ができます。いちいち手書きで書いたのを、消して書き直す必要などありません!なんて、ハッピーな時代!
 これなら、教師の仕事はあっという間!作業時間は30ん年前の何十分の一のはず!・・・なのに・・・なってないじゃん!!昔はすべて手作業でやってきたことが、すべてコンピューター上でできるようになり、数日かけていた成績処理は、ロータス君からエクセル君へ受け継がれながら、ボタン一つでできるようになっているのは間違いないはずなのに・・・なぜ?
 コンピューターが職員室に当たり前のように置かれるようになったとき、誰かが言いました。「これからは、ペーパーレスの時代だよ」・・・って、なってないじゃん。それどころか通信簿の時期になると、添削されて、シュレッダーにかけられる紙の山々・・・。私の周りだけがおかしいのでしょうか?
 昔は、中体連が近づくと、先生方が各部を回って、教師と生徒のチームで対抗試合をやって励ますなど、おおらかで、楽しい時代でした。今はそんなゆとりはありません・・・。
 コンピューターが私たち教師にもたらしたのは、福音ではなかったのでしょうか?