アジサイ眼科


アジサイ眼科

Ajisai Ophthalmology Clinic

弱い眼鏡に意味があるか

今日も手術患者さんは全員経過良好です。


近視で、弱い度数の眼鏡を掛けたい子供、掛けさせたい親がたまにいます。
それに意味があるのか、というお題です。
結論から言うと、無意味です。

眼は、角膜と水晶体がレンズの役割をしていて、
水晶体が薄くなったり、厚くなったりして、ピント調節をしています。
ただ、無調節状態から調節出来るのは、近視の方向だけと思って下さい。

無調節状態で、ピントが網膜に合った状態を正視と言います。
遠くが見える状態です。


子供なら、その状態から手元まで調節出来るので、近くも遠くも全部見えますが、
それが出来なくなってくるのを老眼と言って、40歳くらいから気付き始めます。


眼鏡は、近視や、遠視でピントが合ってない状態から、
正視と同じ状態にすることが目的です。

無調節状態で、ピントが網膜より奥に合った状態を遠視と言います。
ピントに対して、目の長さが相対的に短い状態です。
成長とともに、目も大きくなるので、段々遠視の度数は少なくなる人が多いです。


ピント調節しないとどこにもピントが合わないので、近くも遠くもぼやけます。
その結果、弱視といって、どんなに強い度数の眼鏡を使おうが、
何をしようが最初から視力が出ない、最初は見えていたのに見えなくなる人がいます。
それを弱視と言います。


普段からピント調節をしまくっているので、
普通の状態で検査をしても、本当の度数とは全く違う度数が出ます。

そのため、ピント調節を止める目薬を効かせて検査が必要があります。
弱視の場合、網膜にピントを合わせてハッキリ見えるように
遠視を完全矯正する眼鏡を終日装用して治療をする必要があります。
施設によって昔ながらの伝統か知りませんが、
一律に数字をいくつか引いた度数にする、なんてこともあるみたいですが、
教科書的スタンダードは遠視の完全矯正であって、
遠視を残しても何も良いことはないと思います。


眼鏡を掛ける必要の意味を考えず、


眼鏡を掛ける掛けないのイメージだけで、
子供に眼鏡を掛けさせたくないという親がマレにいます。


小児期にしか出来ない弱視治療を放棄して、
弱視のまま大人になったら、
その後にどんな眼鏡や治療をしようが見えません。
その子は一生視力が出ない人生を送ることになります。
はっきり見えないから、最悪は、
運転免許が取れない、仕事も出来ない、
本当に困ります。


子供が遠視が原因で弱視なのに、
眼鏡を掛けさせない親は、ネグレクト、虐待と眼科的には考えます。


そして、大人になり、年を取った時、遠視は再び悪いことを起こすことがあります。
白内障による水晶体膨化で、急性緑内障発作です。


無調節状態で、ピントが網膜より手前に合った状態を近視と言います。
ピントに対して、目の長さ(眼軸)が相対的に長い状態です。


無調節状態で網膜の手前なので、いくら頑張ってピント調節をしても手前にピントが合うだけで、網膜にピントは合いません。


1日1分見ると目がよくなる本とか見たって、
眼軸は変わらない=近視はそのまま
近視が無くなる訳がありません。


成長とともに、目も大きくなるので、段々近視の度数は多くなる人が多いです。


だから、成長期に急に近視の度数が増えるのです。


眼鏡を掛けたからでは無いのです。


どうせ眼鏡を我慢して掛けないでいたところで、近視は増えていきます。


ヒトも、他の生物も、遺伝子で、何歳の時に、身長や臓器がどれくらいの大きさになるか大体決まっています。
多少の環境因子もありますが、頑張って牛乳飲んだって、外で走り回ったって、無限に背は伸びないし、特定の臓器が大きくなったりしません。


眼鏡をしたから、勉強したから、テレビ・パソコン・スマホ・ゲームをしたから、
近視が増えたというより、成長の因子の方が大きく、遺伝子で最初から決まっています。


ただ、病的近視と言って、大人になってからも、延々と眼軸が伸びて、
近視の度数も物凄いことになり、病的近視による脈絡膜新生血管という
加齢黄斑変性症と同じような病気を起こす人がいます。
これも結局の原因は遺伝子であって、
何をしたから、何をしなかったからでは無いし、
大多数の人はなりません。

眼鏡はピントを網膜の方にずらすだけです。
眼鏡は何も悪いことをしません。


弱い度数の眼鏡を掛けて、近視を残した状態にしても、遠くがぼやけて見えるのが残るだけで、何もメリットはありません。


強い度数と言ったって、完全矯正=正視ってだけなので、薬が強い弱いとは全く意味が違って、デメリットはありません。
子供の調節力を持ってすれば、近くも遠くも全部見えて何も困りません。


老眼が気になる年齢の人で、遠くはぼやけても近くを見易くしたい場合のみ、
弱めの度数の眼鏡は意味があります。
子供にとっては、何も意味はありません。


眼鏡を掛けなくても、弱い度数の眼鏡でも、完全矯正の眼鏡を掛けても、
成長期は近視が増えます。
弱い度数の眼鏡は近視の進行には役には立たず、
最近の論文では、完全矯正の眼鏡の方が、まだ多少は近視の進行に役立つ結果です。


ということは、弱い度数の眼鏡は、見えていると思う期間が短く感じるだけで、


完全矯正の眼鏡の方が、見えている期間が相対的に長く使えます。


ミドリンM点眼、低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー、近視抑制眼鏡(内容は軽度の遠近両用眼鏡)など、近視進行抑制治療!なんて宣伝を見る人もいるかもしれません。
それらを使ったところで、近視は無くせません。
完全に近視の進行を止めることも出来ません。
だって、みんな成長するんだもの。
身長など、体が大きくなることは良いことで、目が大きくなることは悪いこと?
神様にしたら、人間の勘違いも甚だしいと言われますよ。


コンタクトも眼鏡と同じことをしてるだけですが、
目の上にコンタクトを載せるので、
どんどん目の状態が悪くなり、病気が頻発します。
子供に眼鏡は掛けさせたくないけど、コンタクトはさせたい、なんて親は最悪です。
そんなことをしていたら、いつか失明しますよ。
子供に失明しかねないことをするなんて、虐待です。
絶対に止めて下さい。


LASIK、PRKは、角膜を手術で削って、ピントをずらします。


ICLは、虹彩と水晶体の間にレンズを入れてピントをずらします。


白内障の手術は、水晶体の中身を吸い取り、

代わりにレンズを入れてピントもずらせます。


年を取って、LASIK、PRK、ICLなど屈折矯正手術をしても、
老眼が余計に気になると思います。
白内障など、目の中に病気がある場合は、
屈折矯正手術をしても見えるようにはなりません。
ある程度年を取ったら、白内障の手術はそのうち必要になりますし、
屈折矯正手術と同じようなことが出来ますので、それまで待った方が良いです。
それに、LASIK、PRK、ICL、老眼インレーを入れた眼は、
白内障の手術をする時に問題になります。