米下院選挙で過半数を獲得した民主党は実は対中姿勢ではトランプ以上に強硬派だと聞いて思い切り安心してしまった。なぜなら筆者が香港に赴任した1990年代にホワイトハウスに居座っていたのは民主党のクリントンで、毎日のようにニュースで「イリノイ州の経済視察団が中国を訪問し・・」と流れるなど中国とベッタリの姿勢だったからだ。

 ソ連同様に経済が発展すれば中国もやがて西側と同じような体制へと変革する・・。これアメリカ民主党に限らず西側陣営の誰もが信じていた未来図で、だからこそ中国のやんちゃぶりには長らく目をつぶって来たのだが、これ実はナチス・ドイツを21世紀に再登場させてしまうだけだった事に今ごろ気づいたらしい。

 で、何を隠そう筆者だって中国はいずれ西側と同じ・・という幻想を10年くらい前まで抱いてきたのだが、しかし過去を振り返ってみると香港人や中国人たちは「強国にはなるが民主的国家にはならない」と固く信じていたし、それは民主主義の重要性をあまり認識してないと民族的欠陥思考からきているのだが、実は中国人以外にこの幻想は間違いであることを指摘していた民族がいるのだ。

 ロシア人である。筆者は三十代の半ばからロシアとビジネスの関わり合いを持つようになり、彼らと一緒に呑んだ酒の量と無駄話の数々はアメリカ人よりはるかに多く、旧ソ連時代の裏話なんかを聞かせてもらったのだが、彼らは20年近く前から「中国共産党は簡単に権力を手放さないよ」と話していたのだ。

 その理由は同じ共産主義体制でもソ連と中国じゃ「党」の存在意義とか既得権益が段違いだからな!と言うのだ。共産主義体制は「党」が「国」を指導するいびつな構造であり、これ戦後のGHQ(マッカーサー)と日本政府(吉田茂)の上下関係、あるいは「党」が占領者で「国」は被占領者の構図で捉えていただくと良いだろう。

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 ロシア人たちの話だと旧ソ連では「党」の権力は西側で思われていたほど大きなものでは無くて、60年代のフルシチョフ政権以降に「党」と「国」の力関係が揺らぎ始め、70年代のブレジネフ政権あたりになるとその境界線というか違いがだんだんぼやけてきたのだそうだ。

 占領下の日本だとGHQはアメリカの白人、日本政府は黄色人種の日本人と国籍や言語、主教も違うから「党」と「国」の違いが明確に浮かび上がるが、旧ソ連の場合は「党」役人も「国」役人も同じソ連人でアパートの隣同士だったりするわけだし、同じような学校に通って同じような日常生活を営んでいるから「党と国を分けてる意味ってあんのかね?」というムードになって来たらしい。

 それは旧ソ連を支えた三つの組織も同じで、創設時期は共産「党」直轄だった赤軍もスターリン時代にソ連「国」の一部門である国防軍へと改変しているし、治安と諜報を司ったKGBは郵政省や税務署と同じく「国」の省庁だし、ソ連経済を支えていた石油や軍事産業は最初からソ連「国」の公社である。

 筆者は文章が下手なので別の書き方をするが、例えばソ連軍の部隊長だと「オレは党の人間としてソ連国民を制圧しているのだ」とか「外敵から党を守っているのだ」と言う意識を持っていたのは革命後20年くらいで、それ以降は「オレはソ連と言う国家の人間としてソ連国民を守っているのだ」と形質変化していたという事である。

 そして「党」最高責任者たち自身の手で権限や資産を段階的に「党」から「国」へと移管していったため、ゴルバチョフの頃の「党」にはイデオロギーとか地方組織のとりまとめ、それと農業政策(コルホーズ運営)などそれほど重要でない仕事くらいしか残っておらず、「党」役人は「オレたちって要らないんじゃね?」と思うようになっていたらしい。

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 だからゴルバチョフが「党が国を指導する」国体を崩して議会制国家、党治国家から法治国家、最高権力者を「党」政治局書記長から議会的手段で選ばれる大統領へと大きく舵を切った時も、当の「党」官僚たちは「オレもこうなる方が良いと思ってたんだ」と言うくらい権力への執着心は消失してしまっていたのだそうだ。

 しかし中国は違うのである。皆さんよくご存じのとおり人民解放軍は「国家」ではなく「党」中央軍事員会直轄の組織であり、治安諜報機関もいくつか分散しているが元締めは「党」の統一戦線工作部、そして実業部門はさすがに国や民間に分散しているが、それを巧みにコントロールしているのは「党」最高幹部の親族と「党」政治協商会議である。

 そして持てる富や利権が大してなかった旧ソ連「党」官僚と違い、中国の場合は未だに「党」がマジョリティーを握っているわけで、中国はいずれ西側と同じ・・と念仏のように唱えていた西側メディアは、「党」の特権はむしろ増えていて、利権の金額は桁がどんどん繰り上がっている現実を見ていたのだから、ソ連と違って中国はむしろ逆行している!ともっと早い段階で気が付くべきだったのだ。

 その結果中国共産「党」は中国という「国」だけでなくアジア各地へと触手を広げ、アメリカと世界を二分して半分の占領者になる気にしてしまったのだが、不思議なのはこういう悪意に満ちた奇形亜種に対して未だに「日中友好」みたいなことを抜かしている阿呆が今でも巷にあふれていることだ。

 西側の政治家がどこかの団体の理事として微々たる報酬をもらおうものなら集中砲火を浴びせる一方で、中国共産「党」が何百兆元にものぼる「国」の資産を横領しても一切沈黙している西側メディアよりも、同じ共産主義体制下にいて栄枯盛衰を見聞きしてきたモスクワ市民の方がよっぽど慧眼だった・・というお話でした。
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