1983年、大澤誉志幸の記念スべきデビュー・アルバム
メロウなR&Bテイストが色濃く出ているアルバム
1983年発表の大澤誉志幸のソロ・デビュー・アルバム
日本中が右肩上がり一直線だった30年以上前の尖った空気感がモロに伝わる
ハスキーで迫力あるヴォーカルがスマートでお洒落な雰囲気をまとい、R&Bを基調にしたダンサンブルな
ロックは、テクノ時代だったことを思い出させる
大澤誉志幸は中学生のころから兄がグループ・サウンズを聴いていたことから音楽に興味を持ち、
ボブ・ディラン、オーティス・レディングなどを聴き始め、高校の学園祭でバンドを結成して音楽活動を
始める
駒澤大学在学中、初期はブルースを演っていたが、後にR&Bに傾倒、1978年にロック・バンド、クラウ
ディ・スカイを結成( 大澤誉志幸はヴォーカル・ギター担当 )
§ Recorded Music §
1 e-Escape
2 サディスティックCafe
3 Jokeでシェイク
4 宵闇にまかせて( Kiss & Kiss )
5 キッスはそこまで
6 彼女には判らない( Why Don't You Know )
7 Deep Sleep
8 ベッドからLove Call
9 プラトニック・ダンサー
10 まずいリズムでベルが鳴る
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大学卒業後の1981年4月にビクターからレコード・デビューするが、ヒット曲を出すこともできずバンド
の方向性を巡って、ほかのバンド・メンバーとトラブルになったことから、アルバム1枚" 明日はきっと
ハレルヤ "とシングル2枚" 悲しきコケコッコ " " 私は蝉になりたい "を残すのみで同年末に解散すること
になる
バンド解散後の1982年、大澤は印税を前借りして単身渡米する
ニューヨークのクリストファー・ストリート近辺のロフトで1年間過ごし、ほかのアーティスト( 特に
アイドルの歌謡曲 )へのプロデュースおよび楽曲提供の傍ら、ジャズ・クラブや美術館に入り浸る
日々を送る
帰国後、エピックのディレクターに才能を見い出され、ミュージシャン契約を結び、当時のロック・
ミュージシャンとしてはかなり珍しいタイプで" アイドルへの積極的楽曲提供とプロデュース "で一躍
売れっ子作曲家としても注目を浴びる
楽曲提供活動と並行しながらソロ活動を始め、大澤誉志幸名義で" 彼女には判らない "、そしてこの
アルバム" まずいリズムでベルが鳴る "をリリースする
アルバムの最初を飾るのは" e-Escape "、打ち込み系ドラムとシンセ・ベースの絡みで始まり、大澤
誉志幸が日本語なのか英語なのか聴き取れないが、そんなことどうでもいいんだよという感じで、言葉を
投げ出すようにシャウトしながら歌っている
" Jokeでシェイク "なんかは" ジョークでシェイク、ジョークでシェイク… "なんて歌詞は時代を感じると
思いつつ、間奏のバックで吹き鳴らされるサックス・ソロもいい
" 宵闇にまかせて( Kiss & Kiss )"は、少しスローだがバラードまでのスローではないラヴ・ソングで
大人な感じの曲になっている
" 低いジャズに身を寄せた夜は嘘をつけない リズムをだどる赤い爪 抱いてほしいと光る "なんて歌詞は
ダンディ、こんな歌詞を女性が書いているとは思わなかった
いきなり大澤誉志幸のシャウトで始まる" 彼女には判らない( Why Don't You Know )"だが、ギター・
カッティング中心のアレンジでグイグイと引っ張っていく
この曲のすごいところは、女の娘の描写が実にうまく、そんな女の娘にやられっぱなしの男も同時に
描かれている
少し重めの" ディープ・スリープ "だが、大澤誉志幸の真骨頂というか言葉をぶっきらぼうに投げ出し
ながら、それがすべて歌になっているという素晴らしい曲になっている
それぞれ感じるままに聴いてもらえればと…
タイトル曲の" まずいリズムでベルが鳴る "は、曲自体はそんなに速いテンポの曲ではないが、バックの
音のスピード感が早い感じがする
飛ばしまくるバックの音にサビに向けてヒート・アップしていく大澤のヴォーカルがいい
それに合わせるかのように、歌詞もハードボイルドである
各テイクに、ところどころ当時の歌謡曲のテイストが混じっていたりして、そういったところも含めて
80年代という感じのアルバムになっている