He's been sitting on the document for more than a week. ってどんな意味?【句動詞表現#30】
どうも、ねこらいたーです(= ̄ω ̄=)
本日2回目の更新。
今回扱うのは、「sit on」。
見た目だけはカンタンそうですが、なぜそのような意味になるのか考えると、かなり難しい部類に入る句動詞です。
では、はじめますね。
- 初めての方へ
- onのコアイメージって?(※再掲です)
- 1.He sits on the executive committee.
- 2.The new government is sitting on the problem.
- 3.He's been sitting on the document for more than a week.
- 4.They may be criticized for sitting on the scandal.
- 5.Emily sat on him for being officious.
初めての方へ
当ブログでは、いわゆる前置詞と空間を表す副詞をまとめて方位詞と呼んでいます。
また、このブログでは、句動詞を紹介するときに、その目的語の位置を次のようにパターン化してご紹介しています。
①:割り込み型
動詞と方位詞を必ず離してその間に目的語を割り込ませるパターン。目的語と方位詞の位置を入れ替えることはできません。
例)get John up 「ジョンを起こす」「ジョンを立たせる」
②:後置型
必ず方位詞の直後に目的語を置くパターン
例1)get up a ladder 「ハシゴを登る」
例2)get up to London「ロンドンに行く」
③:準後置型
方位詞の直後に目的語を置くのが普通なパターン。パターン②ほど目的語の位置は絶対的ではないので「”準”後置型」としてあります。
例)put on weight 「体重が増える」
④:入れ替え可能型
文字通り方向詞と目的語を入れ替えできるパターン
例)put the coat on(またはon the coat) 「上着を着る」
⑤:不要型
いわゆる「自動詞+副詞」のパターン。このパターンでは、意味を成立させるのに目的語を必要としません。
例)break up「(関係・友情などが)終わる」
【句動詞表現#2】では、ムダに細かく考察しています。より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
onのコアイメージって?(※再掲です)
onのコアイメージは「何かに接触・接近している」です。上に乗っているというイメージが強いonですが、実際には接触していれば上でも側面でも下側でもonで表せます。
そして、このコアイメージからも様々な意味が比喩的に派生していきます。いくつかご紹介しますね。
まず上図のボールに注目してください。青いボールから見れば隣にある立方体は大きいですよね。このように、大きいものにくっ付いている様子から、このボールがまるで付属物のように感じられてきませんか。つまり、接触しているもののうち、大きい方が主体で小さい方が付属物だという感覚。この感覚こそが「身につけて」(ex. put the dress on)という意味で用いるonです。
さらに、ドレスや帽子などを身につけているということは、それらは所有物であるともいえますよね。この関係をドレスや帽子から見れば、これらは身につけている人に所属しているということになります。このイメージから、「組織に所属している」(ex. He is on the commitee.)という意味のonが生まれたのでしょう。
また、物理的な接触を「力」という観点からみれば、力が「作用[影響]している」(ex. have an effect on customers )わけです。
昔、学校の授業で「作用・反作用の法則」というものを習いましたよね。まさにあのイメージです。
1.He sits on the executive committee.
意味:彼は執行委員会の一員です
目的語パターン:後置型
語彙解説
このsit onは「(委員会など)の一員である、役職についている」の意。
意味の捉え方・覚え方
これには2つの考え方があります。
まず一つ目。さきほどonのコアイメージのところでご紹介したように、on自体に「組織に所属している」の意味があります。したがって、「組織に所属した状態で座っている」⇒「組織の一員である」と考えることが可能です。
もう一つは、いつもやっているように、動詞とセットでよく使われる名詞が消失したと考えて、その名詞を補うというやり方です。この場合の動詞sitと相性がいいのはchairなどの座るものでしょうから、見出し例文のケースであれば
sit on a chair of the executive committee
と補えば分かりやすいでしょう。委員会の席に座るということはその委員会の一員であるということになりますよね。
2.The new government is sitting on the problem.
意味:新政府は現在、当問題に関して審理中だ
目的語パターン :後置型
語彙解説
このsit onは「(議会などが)(事件など)を審理する、調査する」の意。
意味の捉え方・覚え方
まず、この意味用法を「~を審理する、調査する」としか書いてない辞書が意外とあるようですが、実例を見てみると、この意味用法での主語は議会や委員会などの組織であることが普通なようです。実際、weblio内で使える『研究社 新英和中辞典』のsitの項を覗いてみると、この点についての記述がありました。さすが研究社ですね^^
となれば、話はカンタン。
というのは”sit”に「(議会などが)開かれる」という意味があるからです。つまり、sit on~自体が「~を審理する、調査する」の意味になるのではなく、「議会などが~に関して開かれる」というのが本当の意味であって、この意味を意訳したものこそが「~を審理する、調査する」というコトバだったのです。ちなみに、このときのonは「~について」という意味で、俗にいう関連のonですね。
なぜ”sit”に「(議会などが)開かれる」という意味があるのかということに関しては、sellが自動詞用法で「売れる」という意味をもつのと似た発想と考えておけばいいでしょう。
3.He's been sitting on the document for more than a week.
意味:彼は1週間以上、その書類を放置している
目的語パターン:後置型
※頻出の意味用法です
語彙解説
このsit onは「(手紙・申込書など)を放っておく、遅らせる」の意。この意味では通例、進行形にするようです。
なお、more than a weekは「1週間以上」という意味で、これに期間を表すforがついています。
意味の捉え方・覚え方
いくつかの考え方がありますが、一番単純で分かりやすいのは、sit on one's handsという成句を出発点にする考え方です。
この成句は、『ジーニアス英和大辞典』によると次のような意味です。
(1) ⦅米略式⦆(容易に)拍手しない, 賛意[熱意]を示さない.
(2) ⦅略式⦆手をこまねいている.
このうちで、どれがこの成句の根幹の意味かという点については、語源に強いことで有名なOnline Etymology Dictionaryのsitの項目に以下の記述があります。
To sit on one's hands was originally "to withhold applause" (1926); later, "to do nothing" (1959).
※出典はこちらのページ↓
この説明に従えば、「(容易に)拍手しない」というのが根幹で、ここから「手をこまねいている」という意味が派生したということになります。
また、さきの『ジーニアス大辞典』の説明にあった「賛意[熱意]を示さない」という意味も「(容易に)拍手しない」というのを拡大解釈したものでしょう。拍手は賛意の象徴ですから、こういった意味が生まれても何も不思議ではありません。熱意という意味合いも、夢中で拍手を送るような様子から生まれたのでしょうね。
次に、なぜsit on one's handsが「(容易に)拍手しない」の意味になるのか気になりますが、これは文字通りの意味に由来するのでしょう。手をお尻の下に敷いて座れば手は使えませんから拍手どころか何もできませんよね。
余談ですが、ちらっと調べてみますと、このように手をお尻の下に敷いて座ることが癖になっている人がいるようですね。特に女性に多いという指摘をしている記述もありました。私自身にはこういう癖はないのでよく分かりませんが、皆さんはどうでしょうか。
さて、sit on one's handsについて見てきましたが、もうsit onとの繋がりはお気づきでしょう。そうです。sit on one's handsが持つ「何もしない」という比喩的意味がそのままsit onに転用されているのです。
つまり、見出しの例文は「彼は1週間以上、その書類に関して何もしていません」というのが元の意味だったわけですね。そして、この意味を言い換えたのが「放置する、遅らせる」ということなのです。
4.They may be criticized for sitting on the scandal.
意味:彼らはスキャンダルを握り潰そうとしている、と批判されるかもしれない
目的語パターン:後置型
語彙解説
このsit onは「(報道など)を押さえつける、握り潰す、もみ消す;伏せておく」の意。
意味の捉え方・覚え方
これも何通りか考え方がありますが、単純で覚えやすいのは結局、文字通りの意味からの比喩だと考えることでしょう。つまり、
「報道・スキャンダルの上に座る」⇒「報道・スキャンダルをお尻で圧迫する」⇒「報道・スキャンダルを圧迫する」⇒「報道・スキャンダルを押さえつける」
という流れで理解しておけばいいのではないでしょうか。「伏せておく」という意味も尻の下に物を敷けば見えなくなるわけなので、その様子から派生した比喩と考えれば良さそうですね。
これだけではピンとこない方もいるかもしれませんが、英語表現においては、上からの力がかかることを想像させるようなものは大体の場合、敵意が込められています。例えば、次のようなものです。
bear down on~ 「~にのしかかる、威圧する」
clamp down on~ 「~を弾圧する、取り締まる」
have a down on~ 「~を嫌う、憎む」
look down on~ 「~を見下す」
kick-ass on~ 「~につらく当たる、威圧する」
これらの例から分かるように、敵意が込められているものはdown onというセット表現であることが殆どです。この点を考えると、例文4.の意味でのsit onも元々は「sit down on」という形だったのかもしれませんね。
一方で、複数の英和辞書を見ると、さきの例文3.の意味用法と同じグループの意味として記述されている場合が多いようです。その意図を推測するならば、例文3.と4.の意味でのsit onの本質を「~を妨害する、妨げる」というイメージで捉えているのでしょう。つまり、
「自分の手を妨げる」⇒「拍手しない」(= sit on one's hands)
「書類を妨げる」⇒「書類を放置する」(= sit on the document)
「報道を妨げる」⇒「報道を握り潰す、伏せておく」(= sit on the news)
というように捉えていると考えられます。
これに関しては、皆さんの覚えやすい方で覚えてみてください。
5.Emily sat on him for being officious.
意味:エミリーは、彼をお節介だと非難した
目的語パターン:後置型
語彙解説
このsit onは「①(人)を押さえつける、黙らせる ②(人)を叱る、非難する」 の意。forはいわゆる「理由のfor」です。
意味の捉え方・覚え方
これは、例文4.の意味からの派生と考えておけばOKです。②の意味は①を拡大解釈したものですね。つまり、
「人を言葉で押さえつける」⇒「人を叱る、非難する」
という流れなのでしょう。
さて、いかがだったでしょうか。
いつもやっているmake,take,go,giveなどの基本動詞を含まない句動詞は、先ほど投稿したact onのように非常にカンタンなものと今回のsit onのようにかなり難しいものに分かれていて、両極端な気がしています。
いずれにしても、比喩的な意味である場合には、初見の表現を接尾辞や動詞のイメージなどのみから推測するのは多くの場合不可能なので、結局後付けでその意味を地道に憶えていくしかないでしょうね。ここが辛いところです・・・。
では、また。
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