第070話 『循環進化』 (Bパート)

 

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翌朝、ついに40メートル大の個体が現れます。
 
タケユ(第6師団長・IDMA)
「攻撃開始!」
 
陸上重巡≪竹芝≫を旗艦とする、
軽巡4隻、戦車、突撃砲、装甲車、
自走砲中隊が布陣、攻撃を開始します。
 
怪生物に次々と命中弾が当たり、飛び散りますが、
しばらくすると、飛び散った破片が怪生物になり、
それぞれ活動したり、再度集合して巨大になります。
 
タケユ(第6師団長・IDMA)
「こいつには、通常火器は効かないのか?」
 
陸軍隊員A
「司令。
 何となくですが…
 弾着を、吸収しているようにも思えます。」
 
陸軍隊員B
「後方に、別個体の一群が現れました。
 弾薬に襲い掛かって、食っています。」
 
陸軍隊員C
「こちら軽巡≪水天宮≫、
 怪物に取り付かれて、行動不能です。
 主砲が食われて、機関部にも…」
 
タケユ(第6師団長・IDMA)
「艦を放棄して、一度退却しろ。」
 
陸軍隊員C
「いえ、人間にはまったく、目もくれないので、
 現在は各員が、ハンマーや小銃による、
 殴打で、怪物に対応中ですが…
 
 破壊して、飛び散っても、
 また復元して、集合、取り付かれて。
 
 食うたびに、大きくなっているようにも思え、
 苦戦中です。」
 
タケユ(第6師団長・IDMA)
「な、何て事だ。
 
 とにかく、一時攻撃中止だ。
 軍を立て直す。
 
 待機中の空軍にも、出動見合わせの連絡を!」
 
そうは言っても、目の前に怪物が出れば、
つい撃ってしまう、陸軍隊員達。
そして確かに、一時的には破壊します。
 
しかし結局、怪生物は復元、集合し、
元に、戻ってしまいます。
そして小銃や、機械類に取り付くと、
消化、食べ初めて、さらに増殖します。

 

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その話を、無線で聞いたUSTは、
一度、アーク1号を着陸させ、
外に出て、様子を見ます。
 
ゴウリ
「人は襲わず、人間には無害。
 
 しかし、
 火器で攻撃しても、一度飛び散るだけで、
 再集合して、元に戻ってしまう。
 
 こんな妙な怪物、どうすりゃ良いんだ?」
 
ユリコ
「考え無しに、攻撃すると、
 餌をやっているような、物って事?」
 
ナワテ
「でも、無害なんだから、ほっておく…
 
 って、わけにも行かないですよねえ?」
 
ゴウリ
「当たり前だろ!
 人間以外の、建物や機械が全部無くなったら、
 それは結局、文明の終わりだぞ!」
 
クロス
「とりあえず熱線、冷凍弾、電撃の類を、
 順に試してみましょう。」
 
ゴウリ
「そうだな。」
 
熱線砲、冷凍弾、電撃砲、電磁弾など、
一通りの攻撃手段を、試してみるUST。
 
しかし、どれも似たり寄ったりで、
ある程度の効果は、あるような物の、
さほど決定的なダメージは、与えられません。

 

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そこへ、ヒデコ隊員の操縦する、
大型戦闘輸送ヘリ≪ルインドルート≫が到着、
マキノハラ博士、サントウ室長と、
清部秀郎(きよべひでお)が、降りて来ます。
 
散発的に、攻撃を続けている陸軍を見て、
清部が、提言します。
 
清部秀郎(きよべひでお)
「砲撃を止めさせて下さい。
 
 確かに一時的には、吹き飛びますが、
 あれは人工物を、消化吸収します。

 

 そして、プリスマンテルは、

 千切れた、どの一部位からだけでも、再増殖し、

 活動も出来るし、最終的には元の姿に復元します。

 細胞サイズから、巨大化、群生して、

 何十メートルにも、なれるんです。

 

 プリスマンテルにとっては、高エネルギー人工物ほど、

 栄養源になり、増殖する。

 通常攻撃は、餌をやって増やしているような物です。」
 
ゴウリ
「や、やっぱりか!?」
 
ナワテ
「それで弱点は?」
 
清部秀郎(きよべひでお)
「弱点は… その… 特には無いんです。」
 
ゴウリ
「おい、それじゃ、どうしたら良いんだ?
 
 まさか不死身なのか?」
 
清部秀郎(きよべひでお)
「いえ、生き物ですから、不死と言う事はない。
 
 でも、非常に死ににくいと言うか、
 根絶しにくいんです。
 細胞一つからでも、復元してしまう。
 
 とりあえずですが、分裂を阻害する操作薬は出来ました。
 これをあいつに、撃ち込めますか?」
 
手渡された、薬剤のカプセルを受け取るナワテ。
 
ナワテ
「これを弾頭に仕込むだけなら、すぐ出来るよ。」
 

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≪ルインドルート≫から、≪アスベライク≫を出し、
中に積んでいた、エレキバズーカの弾頭を外して、
分裂阻害弾に、差し替えるナワテ。
 
すぐにゴウリとナワテで、≪アスベライク≫で接近、
分裂阻害弾を怪生物に、撃ち込みます。
 
怪生物は、一見これまでと、変わりませんでしたが、
最大個体に、融合した物は、
そこから分離は、しなくなりました。
 
ゴウリ
「よし、まずは成功みたいだ!」
 
が、最大個体は、町の展望タワーに取り付き、
溶かして、食べ始めます。
 
クロス
「まずい!
 建物の中には、まだ人が残っている。」
 
ユリコ
「怪獣を攻撃して、注意をそらしてみます。」
 
クロス
「ぼくは、建物に向かうよ!」
 

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ゴウリ、ナワテと、ユリコが、
それぞれ、背後から攻撃を仕掛け、
クロスがタワーに、上り始めますが、
4隅の支柱の1本は、完全に無くなり、
タワーが傾き始めます。
 
怪物はさらに移動して、隣の支柱に取り付きます。
 
クロス
「まずい…。」
 
ウルトラホープを出して、フラッシュさせるクロス。
光とともに、ゾフィが現れます。

 

 

 

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危機一髪、
倒れだしたタワーを、支える事に成功しますが、
2本の支柱の無くなった側を、支えるだけで手一杯で、
ゾフィも、動きが取れません。
 
懸命に攻撃するゴウリ、ナワテと、ユリコですが、
うっとおしそうにしながらも、怪物は離れません。
 
と、その時、
空中を巨大な艦艇が、タワーに近づいて来ます。
 
輸送軍、東部方面隊集団の、
旗艦≪大神≫(おおがみ)でした。
 
ラン(輸送軍東部隊司令・IDMT)
「怪獣は気にするな!
 展望部を確保して、すぐにワイヤーを。」
 
タワーの上に静止すると、人が集まっている展望部の下に、
複合ワイヤーを撃ち込んで、引っ張り上げ、
持ち上げて、バランスを取ります。
 
ラン(輸送軍東部隊司令・IDMT)
「生存者は、展望部に集まって下さい!
 
 全員確認したら、何でも良い、
 合図を出して下さい!」
 
マイクで声が響くと、すぐに展望部の割れた部分から、
白い布が出て来て、振られます。
 
その様子を見ると、事を起こす≪大神≫より早く、
ゾフィは、ハンドビームナイフを作り、
タワーの中央部を、一閃、
展望部より下が、切断されて離れ、
展望部を吊り下げながら、≪大神≫は離れて行きます。

 

 
フリーになったゾフィは、怪生物に向き直り、
まだタワーを食べ続けている、怪生物に向かって
ヴァーチカル・クロスを発射。
 
命中部位から順に、風化するように分解・霧散し、
怪物は完全に、消滅しました。
 
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【科学センター 所長室】
 
サントウ(第2研究室長・科学センター)
「清部さんから、謝罪と御礼の連絡が来ていました。
 
 所長、ふと、思ったんですが。
 生物って、進化し続けると…」
 
マキノハラ
「“最後は”どうなるか? だろう?」
 
サントウ(第2研究室長・科学センター)
「はい。」
 
マキノハラ
「そもそも、進化とは何だろう?
 
 漠然と、生物がどんどん複雑化、高度化して、
 高等になっていくような、イメージを持つが…
 
 例えばそれは、エントロピー増大の法則とは反する。
 なぜ生物は、こんな奇妙な性質を持っているのか?」
 
サントウ(第2研究室長・科学センター)
「それは…
 周囲の環境に適応し、種として生き残るために、
 必要な手段を取っているのだと、理解していますが。」
 
マキノハラ
「その場合、変化と言う言葉でも良いように思う。
 
 人間は、自分自身を頂点に置きたがるので、
 自己賛美も込めて、進化と言う言葉を、
 使っているように思うが、
 単純に、変化と置き換えたらどうだろう?
 
 周囲の環境や競合種との対応のため、変化している。
 その場合は、必ずしも複雑化イコール進化ではない。」
 
サントウ(第2研究室長・科学センター)
「わかります。
 生物学上も、必ずしもシンプルな種が弱いわけでも、
 劣っているわけでも、ありません。
 不要な部位や能力は、退化する事もありえます。」
 
マキノハラ
「複雑化・高度化と言う物は、無限に続く物だろか?
 
 ある日ある時、複雑化・高度化が行き着いたような時、
 限界が来て、徐々に、あるいは一気に、
 今度は単純化が、進化方向になる事はありえないだろうか?
 
 少なくとも、複雑化・高度化が一方向の非可逆なら、
 いつか何らかの形で、限界が来る気がするが、
 複雑化・単純化が、繰り返されるなら限界は無い。」
 
サントウ(第2研究室長・科学センター)
「じゃあ、進化の究極は、原初に戻ると?」
 
マキノハラ
「もちろん仮説だよ。
 あるか?ないか?、

 あるとすれば、いったいいくつあるか?

 わからない答えの、一つの仮説だ。
 
 だが、もしこのまま、人類の科学が無限に進み、
 天敵がいないために、人類のせいで人類自身が、
 首が回らなくなるような時が来たら、どうだろう?
 
 人類も他の生物も、いや地球その物も、
 行き詰ってしまいは、しないだろうか?
 
 そう言う、高度に複雑化した環境・文明において、
 その、高度に複雑化した、環境・文明自体を、
 食う事に進化し、適応した生物が現れたら?」
 
サントウ(第2研究室長・科学センター)
「人間は直接殺さない。危害も加えない。無害。
 
 でも代わりに、
 人の作った文明・環境・仕組みを食べて、増殖する生物。」
 
マキノハラ
「そうだ。
 機械や電子部品、工業品、化学物質を食べて、
 有機肥料や自然物を、排泄する生き物だ。」
 
サントウ(第2研究室長・科学センター)
「人類は… 滅びはしないかも、知れないけれど、
 文明はなくなりますね。
 少数の、自給自足社会だけになって。」
 
マキノハラ
「そして、そうなれば、餌が無くなるから、
 その生物も、徐々に死滅するだろう。
 
 ある種の共依存を持って、無限に続く関係だ。」
 
サントウ(第2研究室長・科学センター)
「所長は、進化とは一方通行ではなく、
 変化であり、存続し続ける限りは、
 いつか、ああ言う、
 文明の天敵のような生物が、現れると?」
 
マキノハラ
「そこまでは、言わんよ。
 
 ただ、どんな可能性も、否定は出来ない。
 
 幸か不幸か、我々が生きている間には、
 その答えを見る事は、出来ないだろうが…」
 
サントウ(第2研究室長・科学センター)
「でも、
 今回の怪物は、人為の偶然かも知れませんが、
 偶然、妙な生き物が発生する可能性だって、
 ゼロでは無いですよね。
 
 これからも。」
 
窓のそばまで行って、窓を開けると、
そばの木に止まっていた小鳥が、飛び立ちます。
 
が、
なぜか一羽だけ、飛び立たない小鳥がいて、
それはこちらを、じっと見つめているようでした。
 

【第070話・終わり】

 
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