第329話 『メカニクナス』

 
反異真人 ゾーレトーレル

 

もし、ウルトラセブンの最終回のあと、
TVでゾフィが始まっていたら?の妄想ストーリーの第329話。

 

ある小都市で、自殺者が連続します。

特務軍と警察は、ある病院が怪しいと、にらみますが

 
【UST=防衛チーム】
 
ユルガ(隊長)
ゴウリ
ナワテ
ユリコ
ヒデコ
クロス
 
【IDM=地球防衛機構】
 

(Bチーム=情報技術班)
シズカ(班長)
ユウキ
ドノバ
アカイ
リオ
ユウ
 
カジ(UST参謀)

 

ナガサウラ(特務軍参謀・IDMI司令)

 コミ(情報8課長・IDMI)

 アラス(情報8課・IDMI)

 マリ(情報8課・IDMI)
 
マキノハラ(科学センター・所長)
 
【その他・ゲスト】
 
文原重造(警視庁特殊事件対策部)

 

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【鞘稲手市(さやいなでし)】
 
ビルの屋上から、若い男性が降って来ます。
地面に激突し、悲鳴が上がり、
「大変だ!」「救急車!」「早く!」
などの声が上がります。
 
遠巻きに見ていた、人の輪の後ろのほうでは、
「またかよ。」「今月に入って、何人目?」「何か嫌な感じね。」
などと言う、ヒソヒソ声が聞こえます。
 
その様子を見ていた、後ろのほうの人の中から、
一人が、自殺者を確認すると、去って行きます。
 
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何人かが噂話をしていたように、
関東近郊の鞘稲手市(さやいなでし)では、
今月に入ってから、自殺者が増えていました。
 
それも、およそ自殺しそうには見えない、
それまでは、ごく普通の生活していた、
いたって普通の、若い男女中心に、
突然、自殺をしていたのです。
 
【極東基地 特務軍 情報8課作戦室】
 
マリ(情報8課・IDMI)
「チーフ、この、鞘稲手市(さやいなでし)ですが。」
 
コミ(情報8課長・IDMI)
「気になると言えば、気になるんだが…」
 
アラス(情報8課・IDMI)
「自殺者増加と言うだけでは、何とも言えませんよね。
 何か、並行事象みたいなのも、
 今のところは、見当たらないようだし。」
 
コミ(情報8課長・IDMI)
「そうなんだよ。
 これだけなら、空振り率も高そうだし。
 
 司令に言って、誰か回してもらっても良いが、
 現段階なら、警察の方が適任かもな。」
 
マリ(情報8課・IDMI)
「ああ、そうですね。」
 
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【鞘稲手市(さやいなでし)】
 
警察所に向かって歩く、文原警部と特務軍のマリ。
 
文原
「ちょうどこっちも、行こうと思ってた、
 ついでなんで、別に構わんが。
 
 ご婦人の見張りを、つけられるほど、
 俺は信用されて、無いんかね?」
 
マリ(情報8課・IDMI)
「とんでもありません!
 同行は、何かの時は、
 少しでも早く確実に、連絡を入れられるようにとの、
 こちらの側の、都合ですし、
 
 それなら、ぜひ警部の仕事ぶりを見学し、
 勉強したいと、私が志願しました。
 若輩ですが、よろしくお願いします。」
 
文原
「あんた、口うまいね。」 
 
と、黙ってしばらく歩いたあと、
 
文原
「本当は、室内にこもりっきりで、
 同じ仕事すんのが、飽きるんじゃねぇの?」
 
マリ(情報8課・IDMI)
「それも、まあ…
 8割5分くらいは…」
 
文原
「俺も、そうなんだわ。
 身体動かしてるほうが、性に合う。」
 
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鞘稲手市(さやいなでし)警察署につき、
自殺者についての、情報提供を求める2人。
 
確かに、若い男女中心であるほかは、
年齢、職業、立場等も、一見バラバラでした。
 
それから各遺族の元へ出向き、話を聞きます。

なるほど、学生もいれば、社会人もいる。
サラリーマンもいれば、職人もいる。
バイトや、浪人中の人もいました。
 
特に深い悩みを、抱えているような人はおらず、
その意味では、やはり共通性も無ければ、
自殺の動機も、わかりませんでした。
が、
何人かが、自殺の少し前に、
「頭痛がする。」と言っていたのを、
家族が覚えていました。
 
それを頼りに、本人の持ち物等から、
通院情報を探して、ある一件の病院を割り出します。
 
湖畔精神総合病院(こはんせいしんそうごうびょういん)
規模は、それほどでもありませんが、
精神科関連の各種診断、治療を行なう、
全国でも珍しい、先駆的な病院でした。
 
物陰から、様子をうかがう2人。 
 
文原
「さて、事情を話して、
 正面から、聞きに行くか?
 
 それとも伏せて、
 患者のフリでも、して行くか?」
 
マリ(情報8課・IDMI)
「そうですね。
 
 いえ、
 ここまで、来れたのなら、
 あとはUSTに、任せましょう。」
 
文原
「そうか。
 あんたが、それで良いなら、
 もちろん俺も、異論はない。」
 
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【UST作戦室】
 
カジ
「と言うわけで、今回、一時調査は、
 特務軍と警察で、やってくれている。」
 
ゴウリ
「場所が絞れてるって言うのは、助かりますな。
 いつもこうだと、楽なんだけどなあ。」
 
ユルガ
「こらこら、変に味を占めるんじゃない。」
 
カジ
「とは言え、まだ具体的には、何もわからん。
 
 何かの人為で、自殺者が増加してるなら、
 君らの調査次第では、警察へ差し戻しもある。
 
 まずは、しっかりやってくれよ。」
 
全員
「了解」
 
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【多良岬の岩棚、三迫の入江】
 
岩棚が開いて、発進リフトがセットされ、
灯台に続く防波堤がスライドして、滑走路が現れます。
 
灯台がそのまま下がって、赤い光が青になると、
エンジンを点火して、飛び立ってゆくアーク3号。
 
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今回は、ユルガ隊長が本部に残り、
ゴウリ、ナワテ、ユリコ、ヒデコ、クロスの5人と、
B班シズカ、アカイの2名が、アーク3号で、
現地、鞘稲手市(さやいなでし)へ、飛びました。
 
クロスとユリコが、問題の湖畔総合病院へ、
シズカ、アカイが、バックアップに回り、
残りは、警察署への事情聴取と、
遺族への聞き取り調査を、継続します。
 
身分を明かすのは、後からでも出来ると考え、
2人はまず、頭痛がすると偽り、
患者のフリをして、受診する事にします。
 
ヒデコ
「ちょっと!ユリコ隊員!」
 
ユリコ
「何?」
 
ヒデコ
「まさか、それで行くの?」
 
ユリコ
「お、おかしい?」
 
と、不安そうに一周するユリコ隊員。
 
グレーのハンチング帽に、黄色のマフラー、
赤のワンピースに、青のパンタロン、
緑の長いベルトを垂らして、ちゃんちゃんこ。
縞のレッグウォーマーに、黒と金色のハイヒール。
背中には、登山用のリュックを背負い、
肩からはかわいらしい、ハンドバッグを下げています。
 
ヒデコ
「何でワンピースに、ちゃんちゃんこなの?」
 
ユリコ
「いや、寒いかな?と思って。
 
 あの…
 やっぱり、変えようか?」
 
ヒデコ
「…いや、本人が変えても、
 同じセンスの、歩く不審者が、
 別の類に、シャッフルされるだけだわ。
 
 口で言うより、あたしがとっかえた方が早い!」
 
と、問答無用で、一室に連れて行き、 
普通のセーター、Gパン、コートになりました。
 
【湖畔精神総合病院(こはんせいしんそうごうびょういん) 前】
 
病院内の駐車場ではなく、わざと少し離れた場所に、
≪アスベライク≫を止めて、シズカ、アカイを残して、
病院へ向かう、ユリコとクロス。
 
クロス
「身分を明かすのは、後でも出来るからな。
 打ち合わせ通り、ぼくが軽い頭痛と言う事で、
 探りを入れてみる。」
 
ユリコ
「了解。気をつけてね。
 
 最悪の想定だと、自殺を誘発される、
 何らかの処理を、されかねないから。」
 
クロス
「そこは充分、気をつけるよ。」
 
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【鞘稲手市(さやいなでし)警察署】
 
職員から、資料を受け取って見ながら、
話を聞いている、ゴウリ、ナワテ。
 
ゴウリ
「なるほど。
 こうして見ると、やはりバラバラですね。
 会社員、学生、劇団員、花屋店員、浪人、
 主婦に… こっちはインテリアデザイナーか。」
 
警察官
「司法解剖はされましたが、その結果でも状況でも、
 自殺はまず、間違いないです。
 
 指摘されて、数が増加していると気が付くまでは、
 事件性は、考えられませんでした。
 
 実際、動機を考えると、不可解なんですが、
 ではこれが殺人か?と言うと、
 その動機のほうが、もっとわかりませんし、
 手段も謎です。」
 
ナワテ
「この青年の、所属している、
 SA何とかってのは、何ですか?
 仕事の略称か何か?」
 
警察官
「ああ、これは、
 この青年が所属していた、動物愛護団体です。」
 
ナワテ
「動物愛護団体?
 
 動物を愛護していて、人間が自殺するってのも?」
 
警察官
「その辺は、私もわかりません。
 
 動物愛護といっても、熱狂的な一部のグループは、
 それこそ、人間を傷つけても、
 力ずくで動物を、開放しろ!みたいな思想ですし。
 
 うさぎのためを思って、親うさぎを強奪して放し、
 結果、お乳を飲めなくなった、
 子うさぎが、死んだりとか。」
 
ナワテ
「本末転倒じゃないですか!?」
 
ゴウリ
「じゃあ、この、何とかベジタリアンてのも、
 同じような、やからですか?」
 
警察官
「それは、菜食主義グループです。
 
 ですが、菜食主義グループにも、
 段階のような物が、あって、
 違う派閥とは、主義が合わないようですし、
 植物愛護団体とも、何かと衝突してます。」
 
ナワテ
「植物愛護団体と?
 
 ベジタリアンと、植物愛護団体なら、
 話しは、合うんじゃないですか?」
 
警察官
「逆ですよ。
 ベジタリアンは、植物を食べます。 
 一方、植物愛護団体は、植物を守れと言う立場。
 
 ベジタリアンは、動物だけを差別して大事にし、
 植物を虐待していると言う、主張です。」
 
ナワテ
「なんか、ややこしいですねえ。」
 
ゴウリ
「理解出来んよ!
 虐待されてるって、植物が言ったのかよ!?」
 
警察官
「植物が話せないからこそ、一方的な虐待は良くない。
 我々は植物の代弁者だ。と言う立場のようですが。
 
 中には、植物の声を聞いたと主張して、
 権利を訴える、グループもあります。」
 
ナワテ
「何でもアリだなあ。」
 
警察官
「外野目線だと、そうなんですけどね。
 本人達はそれぞれ、使命感もって必死ですから。」
 
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【湖畔精神総合病院(こはんせいしんそうごうびょういん)】
 
病院の中に入ると、脇に受付があり、
少し大きめの、待合室になっていました。
 
そこからいくつかの、番号のついた扉があり、
呼ばれると、入るようになっています。
 
打ち合わせ通り、クロスが頭痛と言う想定で、
付き添いのユリコは、待合室に残ります。
 
名前を呼ばれると、クロスは扉の一つに入ります。
小さな診察室で、いくつか問診をしたあと、
脈拍、血圧などを測って、すぐに終わります。
 
待合室に戻って、しばらくしたあと、
頭痛薬を処方されて、終わりました。
 
ユリコ
「思ったより、簡単と言うか、
 あっけなかったわね。」
 
クロス
「何かに気付かれたから、無難に帰された…
 と言うわけでは、なかったと思うけど。
 
 頭痛の設定が軽くて、健康体過ぎたかなあ。」
 
ユリコ
「わかる範囲で、探査機で調べてたんだけど。
 
 病院側の人は、みんな人間だし、
 空気、その他にも、特に以上は無かったわ。」
 
クロス
「それはこっちも同じだった。
 部屋にいた、ぼくの担当医、
 センサーで調べたら、確かに人間だった。
 
 すると、見た限りの病院職員は、
 普通の人間か。」
 
ユリコ
「あ、いけない。探知機一つ忘れて来た。」
 
クロス
「なに?」
 
ユリコ
「ライター型のやつよ。
 待合室のテーブルの、花瓶の陰に置いといたの。」
 
クロス
「取ってくるよ!」
 
と、病院に取って帰す、クロス。
 
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【湖畔精神総合病院(こはんせいしんそうごうびょういん)】
 
受付嬢
「あら? どうされました?」
 
クロス
「すみません、ちょっと忘れ物を…」
 
と、
テーブルの上を探しますが、それらしい物はありません。
 
クロス
「あのう… テーブルの上にあった物を、
 そちらで預かっていたりは、していませんか?」
 
不思議そうな顔をする、受付嬢。
 
受付嬢
「いいえ。
 待合室は、通り過ぎる事はあっても、
 患者さんの私物に、触れる事はありません。
 忘れ物の保管なども、診療時間内ではしていません。」
 
クロス
「おかしいな。
 いや、ありがとうございます。」
 
念のために、
受付嬢に向けて、センサーを作動させますが、
結果はやはり、ネガティブ。
ほぼ確実に地球人その物で、嘘もついていないと出ます。
 
トイレに入ると、ビデオシーバーで連絡を取るクロス。
 
≪アスベライク≫で待機していた、
シズカ・アカイが、応答に出ます。
 
シズカ
『こちら≪アスベライク≫、シズカ。
 どうしました?』
 
クロス
「実は探知機のひとつを、紛失してしまって。
 ライターのやつです。
 そちらで場所は、わかりませんか?」
 
会話はオープンで、聞いていたため、
すぐにアカイが、モニターをチェックします。
 
アカイ
『位置は… 病院の中ですね。
 入ってすぐの場所だから、待合室じゃないかな?』
 
クロス
「おかしいな?
 そう思って探したんですが、見当たらないんですよ。」
 
アカイ
『トレースすると、30分ばかり動いてない。
 
 モニター見る限りじゃ、あるはずだけどな。』
 
クロス
「病院側の人間が、嘘をついてるとは思いにくい。
 
 すると、不在中に客が来て隠したのか?」
 
アカイ
『考えにくいな。
 ハンカチでも被せて、隠したなら別だが。
 この距離なら、解像度15センチ間隔でわかる。
 
 それ以上は、東西南北には動いてないはずだ。』
 
シズカ
『発進電波を誤魔化されている…
 は、無いか?』
 
アカイ
『それだと、ユリコ・クロス両隊員の事を、
 入った途端に、正体を見破った上で、
 探知機の存在を知り、電波を解析して、
 本物を隠した上で、偽電波を出した事になります。』
 
シズカ
『大手間の割には、何でそんな事するのかわからんなあ。』
 
クロス
「どうも、気になる。
 とりあえずもう一度、探して見ます。」
 
と、
トイレから出て、待合室に入ると、
あっさりライターを、発見します。
 
クロス
(おかしい???
 テーブルの上にあったなら、見落とすはずが無い。
 
 誰かが一度隠して、また、元に戻したのか?
 何で、そんな事を?)
 
が、
受付嬢は、さっきと変わらない様子で、
目が合うと、ニコニコしているだけです。
 
クロス
「あ、えーと。
 すいません、ライターありました。
 勘違いしてたみたいで。」
 
受付嬢
「よかったですね。」
 
辺りを見回すと、待合室には、
若い女性が一人だけしか、いませんでした。
 
受付嬢
「右圭(うけい)さん、右圭るいさん。」
 
名前が呼ばれると、若い女性が受付に寄ります。
 
受付嬢
「はい、お大事に。」
 
クロス
(まさか、この女性が?)
 
後を追うようにして、出て行き、
さりげなく、探知機を向けますが、
結果はやはり、普通の人間でした。
 
クロス
(わからない。
 実際に最初は、無くなっていたのだから、
 ユリコ隊員の勘違いとは、思えないし。)
 

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ペタしてね