読書嫌いだったけど、本たちが最高の処方箋になってくれた


体調を崩して実家に帰っていた去年の今頃、外出はもちろんスマホやテレビも疲れてしまって、何もできない暇な日が続きました。それでも何もせずに過ごしていると気が紛れず辛いので、何か時間をやり過ごす方法はないかなぁと思っていた時に、母に勧められたのが読書。

「活字読むのは更に疲れそうだし、読みたい本もないし、元々読書嫌いだし…」と最初は気が乗りませんでした。私の今までの読書経験は、読書感想文のためにやむを得ず読むとか、好きなアイドルが載った雑誌を読むとかその程度。(笑)小説にハマった経験もないし、漫画も全く読まないので読書の習慣がなくて、結構苦手意識がありました。しかしあまりにもすることがなかったので母の本棚を物色。そこで見つけた本たちに救われた結果、今では読書が大きな力となっています。

泉谷閑示『「普通がいい」という病』

まず私がタイトルに惹かれて手に取ったのが、精神科医の泉谷閑示さんの本。失敗嫌いの私は、本に限らず何かに時間を費やす前に評判を調べ尽して安心できないと手を付けないのですが(こういうとこ治したい笑)、レビューを見て失敗なさそうと確信し、『「普通がいい」という病』という本を読んでみることに。正直、病気になって最初にこの本を手に取った自分の強運さに恐れおののきます…!一番初めにこの本を読めたことで、自分に病気のレッテルを貼って異常だとみなすことなく、今の自分に何が起こっているか素直に受け入れることができました。

私にとって一番刺さったのは、「あるべき悩みを悩めるようになることが治るということだ」という考え方。実は私は病気になる前たいした悩みもなく常にポジティブで、人生成功してると思っていました。悩んでいる時間って苦しいから、そんなものない方がいいと思ってて。就活もサークルも勉強も恋愛も人間関係もバイトもすべてが思い通りになっていた私は、日々何かに悩んでいる友人を見ては「なんでそんなに皆不器用なんだろう」と感じていたんですね。今になってはこれこそが病気を引き起こした原因だと分かってるので、この頃の自分を思い出すと怖いですが。(笑)

この「★無敵状態の私★」の種明かしをしてくれたのがこの本でした。頭・心・身体の仕組みが解説されているのですが、無敵な私は「頭が独裁者になっていて、心(=身体)を支配・抑圧している状態」だったことが分かったんです。例えば、「会社に行かなきゃ」と頭で考えることと「行きたくない」と心が思うことに差が生まれると人は悩むわけですが、私の場合は心が「やりたくない」とか「嫌だ」とか思うこと自体を完全に禁止してたからこそ、悩むことがなかった。もちろんそんなことは無意識でしたが、心を完全に無視することで無敵な毎日を手に入れていたみたいです。

それが、発症の直接の引き金となったイギリス留学(記事)で、ついに心と身体が抑圧しきれなくなって爆発したのだと思います。自分の出来なさを痛感し「授業に行きたくない」と思った心や、あまりの不衛生さに鳥肌が立って拒否反応が出た身体。それでも当時のLINEなんかを読み返すと、全く弱音をはいてないんですよね。ギリギリまで私は自分に弱音を許さなかったし、ネガティブな自分の気持ちを無視し続けて頑張ろうとしました。そして頭がいくら抑えても抑えきれなくなった心と身体のストレスが、一気に溢れ出て発症に至ったのでしょう。

本の中で「病的な安定」と「健康な不安定」という言葉が出てきますが、まさに昔の私は「病的な安定」を極めた人間だったと思います。そして今心や身体に不調が出ていることは「健康な不安定」に近いのではないかと感じたのです。病気になってからというもの、「早く正常で元気な状態に戻らなきゃ」「こんな心の病気になるなんて情けない」「もっと強くならなきゃ」とずっと考えていたのですが、そうじゃない。むしろ本来の自分を取り戻して生きるために、今までの間違ったやり方を正すプロセスなんだと気づくことができました。

この本に書かれていた色々なメッセージを読んで、「昔の元気な頃が正常で今が異常ということじゃない」「私のゴールは昔のように戻ることじゃなく、心や身体と調和した新しい生き方を獲得することだ」とはっきり理解しました。こうして今の病気との向き合い方が形作られたので、大事な出会いだったなぁと心から思っています。

リズ・ブルボー『からだの声を聞きなさい』

この次に手に取ったのが、カナダ出身のリズ・ブルボーという女性が書いた『<からだ>の声を聞きなさい』という本。どう考えても今の私に必要そうなタイトルだなぁと感じ、レビューを確認して(笑)読み始めました。この本もまた、病気になってすぐに読むことが出来た自分はなんてラッキーなんだろうと思いましたね。なんとなく優しいタイトル・優しい語り口の裏に、私には本当に耳の痛いことがたくさん書かれていました。

読み始めてすぐ、「あなたに起こることの全責任は、あなたにあるのです」という一文が目に飛び込んできました。今まさに不幸の真っただ中にいる私としては、頭では薄々分かっていても受け入れられない言葉。私はその頃の「使い物にならない無能な自分」を肯定するために、様々な人や物のせいにする言い訳のレパートリーをせっせと取り揃えていたので。(笑)

「好きで病気になったんじゃねーよ!私のせいなんて言わないでよ!」という気持ちを抑えながら読み進めていくと、この言葉は「全部あなたが悪い」という意味合いではないことが分かってきました。むしろまず、今までの人生で自分はベストを尽くしてきたことを認める(同じように他人も皆その時々の精一杯を生きてる)。そして、今現実になっているものは良いことも悪いこともすべて、自分が過去に蒔いた種を収穫しているのだと理解する。何かが不足していると感じるのは自分が過去にその種を蒔かなかったからだけど、その過去の自分は精一杯やっていたことを受け入れて、じゃあ今蒔けばいいよね、と。

「自分を愛するとはどういうことか」目から鱗の説明が沢山あって、私が今から取り組む大きなテーマは「愛」なんだなぁと気づいた瞬間でした。頭の思い通りにならない心や身体をコントロールして社会復帰するのではなくて、不完全な自分をまるごと受け入れて愛することを学ばされているんだと感じたんです。

説明には「神」「エネルギー」などの言葉も出てきて、私にとっては初めてのスピリチュアル的な本でしたが、驚くほど腑に落ちて抵抗なく読めました。特にこの病気になってから科学の限界を嫌というほど目の当たりにしていたので、科学で説明できることがこの世のすべてではないんだな~と気づくきっかけにもなりました。


今思っても、この運命的な出会いだった2冊を母が持っていた奇跡に感動してしまいますね。(笑)ちゃんと人生の中で必要なものは手の届くところに用意されてるんだなぁ。この2冊は病気を単なる早く抜け出したい苦痛なものではなく、私の生き方を根幹からひっくり返す重要な機会に変えてくれました。もしも読んでいなければ、今ごろ私は無理やりでも社会に出てもっと激しく心や身体をコントロールしようとしていたと思います、間違いありません。

この読書体験はこの時期の私にとって、カウンセリング・山積みの薬・色々な検査…それらよりもはるかに効果のあった処方箋でした。病気の根本原因に一番深く迫っていたし、欲しい答えを一番くれました。受け身の治療に比べると自分で切り開かなければならない苦しさはあるけど、結局は自分で気づかないと何も変わらないんだな~と私は思っています。

というわけで今では本が必需品です:) 「毎月○冊読む!」と自分を追い込んでしまうと本末転倒なのでゆる~くですが、気になる本に出会ったら手に取っては時間も忘れて熱中してます。発症以降しっかり読んだ本は現在で40冊くらい。これらの本が私に沢山のことを気づかせ、進むべき方向に導き、病気との向き合い方を学ばせ、生き方を見つめ直させてくれています。本当に感謝です。