「汝に関わりなきことを語るなかれ・・・」
謎めいた言葉から始まるこの物語。
なんと523ページからなる長編小説です。
作者の森見さんは
この作品の連載を1度中断しており
その後1年半をかけて完成させた時には、
最初の連載開始から7年以上も経っていたそうです。
「自分にとって小説とはなにか?」
森見さんがしきりに考え
ギリギリまで突き詰めて完成させた本作品は
森見さん自身が帯にも書いている言葉
「我ながら呆れるような怪作である」
そのもの。
まさに怪作・・・
私にとって久しぶりに読む
長編小説ということもあるけれど
読了するまでに1週間もかかってしまいました・・・
「この本を最後まで読んだ人間はいないんです。」
謎の本「熱帯」を探すべく
「沈黙読書会」に参加する森見さん。(ご本人?!)
そこから「熱帯」を探す「学団」の人々に繋がり、
どんどん物語の中でさらに別の物語が始まっていくのです。
ちゃんと読んでいるのに
「あれ?いま語っているのは誰???」
ってなってしまう。
読みながら何回ページを戻したことでしょうか・・・
この物語の重要なキーワードとして
「千一夜物語」があるのですが、
恐らくこの「熱帯」という小説そのものが
森見登美彦の「千一夜物語」
になるのでしょうね・・・
第1章から4章までは
楽しく読み進めていったのですが、
(謎に頭を捻らせながら)
第5章でやられてしまいました。
もう何がなんやらわからなくなり、
「あなたは誰なの?これはいつのことなの?」
と
「???」
で頭が一杯になってしまいました。
これから読む方の楽しみを奪ってしまうことになってしまうので、
これ以上は書きませんが
「パラレルワールド」的なことなのかな?
「四畳半神話大系」みたいに平行世界のお話?
そうしたら、
姿を消した千夜さんや池内さんは
どこに行ってしまったのだろう・・・
・・・ちょっと怖い・・・
私の「熱帯」だけが本物です。
千夜さんが書き残していたように、
「熱帯」に憑りつかれてしまった人々は
魔王の支配する世界に
「自分だけの熱帯」の世界で
生きていくのでしょうか・・・
私は「沈黙読書会」みたいな集いや
「熱帯」の謎を解こうと奮闘する「学団」の人たち、
今西さんと佐山さんの関係の様なストーリーを読むと
強い羨望を持たずにはいられません。
大好きな本について
とことん話し合える相手がいること
場所があることが
とても羨ましいからです。
「学団」の人たちはお互いに牽制をしあっているので
少し違うかもしれませんが、
私にもそんな読書仲間が欲しいな・・・
なんて
「熱帯」の謎に頭を悩ませながら思ったのでした。
熱帯 [ 森見 登美彦 ]
完訳 千一夜物語(全13巻セット) (岩波文庫) [ 豊島与志雄 ]
「熱帯」の重要なキーワードになる作品です。
遅読な私では読み終わるのに
何年かかるのだろうと思ってしまいますが、
とても興味があります・・・
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