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小さな岬の先端にある喫茶店。
そこではおいしいコーヒーとともに、
お客さんの人生に寄り添う音楽を選曲してくれる。。。






トンネルの先の小さな立て看板は
とても分かりにくくて、
岬の喫茶店に入る道は
草ボーボーでとても怪しい・・・


この喫茶店にたどり着ける人々は、
なにか見えない力によって引き寄せられているのではないかと
思えてなりません。

なぜなら
心に傷を抱えた彼らの人生は、
店主の悦子さんの淹れてくれる美味しいコーヒーと
暖かい言葉。
そして
彼らの心情にマッチした音楽によって
再生していくから。



悦子さん自身も
若い頃に画家だった最愛の夫を亡くしており、
遺作に描かれたのと同じ虹を見る為に
絵が描かれた場所に喫茶店を建てて大きな窓を作り、
そこから
何十年もその虹がかかるのを待っているのです。



そんな悦子さんだからこそ
彼女の紡ぎ出す言葉はとても胸に響きます。



幼い子供を遺して亡くなった妻を想い
なかなか前に進めない男性には
「アメイジンググレイス」を流し、

「アメイジンググレイスは大いなる恩恵という意味よ。
人間って生きているうちに色々と大切なものを失うけど、
でも一方ではアメイジンググレイスを授かっているのよね。
そのことにさえ気づけたら、
あとは何とかなるものよ。」
と語りかけ、
一番大切なものを気づかせてくれます。



喫茶店に泥棒に入った男性にも
「間違いを犯す自由が含まれないのであれば、
自由は持つに値しない。」
と、ガンジーの言葉を伝え
「今夜のあなたにも、間違いを犯す自由があったはずよ。
次から間違えなければ、
今夜の経験はきっと無駄にはならないわ。」
と、許し再生に向けた手助けをしてあげます。



一方で
暴走族に入り暴れて警察に捕まった甥っ子の浩司には、
頬を張り
「あなたにも自由に生きる権利は与えられているけれど、
他人に迷惑をかける自由は与えられていないのよ。」
と叱りつけます。
けれど
「浩司は本当は優しい子だものね。」
と、まるで呪文のように繰り返し言い続け
彼を更生へと導くのです。




この
「本当は優しい子だものね。」は、
私もこれから積極的に子ども達に使っていきたいと思いました。
だって暴れん坊の浩司が、
悪さをしようとするたびに
その言葉が足かせになったというのだから。
やんちゃな浩司も現在は
見た目は怖いけれと心の優しい真面目な男性です。

6つの短編の中で
浩司の物語。
「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」が、
私の中では一番心に染み入りました。




私も岬の喫茶店に行ってみたいな。
心からそう思った
とても優しい物語でした。








「生きることは祈ること」
悦子さんは虹を見ることが出来たのでしょうか・・・













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