病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

医薬品インタビューフォーム(IF)が変わります。薬剤師としてIFを使いこなそう!

2018/11/08      「医薬品インタビューフォーム記載要領2018」策定と合意について

https://www.jshp.or.jp/index.html

 

添付文書記載要領の改訂の話は、来年度から(平成31年4月1日施行開始予定、平成36年3月31日経過措置期間終了)、と挙がっておりますが(添付文書も20年ぶりの記載要領の改訂)、 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000.../1_14.pdf

インタビューフォームについても動きがありましたので、個人的な意見を踏まえて挙げさせていただきます。今回は少し熱くなってしまいました。長文ご容赦ください。

 

インタビューフォーム(IF)とは

添付文書を補完する情報源と位置づけられるもの 学生時代にこのように定義されると勉強しましたよね。必要に迫られないと見ない、少し厚めのいかにも、な資料である“アレ”です。

 

正式な文章は、

IF は「添付文書等の情報を補完し、薬剤師等の医療従事者にとって日常業務に必要な、医薬 品の品質管理のための情報、処方設計のための情報、調剤のための情報、医薬品の適正使用の ための情報、薬学的な患者ケアのための情報等が集約された総合的な個別の医薬品解説書として、日病薬が記載要領を策定し、薬剤師等のために当該医薬品の製薬企業に作成及び提供を依頼している学術資料」と位置付けられる。ただし、薬事法・製薬企業機密等に関わるもの、製薬企業の製剤努力を無効にするもの及び薬剤師自らが評価・判断・提供すべき事項等は IF の記載事項とはならない。言い換えると、

製薬企業から提供された IF は、薬剤師自らが評価・判断・臨床適応するとともに、必要な補完をするものという認識を持つことを前提としている。

 

添付文書しか公的な情報がない時代、A4数枚の添付文書だけでは知りえなかった資料を、諸先輩方が、項目を決め、作成してくれた。IFの初めのほうに必ず入っている文章。少し厚めなアレな資料、とか書いてしまってすみません。もはや日病薬の方には足を向けて寝られませんね。日病薬は渋谷にあると思います。皆様ご注意を。

 

薬剤師のための学術資料であること、その情報から薬剤師が自ら考えるための根拠となる資料、といっても過言ではないでしょう。

先人たちより、

「そこの薬剤師に告ぐ、これ(IF)を使いこなしてみよ。記載内容はある程度整備した。期待している!」

と言われているような気がしませんか?

 

施設によって、この薬を一包化したりしなかったり、粉砕出来たりできなかったり。メーカーに聞いてもバラバラだったり。それをIFに記載しろ、という声もよく挙がりますが、上記の内容を読むと、IFの情報から、薬剤師が判断せよ、という事になります。施設によっても、処方日数が異なったりすると思います。急性期病院と慢性期病院などです。

一概に決められるとよいのですが、その条件が施設や患者さんの環境によって異なる。本来はそれを考慮して決めるべきなのですが、人員不足や上記を理解しないと、IFに記載してくれ!という言葉になってしまいます。 

 残念ながら、今回の改定でも、このような問題は解決できません。IFの性質は変わらないのです。内容や特性を理解して、IFをうまく生かせるようになりたいものです。

 

インタビューフォームの歴史

1988年に記載要領が公開、現在はIF記載要領2013」に沿って作成されている。現在は冊子での提供ではなく電子ファイルでの提供が原則。

改定の場合も、大幅な改定ではなく、一部である場合が多いので、冊子は無駄になってしまいますし。

といいながらも、PMDAのホームページにPDFファイルがないとき、ありませんか?

製薬会社のHpにはあったりする。

これは義務化してほしい、と思うのは私だけであろうか。麻薬などの、情報の管理上など、メーカーのHpでの登録が必要な場合は理解もできますが、あからさまにないのは何とか改善頂けると助かりますよね。

 

今回の改定の概要です。上記Hpより引用

添付文書記載要領の変更対応以外の「IF記載要領2018」の主要な改定点は以下のとおりです。

・概要:適正使用に関して周知すべき特性や資材類、流通や使用上の制限事項に関する記載を充実、医薬品リスク管理計画の概要の転載、巻頭に略語表の記載

・製剤:外観や同梱物、形態および取り扱いについての記載を充実

・治療:用法用量の設定根拠に関する記載を充実、使用成績調査(一般使用成績調査、特定使用成績調査、使用成績比較調査)、製造販売後データベース調査、製造販売後臨床試験についての記載の充実

・薬物動態:活性代謝物に関する記載を明示

・管理的事項:各種コード類、留意事項通知等に関連する記載内容の明確化

 

IF利用に際しての留意点についても、下記の記載がある。

IFを薬剤師等の日常業務において欠かすことができない医薬品情報源として活用していただきたい.しかし,薬機法の広告規制や医療用医薬品プロモーションコード等により,製薬企業が提供できる情報の範囲には自ずと限界がある.IFは日病薬の記載要領を受けて,当該医薬品の製薬企業が作成・提供するものであることから,記載・表現には制約を受けざるを得ないことを認識しておかなければならない.

 

製薬企業に作成を依頼している以上、上記のことは必ず知っておき、用いる必要がある。例えば、なぜ別薬剤との比較試験が海外ではされているのに、それをIFに掲載しないのか、といったことであろう。過度な広告となりえるような情報は掲載が難しい。知りたいことがすべて書いてある資料ではなく、それを基に考えるための資料であることを再度確認しておきたい。

 

以下、医薬品インタビューフォーム記載要領 2018 -日本病院薬剤師会-より、気になる部分をピックアップ

https://www.jshp.or.jp/cont/18/1108-2-3.pdf

 

表紙

2.承認条件等で,使用できる医師・医療機関・薬剤師等の制限,流通管理等の規定がある場合の 表示。「使用の制限あり」と記載.

 これはありがたいです。この薬なぜ処方できないの?などとよく話になります。IFの表紙にあればわかりやすい。

 

14.薬価基準収載年月日

現在流通している製剤の薬価基準収載年月日を記載.販売名変更等があった場合にはその旨を明記.薬価基準未収載,薬価基準収載対象外等の場合は,その旨を記載.

販売名変更等に伴う薬価基準収載年月日の履歴は,後段の「X.管理的事項に関する項目」に記載

 これもありがたい。こんなことがありました。

 

私「注射用ペニシリンGカリウムって昔からある薬だけど、とてもいい薬で、今でも十分に使える薬なんだ。いつから使えるか調べてごらん。開発した人はねぇ…ブツブツゴニョゴニョ…(以下学生から無視される)」

 

学生「2002年7月って書いてあります。」

 

私「ファッ!?#@!?&」

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6111400D2039_1_10/

 

このような経験、ありませんでしょうか?ないですかね、あまり。

販売名変更すると、前の情報が分かりづらかったんですよね。こんなとこで喜ぶ私はもうダメなのかもしれません。

 

他には、メーカーさんのHpアドレスとか、QRコードとかがあるとよかったかもしれません。なんとなく、ですが。

 

略語集

これも新たに巻頭に記載される予定とのこと。治療に関する略号も増えてきているので、ありがたい。

 

本編

Ⅰ.概要に関する項目

1.開発の経緯

再審査,再評価が終了したものはその経過を記載、というのもありがたい、今まであったのかあまり記憶にないが、副作用の頻度などの情報が改定されるため。

 

3.製品の製剤学的特性

当該薬剤の製剤学的な工夫や特性,使用・取扱い上の注意点等の特性について記載.

なお,特性の記載にあたっては,当該特性がIFのどの項(ページ)に詳述されているか分かるように注釈をつける.

 これも改定点に記載があるが、外観や同梱物、形態および取り扱いについての記載を充実とあるため、特殊な取り扱いが必要なものなどの情報がIF内に入ってくるのは、あれこれ色々見なくてもよくなることにつながる。製剤によっては使用まで開封できないものもあったりするので、その取扱いの情報が分かるのは意義がある。ただ、基本的には白黒の資料なので、カラーで確認したい取り扱いの資料などは結局別資料になるのかもしれない。

 

4.適正使用に関して周知すべき特性

ここはどれだけ充実されるか楽しみにしたい。RMPもあるので、詳細はそちらになるかもしれないが。

 

5.承認条件及び流通・使用上の制限事項

表紙の記載の詳細が記載される。これがIF内にあるのはありがたい。今すぎにでも取り組み始めてほしいくらいです。

 

6.RMPの概要

上記4と重なるが、今現状としてこのRMPを上手に生かしている施設は少ないと思う。ただ、これからは情報をうまく生かすことによって様々な利用が可能になると思われる。今後も注目すべき項目と思われる。

 

Ⅱ.名称に関する項目

1.販売名

(3)名称の由来:由来が明らかな場合は記載.

この項目。最近は3-4文字検索での似たような名前の登録が厳しいから、全く関係ない名前になったりするようだが、何でもいいから経緯を記載してほしい。

これはもう完全な私の趣味のためである。名前の由来を聞いて、あとで小ネタに利用するためのものだからである。薬剤師をしていて、知っててよかった、という小ネタのために、ぜひ製薬会社は気合を入れて命名いただきたい。わが子に命名するような気持ちで、そしてその由来を何でもいいから記載いただきたい。由来なし、はもっての外です!

 

ちょっと取り乱しました。失礼。

カーッとなっていまう性格のため、ご容赦ください。次に行きます。

少しとばして・・・

 

Ⅳ.製剤に関する項目

(1)剤形の区別

特殊なものを除き,日本薬局方に準拠した剤形区分を明示する.

コンビネーション製品の場合はその旨を記載し,デバイス(医療機器)部分も概説する.

先ほどの製剤の所にもあったが、デバイス(医療機器)部分があるのは良い情報です。

今でもある程度のものの記載がありますが、注射、外用薬にこの項目が入るのはいいと思いました。

 

(5)その他

注射剤の容器中の特殊な気体(窒素置換等)の有無,バイアル内圧について記載.

調製の時、やたら引かれるよね、というのは口コミで手順書などに記載されていくのだが、これも掲載されるのはありがたい。調製についてはほとんど看護師さんに行ってもらうことが多いのが病院の現状かと思う。バイアルの陰圧に引っ張られて、気が付いたら泡だらけ、という経験は誰にでもあると思う。あらかじめ手順書に入れられるし、情報提供しやすい。

 

7.調製法及び溶解後の安定性

用時溶解して使用する製剤の調製法及び溶解後の安定性について室温等の条件別に記載.

使用可能期間を明示する必要がある場合は記載.分割使用する場合はその方法や注意点等も記載.

 実際分割使用するものは限られているが、汚染の面と、科学的な安定性のところで困ることが多い。今も記載してくれている薬剤もあるが、特に高価な薬剤については色々話題になる。現場に即した情報となることが期待される。

 

10.容器・包装

(1)注意が必要な容器・包装,外観が特殊な容器・包装に関する情報

チャイルドプルーフ等,使用に際して注意が必要な容器,あるいは特殊な製剤について,具体的な取扱い方法を含めて記載.PTPシートや製剤外観に注意事項記載等を行っている製剤では,画像等を示し,別途その内容を記載.

 添付文書にも記載があるが、チャイルドプルーフは夜間看護師さんが開けられない~って連絡を受け、薬剤師とともに開封しているケースや、油断してるとテノゼットとかザイザルシロップの蓋が開かね~っていう薬剤師もいたので、お願いしたいです。

 

(3)予備容量

輸液製剤の予備容量のデータを記載.気体を吸引せずに追加できる液量,置換して追加できる最大液量を明示.

 これも地味にありがたい。記載してくれている製薬会社もあるが、正式なものもないのでやってみたり聞いたりして一覧を作成していた。GJ!

 

12.その他

調製後注射液のフィルタ通過性,点眼液の1滴の容量等の情報がある場合に記載.

 これも入れてくれるんですか!日病薬様、ありがとうございます。日々の問い合わせやデータベース作成で対応していましたが、限界があります。製薬会社様、さっそく本日からでよいので準備に取り掛かってください。お願いいたします。

 

Ⅴ.治療に関する項目

2.効能又は効果に関連する注意 「効能又は効果に関連する注意」があれば記載し,制限事項等を解説.

 これも聞かないとわからなかったり、色々なところにあったりするので、ありがたい項目です。

 

3.用法及び用量

(1)用法及び用量の解説

承認を受けた用法及び用量を記載.

・内用剤は食前・食後・食間,空腹時,~時間毎,就寝前等の服用時間とその理由を記載.

・注射剤は希釈,溶解方法,施用速度及び投与ルートとその理由を記載.

・その他の剤形は可能な限りその投与方法と理由を記載.

・腎機能・肝機能障害時の投与量について,具体的な投与量設定基準があれば記載する.

(2)用法及び用量の設定経緯・根拠

・用量反応試験等の概要を示し,承認用量の設定経緯や根拠を記載する.

・副作用等による減量・中止規定がある場合には,その内容と設定経緯や根拠を記載する.

 

 これ、当たり前のことなのですが、よく聞かれることも多いし、医薬品の最も大切な部分かと思います。製薬会社の資料にないので、別資料を使っていることのなんと多い事か。米国の添付文書のほうが詳しくあったりもする。

理由や根拠、という事が記載されるのは、情報として非常に有用であると考える。この充実ぶりは、薬剤師のIFマニア(存在するのか?)を増やすに違いない。

 

Ⅵ.薬効薬理に関する項目

(1)作用部位・作用機序

分子薬理学的検討がされている場合で模式図等を用いて説明できる場合は記載.

抗菌薬等では,効果が殺菌的か静菌的か,感受性菌の種類及び最小発育阻止濃度(MIC)等の試験結果や交差耐性等について記載.

 最近は複雑な作用機序の薬剤が多い。図式化されたものもパンフレットに多いが、資料などを作成する場合はIF上にあるとありがたい。抗菌薬はもはや大体覚えてしまったが、それでもわかる部分の記載がなされるのは大きい。

 

 

以上、まだまだ変更も含め記載要領はたくさんあります。気になった部分のみピックアップしてみました。

冒頭にもありました通り、医薬品インタビューフォームは、我々薬剤師のための学術資料であること、その情報から薬剤師が自ら考えるための、根拠となる資料という位置づけかと思います。

IFに書いてあるから、だけではなく、それを踏まえて現場の医療にどのように生かすか、それは各個人の薬剤師に託されていると思います。IFにすべての回答があるわけではないので、その情報を薬剤師として理解し、使いこなしたいものです。

 

新しいIFを眺めながら、先輩方の努力を感じ、薬剤師として、あらゆる状況にこのIFを生かして、薬剤師の職能を発揮できれば、と考えています。