希望は正四面体の形をしている
あいも変わらず毒性のある花の話である。
花はまだ咲いており、私の部屋で唯一むらむらと生気を放っている。
そして先週ごろから花の中心に緑色のさやのようなものが発生した。
少女の腹から突き出たエイリアンのようにも見える。
が、検索すると、どうやら種らしい。落ちた花についていたものをカッターで開いてみると、中には白く正四面体の粒が並んで入っていた。ソバの実のような形だ。
さやが茶色くなって来たら取っておき、乾燥させると、種として再び花を咲かせるらしい。
前に買った時はさやなど欠片も見えなかったので、切り花でもそんなことがあるのかと驚いた。土から離れた後で種を残す。死んだ胎で育つ子。手塚作品的なモチーフだ。
暑さに弱く寒さに強いため、次に種を蒔くことが出来るのは今年の冬になるらしい。
まずは上手く種になるようにと思いながら、何となく、物語の最後で「子供が産まれる」ことが多い理由が分かった。
種とは希望で、可能性だ。
上手くいきますようにと願いながら、その過程を想うのは楽しい。
その種が、ある物語では子供の形をとり、別の物語では握手になるのだろう。そして今の私の部屋では、正四面体の形をしている。
今まで捻くれて「出産はゴールではないだろ」と思っていたが、これでなるほど、納得がいった。
花に学ぶことの多い人生である。
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