ぼくの妹は、幼い頃は常にぼくと一緒に遊びたがり、金魚のフンの様にぼくに付きまとった。
我が妹ながら、そんな様子はとてもかわいかった。
だが、お互いに成人した今は、当然ながら当時の面影は少しも見当たらない。
仲が悪い訳では無いのだが、最低限の会話しかしない。
たまに話しかけてくることがあっても、「リモコンとって」など、とてもかわいいとは言えない内容だ。
それに妹は、髪を男のぼくにも負けないくらい短くカットしている。
身長はぼくより少し低いくらいなのだが、体重は10kgも重い。
ぼくが人より少し痩せているのもあるのだろうが、決して華奢とは言えない体型だ。
ぼくと妹が並んで歩いたら、もしかしたら姉と弟のように見えるかもしれない。

そんな妹にも、有難いことに彼氏がいたようで(物好きな男がいるものだ)、就職を機にふたりで同棲することになった。
クロは妹にとても懐いていたし、妹もクロをかわいがっていたから、てっきりクロを連れて行くと思ったが、妹は「お母さんが寂しがるといけないから」と言って、引っ越し先がペット禁止のアパートなこともあり、クロを置いて行った。
妹がアパートへ引っ越して行った日、クロは玄関先で妹を見送ると、いつも通り妹の車が置いてある駐車場の見える窓際まで行き、妹の運転する車が見えなくなるまでそこに居た。
クロの背中は少し寂しそうに見えたが、やはりぼくには見向きもせずに、ソファまで歩いていくと、ソファに飛び乗りそこで丸くなって眠った。

そうして、クロとぼくと母との暮らしが始まったのだが、予期せぬことが起こった。
母が突然、他界したのだ。




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