ぼくはその日、いつものように朝方までゲームをして、布団に入った。
布団に入るとすぐに眠気がきて、すっと眠りについたのだが、深い眠りに入る手前、スマートフォンのバイブ音が聞こえてきた。
バイブ音がなかなか鳴り止まないため、電話がかかってきたことに気が付いたぼくは、寝ぼけた頭をなんとか働かせて右手を動かし、スマートフォンを手に取ると、片目だけでスマートフォンの画面を見た。
着信は父からだった。
当時から父は単身赴任をしていて、家に帰ってくるのは月に2回程度だった。
単身赴任前は、顔を合わせるとゲームの話しをしたり、晩酌に付き合うことも稀にあったが、最近では挨拶程度で、まともに会話すらしていなかった。
もちろん父から電話がかかってくることなど滅多に無かった。
「はい、どうしたの。」
ぼくは寝起きだったから、布団にくるまったまま、すっとぼけた声で電話に出た。
「聖夜、今すぐ○○病院に来い。」
父は、はっきりとした声で、それだけ言った。
父の声で、ぼくは瞬時に目が覚め、眠りの世界から現実の世界に引き戻された。
カーテンの隙間からは、朝陽が少しだけ差し込んでいる。
クロはまだ、母の布団で眠っているだろうか。




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