とりあえず萌華(もか)は美咲を自分の部屋へ連れて行った。
「なんか萌華(もか)ちゃん今日は大人しいね」
「お母さんが喋りまくるから全然喋れないです」
「あら、ごめんなさい」
「もう、私に会いに来たんだから、お母さんはあんまり邪魔しないで」
「でも母さんも美咲さんのお話聞きたいのよ」
「・・・。」
テンション高めの母に圧倒される萌華(もか)と美咲。
「ところで美咲さん。萌華(もか)から聞いたんですけどダイエットとファッションの達人だそうで、今日のお洋服も素敵だわ。」
「は、はあ、そんな達人というほどでもないですけど・・・」
「なんでも美咲さんがやられている秘密のダイエット法があるとかで、私でもできるかしら・・・」
「あっ、あの~。別に秘密というわけでもないですけどぉ、萌華(もか)ちゃんもやってますし・・・」
「えっ、そうなの萌華(もか)ももうやってるの」
「う、うん。」
「全然、分からなかったわ。で、どんなダイエット法なの」
「特に運動とかそういうのはしないんでダイエットなのかどうかも分からないんですけど・・・。」
「そうなのじゃあ、何か食べちゃダメとかそういうのなの」
「あっ、それも特にはないんですけどぉ。」
「本当それで痩せられるの結婚してから今まで何百回もダイエットにチャレンジしてきたけどいつもリバウンドばかりで、いまじゃこんなになっちゃたんですよ。ほほほほ」
「もう、お母さん。恥ずかしいよぉ」
「それで、どうすればいいの」
「あれっ萌華(もか)ちゃん今してないの」
「あっ、してますけど・・・。こんな服だから分かりづらいだけかもしれないです」
「じゃあ、見せてあげて」
同じ家族なのに妙に恥ずかしく感じる萌華(もか)であった。
ある意味裸を見られるよりも恥ずかしい気がする。
「・・・えっと、これをするだけ・・・」
萌華(もか)はスウェットの裾を少したくし上げてコルセットを見せた。
「何よく見えない。お腹をぶるぶるさせるやつ」
「違うよ。もう、これだよ。コ・ル・セ・ッ・ト」
「えっコルセットなの?お母さんもコルセットなら持ってるわよ。ちょっと持ってくるから待ってくれる」
そういうと母は部屋から出て行った。
萌華(もか)は思わず戸口に置いてあるツバの取れた竹刀を取り出して、襖戸のつっかえ棒にしようかと思った。
ほどなく母が返ってきた。
「見て、これ、母さんが使っていたコルセットよ」
「え~、違うよ。そんなんじゃないよ」
母はウエストニッパーを持ってきたのだ。
「あっ、萌華(もか)ちゃんのお母さん。そういうコルセットじゃないんですよ。お姫様がするようなコルセットです。萌華(もか)ちゃんもうちょっと見せてあげて。」
萌華(もか)はスウェットを胸までたくし上げた。
「え~。こういうコルセットなのずいぶん本格的ね。結構苦しそうだけど苦しくないの」
「全然」
萌華(もか)と美咲がハモった。
二人は顔を見合わせて思わず笑ってしまった。
横隔膜が大きく上下に震え、お腹のお肉が小気味良いリズムを刻んでコルセットにパンパンと当たる。
「でも、これじゃあご飯食べられないわね」
「あっ、そんなことないですよ。慣れるとそれなりに食べられますよ。たくさん食べることはできないですけど」
「そうねぇ。それなら痩せられそうね。」
「はぁ・・・そうですねぇ・・・」
「そういえば、美咲さんはずいぶん姿勢がよいけれど、それもコルセットのせい」
「あっ、そうです。コルセット始める前はめちゃくちゃ背中が曲がっていたんです。」
「そうなの。美咲さんはどれくらいコルセットしていらっしゃるの」
「あっ、だいたい朝起きてから家に帰って寝る前までです。」
「えっそうじゃなくて、いつからコルセット始められたの」
「あっ、そっちぃ~。そうですねぇ~。1か月とちょっとくらいですかねぇ~。」
美咲が思わずタメ口になったの見た萌華(もか)はクスクスと笑ってしまった。
「萌華(もか)何がおかしいの」
「えっ、別に、でも美咲さんって時々壊れますね」
「うわ~。なんか変なこと言っちゃった」
「いえ、別に変なこと言ってないですけど・・・。」
「母さんもコルセット試してみたくなってきたわ。でも、結構お高いんじゃないの?」
「母さん、それがね、全然高くないよ。2500円くらいで買えるよ。」
「そうなの母さんのサイズもあるかしら」
「萌華(もか)ちゃんのお母さん、だいたい萌華(もか)ちゃんと同じくらいだから今試しに着けてみたらどうですか」
「そうねぇ。着け方もわからないし、やってもらおうかししら」
「ええ~っ。いいけど、汚さないでね。」
「大丈夫よ、服の上からするから。」
「いや、あの、服の上からだとちょっと・・・あっ、でもとりあえずだからいいか。」
萌華(もか)はコルセットを外し、母に着けてみた。
「やっぱり服の上からだと大変だけどこんな感じ。」
「そうなんか背中がこう伸ばされる感じでいいわね萌華(もか)、鏡見せて」
萌華(もか)は三面鏡を開いた。
「あら~、やっぱりずいぶんこうすっきりした感じに見えるわね。母さんもひとつ買うわ」
「いいけど、母さん飽きっぽいから、すぐやめちゃったりしたらダメだよ」
「大丈夫よ。少なくともあなたには言われたくないわ。萌華(もか)だっていつもダイエットする、するって言って続いたためしないじゃない。あなただって『やるやる詐欺』の常習犯じゃない」
「もうやだ、恥ずかしいよお母さんの方がもっとやるやる詐欺の常習犯じゃない。美咲さん、ちょっとこっち来て」
萌華(もか)は美咲を玄関の方へ連れ出した。
そして家の裏手の方へ向かった。
「萌華(もか)、やめなさいあそこは埃っぽいし、お客様にお見せするところじゃないわよ。」
「いいの」
申し訳なさそうな振りをしてついてくる美咲を、裏の納屋へと案内した。
「何これ」
「あっ、納屋です。」
「納屋」
「うちの物置。不用品のたまり場です」
萌華(もか)は納屋の戸を開いた。
滅多に開けないのでなかなか固く、扉の隙間から砂ぼこりが舞い落ちた。
納屋独特の埃っぽい臭いが立ち込めた。
萌華(もか)は納屋の入り口に置いてある懐中電灯を点けた。
「見てこれ全部お母さんが買ったダイエット器具です」
これだけあればジムを始められるのではないかという量である。
もちろんすべて埃をかぶっているので徹底してメンテしない限りは無理ではある。
「ねっお母さんの方がやるやる詐欺の常習犯でしょ」
「いや、あの、私は大関家のことには口出しする立場じゃないし・・・」
「あっ、そうですよね。」
「もう、萌華(もか)ったら本当に恥ずかしい。美咲さん。私も一つ買うからよろしくね。」
こうして萌華(もか)前にコルセットダイエットライバル大関貴理子が立ちはだかることになるのだった。
あとでわかったことだが、母も萌華(もか)と同じ3XLサイズから始めることになったのであった。
To Be Continued...
■登場人物紹介■
美咲
主人公28歳。独身。彼氏あり。
恵比寿のアパレルメーカーでネットやカタログ向けの画像加工を行う部署でお仕事中。
自宅は大都会埼玉の大宮駅から少し先のJRの駅からすぐのところに家賃8万円の1LDKに乗り換えなしで職場に通えるというだけの理由で一人暮らし。
性格は周りから周りからちょっとちやほやされてみたい気もするけど、目立つのは苦手という結構ありがちなタイプ。
案外見栄っ張りな一面もある。
大関萌華(もか)
美咲と同じ会社で経理課に勤める。
Hカップの巨乳の持ち主といえば聞こえがよいが、肥満の家系に生まれ育つ。
子供のころのあだ名は横綱。
コルセットで急にカッコよくなった美咲にいち早く気づきコルセットダイエットを決意する。
美咲と同じ電車で通勤している。
美咲より数駅遠い町で祖父母と両親、兄3人と暮らす。
大関一家(年齢順)
祖父:寅(とら)
祖母:桂(かつら)
父 :健人(けんと)
母 :貴理子(きりこ)
長男:塁(るい)
次男:コナン
三男:三斗(さんと)
長女:萌華(もか)
阿倍 沃(あべ よう) 商品開発部長
会社で一番の美人で、モデルもこなし、仕事もできる。
社長の愛人という根の葉もない噂もある。
女子社員は陰で「倍沃」(べよう)と呼んでいる。
本人はそれに気づいているが、そのことはまんざらでもないらしい。
なぜなら倍沃(べよう)はコルセットダイエットの一番人気のバーヴォーグ(Burvogue)の漢字名だからである。
そして今では美咲にとってのコルセットの師匠でもある。
美咲の彼氏さん
美咲の同僚。
お人好しで頼まれたら断れない性格。
それ以外は未設定。
陽菜
23歳。
美咲の勤める会社で派遣社員をしている。
社内ではかなりイケているルックスの持ち主。
美咲は彼氏さんの「陽菜ちゃんってかわいいよね」の一言でやきもち持ちを焼いたことから、勝手に美のライバル視している。
陽菜本人はどう思っているかは定かではない。
というかまだ未設定。
■作者紹介■
)プロクビレイター(のAbooです。
世界中のウエストを くびれ させることが野望のプロのクビレイターです。
クビレイトに欠かせないものといえばコルセット
コルセットで肋骨を引き締めることでアンダーバストからヒップにかけて整形級のボディラインを作っちゃおうっていう痩身術です。
世間ではコルセットダイエットなんて呼ばれています。